シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。ゴールデンウイークも過ぎましたが、東京は良いお天気が続いています。熊本、大分の方は、また雨とか・・・台風の季節にならないうちに、ちゃんとしたところに住めるようになるといいですね。
シナリオ・センターでは、5月から始めた「ナール」を使って義援金も募っています。
土曜日の午後、朗読劇「逢いたくて」に行ってきました。
これは、横浜教室の稲垣麻由美さんが書かれた「115通の恋文」(扶桑社刊)が一つの台本を9組のバージョンで行う朗読劇になったものです。
「逢いたくて」の原作「115通の恋文」は、妻しずゑさんが戦地にいる夫藤栄さんにあてた手紙を掲載し、その頃の状況などを記し、二度と戦争という悲劇をくりかえさないために伝えたいと作られたものです。
前にもご紹介しましたが、捕虜収容所を経て戦後1年して、夫藤栄さんは、リュックの中にわずか3個の角砂糖と梅干。そして、この115通の妻からの手紙の束を綴じたものだけを持って帰ってきました。
子供が生まれても夫に顔も見せられない、そんな中で一人で育てながらひたすら夫の帰ることを信じ手紙を書く妻。
この手紙があったからこそ、妻のもとに帰ってきた夫。 連合軍の圧倒的な力の前に敗走の日々を繰り返し、マラリアに襲われ、飢餓に襲われながらも生きる希望を捨てなかった夫の妻への想い。
それは個人の想いではなく、すべての兵士の想い、いやすべての人間の想いでもあるのです。
朗読劇では、二人の兵士が戦地の状況をみせながら、恋文を伝えていきます。
イッセイ尾形さんを中心に9組のバージョンで10公演行われました。 石野眞子さん、奥菜恵さん、北村有起哉さん、紫吹淳さん、星野真理さん等たくさんの方が出演されました。
私は、イッセイ尾形さん、木ノ本嶺浩さん、紫吹淳さんの組み合わせの回でした。
イッセイ尾形さんを中心に妻の手紙を紫吹淳さんが読みます。南の島の異常な戦況の中で、夫だけにひたすら語りかける妻の気持ちが痛いほど響きます。
妻の愛に堪えるべく生き抜こうとする夫の姿が浮かび上がります。
今回多くの役者さんが参加され、こうした9組のバージョンで作られたのは、それだけ皆さんが、現在の状況に危惧を抱いているからです。
こういう今だから、また同じことを繰り返さないようにと、この朗読劇を通して、声高ではないけれど訴えていきたいと思われたのでしょう。
いつまでも戦後ではいけないと思っていたら、戦前になっちゃったなんて、しゃれにもなりません。戦争は、身体だけでなく心も殺します。
私たちは、あの頃のように黙っていてはいけないのです。想像力を広げましょう。