シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。今日明日は、雨の予報ですけれど、晴れたり降ったり、変な天気・・・梅雨もそこまで来ています。
昨日は、桝井省志プロデューサーの「ミソ帳倶楽部 達人の根っこ」でした。聞き手は、柏田副所長。
柏田と桝井プロデューサーは、大映時代からの長いお付き合いなので、お話も様々な角度から盛り上がりました。
桝井プロデューサーは、大映(現角川映画)で周防監督と「シコふんじゃた」を制作した後、もっと自由に制約なく好きな映画作りをしたいと周防監督、磯村監督と3人で、アルタミラピクチャーズを立ち上げました。
この浮き沈みの多い業界で20年近く、たくさんのヒット作品を作り出していらっしゃいます。現在、周防監督の最新作「舞妓はレディ」の撮影中です。
閑話休題。この『舞妓でレディ』の主役は、東宝シンデレラ特別賞のお嬢さん。
実は、東宝シンデレラには、2011年にシンデレラ研修のひとつとして、私がシナリオを教えました。
シナリオを自分で書いてみることで、シナリオに書かれた意味を読み取り、感情移入ができる役者さんになっていただくためです。
演技指導のように「泣き方」を指導するのではなく、書くことで、何故ここで泣くのか、泣く必要があるのか、涙が出るのか、出ないのか、どんな泣き方になるのか・・・シナリオを読み取る力をつけてもらいました。
可愛い小学生、中学生のお嬢さんたちでしたが、さすが何万人の中から選ばれただけあって、シナリオもなかなかのものだったのを覚えています。
「舞妓はレディ」の主役もオーディションで勝ちとったとのこと。シナリオ研修が役に立ったと思いたい。(笑)
桝井プロデューサーは、辣腕のプロデューサーでいらっしゃるのですが、いつもやさしく丁寧にお付き合いしてくださいます。個人的にも大好きな信頼おけるプロデューサーですが、桝井省志という人間性が、たくさんのヒットを出してきたのではないかと思いました。
世に出る人は性格がいいというお話も桝井さんからありましたが、桝井さんご自身のお仕事振りを見ていると本当にそう思います。人間性って大事ですよね。
「がんばりまっしょい」の田中麗奈さん、「スイングガールズ」の上野樹里さん、「ウオーターボーイズ」の妻夫木聡さん、玉木宏さんなどいまやスターに。
役者さんに対しても、桝井さんは、自分たちが新人を育てたんじゃなくて、本人たちがその後も努力し続けたから、スターになったんですよと。
大概、自分が育てたとおっしゃるものですが、桝井プロデューサーはそういうところをまったくお持ちでないんですよ。そこが私の大好きなところです。
今回、往年の名歌手田端義夫のドキュメンタリー映画「オーイ!バタヤン」を創られたのですが、田端義夫の名前くらいしか知らない柏田が映画を観て泣いたと・・・人を描くということは、創り手の気持ちが映し出されると思います。
桝井プロデューサーから、企画について「好きなことが大事、少々技量が足りなくても発想、アイデアがあればいい、好きなもの突き詰める。当てようとしない方がいい」
「取材は大事だが、リアリティを取り込みすぎて、現実をなぞってしまいがちになるので、いかに捨てるかが大切」
「現在の10億以上稼いでいる映画の9割は原作もの。だけれどオリジナルを作るほど楽しいものはない。オリジナルを作ることを忘れたら、この商売はない!」
映画もテレビも原作ものに頼りすぎている昨今ですが、なんといっても脚本家は「オリジナル」で勝負しなくちゃ。
昔は、映画、テレビの全盛期は9割がオリジナルでした。
桝井プロデューサーのように、オリジナルを大切にする業界へ戻ってもらいたいと痛切に願っています。