シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。今日は七夕です。全国的に今日は晴れか曇りらしいので、織り姫彦星は出会えそうですね。 ふたりは、どこかが雨だと晴れのところを探して会うのだろうか。1年に1回の逢瀬なのだから、そこは必死に頑張る?どこかが雨だと流れますと神様は言ったのかしら・・・とりとめもなく考えていると、二人の逢瀬の切なさに年甲斐もなく胸キュンを感じ・・・。(笑)
想像の種はいろいろあります。「七夕」という言葉とか行事から想像することもあれば、記者会見とか演説を聴いて想像することも、音楽に触発されたり、他人と話しているときでも、本や絵を見たり読んだり・・・。
昨日、キャラクターのアンチョコ本をご紹介しましたが、続いて想像力を膨らます本、第2弾!こんな楽しい本ができました。
『書き出し小説名作集 挫折を経て、猫は丸くなった』(新潮社刊)
タイトルを見ておわかりのように、小説の書き出しを集めた本なのです。
しかも、名作集といっても小説の名作から抜き出したものではなく、書き出しのみを募集したものから選んだ新作名作集なのです。すごい発想ですよね。
この書き出し小説は「物語を愛する者ならだれもが一度くらいは自分で小説を書いてみたいと思ったことがあるだろう。しかしそれには多大な時間と労力が必要であり・・・(略)ならば、書き出しだけでもいいじゃないか。ただその初期衝動を形にするなら、むしろ冒頭だけの物語の方が、より想いをストレートに伝えられる。(略)書き出しだけなのでその続きは読者が想像しなければならない。だがそこにこそ書き出し小説の妙味がある。書き手のイマジネーションが読み手のイマジネーションを刺激し、ひとつの書き出しからまさに読者の数だけ、無数の物語が生まれる(略)」ということなのです。
自由部門とテーマのある規定部門があります。
その書き出し小説のタイトル「挫折を経て、猫は丸くなった」は研修科の坂本絵さん(ペンネームはもんぜん)が創られたものです。
いいでしょう。イマジネーションを刺激されますよね。416編の中に、16編も選ばれています。
「内側のカーブにヤスリをかけて三日月は完成した」
「ロボットが人間に始めてついた嘘は「似合っていますよ」だった」
「リンゴ磨きのおじさんが卑屈に笑うほど、リンゴはピカピカになった」
「金魚の吐き先を求めて、口をふくらましながら、川のほとりを歩く」
「伝書鳩を既鳩した」
「オセロ部の誇りにかけて、不良から部屋の角だけは死守した」
お題『父』「神様お願い。右の人にして。優希は祈るような想いでDNA鑑定の結果を待った」
お題『歴史的人物』「ナイチンゲールの前に検尿の列が出来ていた」
お題『大阪』「「肺に影がありまんねん」関西弁のお医者さんが言う私の病状は全て冗談に聞こえた」
お題『女子』「今日はガーリーな感じで泣けた」
お題『ゾンビ』「私はあなたの前にいるときだけ、素のゾンビでいられる」
お題『走る人』「一緒に走ろうね、と言っていた友達とパトカーから逃げている」
お題『走る人』「人力車の荷台に私たちを残したまま、取手だけが走っていく」
坂本さんが書かれた出だしだけ読んでも、シーンが浮かんできて、イマジネーションがふつふつと湧き上がって、その先を創り始めている自分がいます。
この本、最近のヒット!最高に面白いです。是非ともお使いください?お読みください?