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あなたの毎日に役立つシナリオの活用例がここにあります。
葉月けめこ
私の出身地は、福岡県の北部に位置する北九州市です。
毎年成人式シーズンになると事情をよく知らない方々から「修羅の国」などと囃したてられますが、真の姿は「住みたい街」「生活天国」などとして注目を浴びている素敵な都市です。
見せてやりたや北九州を
山にゃ石炭 町には工場
港々にゃ船がつく
詩人・野口雨情が「鎮西小唄」でこう歌ったように、古くは石炭の積み出し港、また“製鉄のまち”として栄えてきたのが私のふるさと、北九州です。「門司港レトロ」で有名な門司港は外国貿易が盛んだった港でもあります。
このような経緯から、海外のかたはもちろん、「この地で一旗あげてやろう!」「あそこに行けば仕事があるはず!」と考えた労働者などなど、ほんとうにたくさんの人が集まってきたまちであり、九州初の百万都市でもあります。
北九州は映画のロケ地としても注目を浴びています。 こちらはドラマ「MOZU」冒頭の爆破テロシーンが撮影された小倉井筒屋クロスロード。奥に見えるのが小倉城です。 |
昔からさまざまな人や文化が行き交うまちだったせいか、北九州ではユニークなものがたくさん生まれています。
バナナの叩き売り、パンチパーマ、アーケード商店街、24時間スーパーマーケット、食べ物でいえば「焼きうどん」ですね。
終戦直後、ある食堂の店主が焼そば用のそば玉のかわりに干しうどんを茹でて焼いたところ大好評だったのがはじまりとされている焼きうどん。発祥の地だからかどうか、子どものころお昼ご飯やおやつがわりに母が作ってくれたのもやはり焼きうどんで、焼きそばを食べた覚えがほとんどありません。昭和世代の北九州人はたぶんみんな似たようなものだと思います。
福岡といえばラーメンを連想するかたが多いのですが、実はラーメン好きと同じくらいうどん好きも多いです。
そんな中、北九州人のソウルフードとして君臨しているのが、「資(すけ)さん」というお店のうどんです。特にゴボ天うどんは人気が高く、店内に入って周囲を見渡すと、半数近いお客さんがゴボ天うどんを食べていることもあります。 なぜか“ぼた餅(おはぎ)”の人気も高く、うどんのあとはぼた餅で〆るという人もけっこういます。その場で食べなくても「テイクアウトで」というほど、私たちのなかではうどんとセットになっているメニューです。
資さんのゴボ天うどん。太目に切ったごぼうをまるっと揚げているのが特徴です。麺はやわらかめ。ゴボ天の歯ごたえが北九州人にはたまらないのです。 |
ですが、私たちが資さんうどんを愛してやまないのはそのおいしさだけが理由ではないのです。
資さんはうどん屋さんでありながら、24時間営業の店舗が多くあります。
さきほど、北九州は24時間スーパーの発祥の地であるというお話をさせていただきましたが、この地に24時間営業の店が多いのは、“製鉄のまち”だったからです。製鉄所の高炉に休みはありませんからね、鉄の男たちは3交代で鉄をつくりつづけます。そんな理由から、昼間でもお酒を飲める角打ちや24時間営業の食堂なども誕生したのだそうです。
さて、私が若い頃通っていた資さんも24時間開いていて、明け方にべろんべろんに酔っぱらったおじさんたちが、うどんをすすりながらなにやら熱く語り合ったりしている光景もよく見かけました。仕事帰りのホステスさんがお客さんとの待ち合わせに使ったり、飲み屋に行けない若者たち、つまりは高校生(笑)が夜遅く集う場所として利用していることもありました。
いちばん印象に残っているのが、深夜にひとり泣きそうな顔でぼた餅を食べていたサラリーマンです。
ああ、きっと彼女に振られたんだな。そして彼はここで彼女と仲良くぼた餅を食べたことがあるのだなと、少し離れた席で私も彼と同じ速度でぼた餅を頬張りながら、見ず知らずの人の悲しみにシンクロを試みてみたり。
資さんを思い出すときは、なぜかいつも“人”や“そのときの光景”が見えてくる。つまり、おいしいだけではない温もりが、私たちを引き寄せるのではないかと思っています。
資さんのぼた餅。先日帰省した際、私もテイクアウトしました。 |
また、北九州は物価も安く、美味しくて新鮮なお魚を食べることができるまちとしても有名です。東京ではなかなか手が出ないふぐのお刺身もスーパーでリーズナブルに買えるので、お母さんの機嫌がいい日に食卓に並ぶこともしばしば。
ですから、「これがおいしいよ!」というものも、決して贅沢なものじゃなく普段の生活に寄り添った食べ物が多いような気がします。
特に馴染み深いのが、鰯や鯖などの「ぬか味噌炊き」で、江戸時代の後期に保存食として鮮魚をぬか床で炊き込んだのがはじまりとされています。
つまりは漬物床を煮付けのだし汁として、新鮮な魚を炊いた料理なのですが、これがうまいのなんの!味噌煮と似てはいますが、こちらは骨までやわらかく食べられるのが特徴です。
ぬか床は母から娘、また嫁に、代々受け継がれていくものですから、家庭家庭の味があります。しかしながら、最近はぬか床のある家庭も少なくなっているので、お店で食べることのほうが多くなりました。もちろん、私も作れません。寂しいことに……。
私の手作りです!と言いたいところですが、こちらは北九州の台所、旦過市場「吉勝」さんのぬか味噌炊きです。百年床のぬか床に特製の味付けを施しているそうです。ごはんにもお酒にもよく合います! |
ごはんと暮らしは切っても切り離せませんが、その地ならではの食文化や食を考えると、そこに生きた、また生きている人たちの顔が見えてくるような気がします。
ビバ!ごはん!!ですね。
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