せっかく脚本コンクールに応募するなら、最終選考に残って、できれば大賞をとりたいですよね。
そのためにどうしたらいいか、わたくし齋藤、ひとつ思い当たったことがあります。
それは、
テレビ局や映画会社のプロデューサーが、脚本コンクールの選考委員を務めているケースが多いこと。
ということは、プロデューサー視点が分かれば、最終選考に残り、大賞をとることができるはず。
では、脚本コンクールでプロデューサーはどんなところを見て、どんなことを求めているのか。
先日行われた第5回市川森一脚本賞の選考委員を務めたプロデューサー陣の選考理由から紐解いてみます。
最終選考に残る、プロデューサーにささる脚本はテンポとテーマ
第5回市川森一脚本賞では、惜しくも大賞を逃しましたが、出身ライターのお二人が最終選考に残りました。
ドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS)の池田奈津子さんと、ドラマ『夏目家どろぼう綺談』(テレビ朝日)の東山泰子さんです。
なお、東山さんの『夏目家どろぼう綺談』は第14回テレビ朝日21世紀シナリオ大賞の受賞作でもあるので、「これぞプロデューサーが求めている脚本!」とも言えますよね。
では、このお二人の脚本は、選考委員を務めたプロデューサー陣にどう評価されて、第5回市川森一脚本賞の最終選考に残ったのか、選考理由を見てみます。
■菅野高至さん
『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS)の池田奈津子さんについて:
展開が遅く、同じ所をぐるぐる回っている感じで、全10回の物語としての要素が不足している。期待したいのは、池田さんの台詞である。今回の候補者の中では、一番素直で伸びる資質があるように思ったからだ。
『夏目家どろぼう綺談』(テレビ朝日)の東山泰子さんについて:
テレビ朝日の新人シナリオ大賞受賞作。旨くまとまった人情噺なのだが、何を描きたかったのかが最後まで分からなかった。明治という時代を扱っているからこそ、現代を考えて欲しい。
■岡部紳二さん
『砂の塔〜知りすぎた隣人』(TBS)の池田奈津子さんについて:
女性の性の生々しさを描き、最後まで犯人が分からない展開に引き込まれた。涙のラストも印象的。ただ多少だるみ感があった。
『夏目家どろぼう綺談』(テレビ朝日)の東山泰子さんについて:
夏目漱石自身のキャラクター描写がうすく、文学に向き合う心情にも説得力が感じられなかった。脚本作りのモチベーションのなかに、漱石への愛情を感じたかった。ただロクとの心の交流は爽やかな印象が残った。
『砂の塔〜知りすぎた隣人』の池田奈津子さんについては、菅野さんは「展開が遅く、同じ所をぐるぐる回っている感じ」とし、岡部さんも「多少だるみ感があった」と講評。
『夏目家どろぼう綺談』の東山泰子さんについては、菅野さんは「何を描きたかったのかが最後まで分からなかった」とし、岡部さんは「キャラクター描写がうすく」と講評。
この講評から
・テンポの良いドラマ展開
・濃いキャラクター描写など、描きたいことを明確にする
——ができていれば、脚本コンクールで最終選考の残り、なおかつ、大賞がとれるのではないでしょうか。
第5回市川森一脚本賞を受賞したドラマ『僕のヤバイ妻』(関西テレビ)脚本の出身ライター・黒岩勉さんへのプロデューサーの評価・詳細は「コンクールで賞を獲るにはキャラクターが重要」をご覧ください。
最終選考に残るには脚本の引出し
次に、プロデューサーがどのような視点で見た脚本が大賞をとれるのか。
大賞である第5回市川森一脚本賞を受賞した黒岩勉さんに対して、選考委員である現役プロデューサーはこんなコメントをしています。
■次屋尚さん
黒岩さんの脚本を読み、まず最初に感じたのは、この脚本家はたくさんの引出しを持ち合わせ、物語と人物のセリフを自分自身の手法で血肉化しているに違いないということでした。
・沢山の引出しを持ち合わす。
これは、脚本コンクールで最終選考に残り、大賞をとるためだけでなく、プロデューサーの方々が、特に新人脚本家に求める頻出事項ではないでしょうか。
というのは、あるテレビ局のプロデューサーからこんなことを聞いたことがあるからです。
新人脚本家に「ドラマの企画書を出してみないか」と話したところ、待てど暮らせど企画書は来ない。
結局、他の脚本家に依頼し、そのドラマが終了した頃、新人脚本家から企画書が送られてきたと…。
「企画書を出して」と言われたら、できれば翌日、最低でも1週間以内には出した方がいいのではと、仰っていました。
また、脚本コンクールの審査員を何度も務めた映画会社のプロデューサーはこれまで、大賞をはじめとする入賞者全員に名刺を渡したものの、脚本や企画書を売り込んできたのは1人か2人。
「名刺を渡す=連絡OK」ということなのに、売り込んでくる新人脚本家はほぼいないと嘆いておられました。
プロデューサーから企画書提出のチャンスをもらえたり、連絡先を教えてもらえたときも、肝心なのは「沢山の引出しを持ち合わせているか」ではないでしょうか。
つまり、沢山の引出しを持ち合わせていれば、
“物語と人物のセリフを自分自身の手法で血肉化”できるので、大賞がとれる。
たとえ大賞がとれなくても、最終選考に残ることができ、選考委員のプロデューサーに積極的に脚本や企画書を売り込むことができるということですよね。
脚本コンクールでプロデューサーが求める3点
以上のことから、プロデューサーが脚本コンクールでどんなところを見て、どんなことを求めているのかが分かりましたよね。
最終選考に残り、なおかつ、大賞をとるには、
①テンポの良いドラマ展開
②濃いキャラクター描写など、描きたいことを明確にする
③沢山の引出しを持ち合わす
この3点ができていれば、脚本コンクールの選考委員であるプロデューサー陣は、最終選考に残し、なおかつ、大賞を与えるのではないでしょうか。
2017年6月締切の脚本コンクール
2017年6月締切の脚本コンクールとして、例えば、
■第6回TBS連ドラシナリオ大賞 詳細はこちらから
■創作テレビドラマ大賞 詳細はこちらから
■いさまスタジオ映画祭シナリオ大賞 詳細はこちらから
——があります。
今回ご紹介したプロデューサー視点をおさえて、脚本コンクールで最終選考、そして大賞をとるためのヒントにしてくださいね。