シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。
シナリオ・センター代表の小林です。オリンピックも終わり、選手たちも帰ってきました。 スポーツの祭典であるはずのオリンピックも、なんだかやけにきな臭い。日本では国威高揚のためとか言われるし、難民選手団や弾圧されている国からきた選手もいっぱいいらしたし、ただスポーツの祭典では終わらないのが現状ですね。
男子マラソン銀メダルリストは、ゴール時に腕を頭上で交差してエチオピアの政治活動弾圧に抗議し、命の危険もあるとの会見に、のんきにしている日本ですが、他人事ではなくちゃんと考えなくちゃいけないと思いました。
だって、エチオピアは実質1党制だからなのだそうで、日本も同じですから。
人はみんな違うからこそ、それぞれが思い思いの方向に向いていられることが大事で、それができることを幸せと呼ぶのだと思うのです。
想像力の必要性について、馬鹿のようにひたすら言い続けている私ですが、シナリオって、本当にバランスよく、想像力を鍛えられるものだと思います。
シナリオ・センターが、日本中の人にシナリオを書いてもらいたいのはそのためです。
ドラマは、人間を描くこと。人間を描く方法は、葛藤と対立。
対立させるためには、右も左も、上も下も、対立する者のどちらの考えも想いも知らなくては書けないのですね。ただ知るだけでなく、その重さも同じでないと対立は面白くなりません。
まずは自分と違う考えや想いに耳を傾けることですね。
とはいえ、自分の考えや想いと違う人の話を聞くのは難しいです。つい反論したくなっちゃいますから。(笑)
でも、ドラマを描くためと思えば、シナリオハンティングであれば、「ああ、こういう考え方もあるのか」「こういう想い方をすることもあるのか」と資料として冷静に聴くことができます。
山本むつみさんが大河ドラマ「八重の桜」を描かれた時、勝者の歴史的資料などはたくさんあり、正当性も認められているのだけれど、敗者の資料は少なくてご苦労されたとお聞きしました。
敗者の立場会津藩を描くためには、会津の視点からみることで、勝者の立場でみてしまうと、対立も葛藤も全く面白くなくなってしまいます。
山本さんの脚本は見事でした。(10月放映の石川五右衛門も書かれています)
なぜ、対立と葛藤があるのかといえば、ものごとにはすべて正解がないからです。だからこそ、他人の考えや想いを聴き、想像力を働かせることで自分の考えや想いを描くことが大事なのだと思います。
人は全て誰もが違うこと、ものごとに正解はないことを認識した人たちに、日本を引っ張ってもらいたいものです。