シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。今日はちょっぴり冷たい雨なのに、シナリオワークショップにはたくさんの方がおいでくださっています。 実際に15分ほどでシナリオを書いていただくのですが、同じ設定で、みんな違うドラマが生まれることに、皆さんびっくりされます。
だって、すべて人は唯一無二の存在なのですから、誰とも違うのは当たり前。他人(ひと)と違うことの面白さが、創作することの面白さでもあります。 日本中の人に、シナリオを書いてもらいたいと思っているのは、自分だけの想像力、創造力を広げてもらうことができるからです。
出身ライターというか在籍ライターというのか(まだ、作家集団で頑張っていらっしゃるので)なんといえばいいのかわかりませんが(笑)、脚本家であり小説家でもある土橋章宏さんの新刊が出ました。
土橋さんは、「超高速!参勤交代」で、小説も映画も大ヒット。デビュー作で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞してしまうという強者中の強者。
なにしろ、土橋さんの小説は面白い!発想がずば抜けています。
今度の新刊は、「引っ越し大名三千里」(ハルキ文庫刊) 今度は参勤交代ではなく、国替え。国替えって、土橋さんの小説読んで初めて気が付きました。藩全員のお引越しなのですね。
言われてみれば当たり前のことなのに、参勤交代の大変さは、よくお話になっていたけれど、国替えって、どちらかというと加増とか減封とかだけで、どれだけ引っ越しするのが大変かって話は、あまり知りません。
しかも、国替えの引っ越し部分だけという眼のつけどころがいいですね。切り口もうまい。
徳川家康の血を引く譜代大名でありながら生涯に7回も国替えをさせられた「引っ越し大名」とあだ名がついている不運な大名松平直矩。
またまた姫路城から豊後日田への国替えに。度重なる国替えの激務に引っ越し奉行は亡くなり、誰もひきうけてがなく、無理やり継がされたのは、書庫に引きこもり侍と揶揄されている片桐春之介。
今までまったく頭角を現さず「かたつむり」とあだ名のついていた春之介が、多くの本から得た知識と知恵で、「人無し・金無し・経験なし」の最悪の状況を打破していきます。
次から次へと降りかかる難題を打破していくひとつひとつのアイデアと春之介のキャラはもちろん取り巻く人々のキャラが最高で、あっという間に読破してしまいました。
これもまた映画化になるのでは?
「超高速!参勤交代」の続編「超高速!参勤交代リターンズ」は9月10日の公開、また「幕末まらそん侍」も2018年公開を目指して制作進行中だそうです。小説も映画も楽しめる土橋ワールドをご堪能ください。