ドラマとはなんぞや
シナリオ・センター代表の小林です。今日のシナリオ相談室に、あさイチ(NHK)をご覧になって、シナリオってこんな使い方(シナリオ日記)もあるのだと感心しておいでくださった方がいらっしゃいました。放映直後も感動的なお手紙をいただいたり、お問い合わせをくださったりとさすがNHKの威力と密かに喜んでいます。(笑)
テレビの威力は確かにすごいのですが、ここ数年のドラマ低迷はいかなることでしょう。
「テレビの見る夢-大テレビドラマ博覧会」(入場料無料)という催しが、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館で5月13日から8月6日まであります。
この博覧会、脚本家を志す方には、是非いらしていただきたいと思います。
シナリオ・センターが目指すシナリオの技術、いえ、もっと大きくドラマとはどういうものかというシナリオのあり様をみせてくれているからです。
演劇博物館の岡室美奈子館長は、この博覧会の開催にあたってこうおっしゃっています。
「ドラマの魅力とはどこにあるのだろうか。ストーリー展開なのか、配役なのか、テーマなのか・・・。私たちは、日本のドラマの魅力は、ジェットコースター的にストーリーが目まぐるしく展開する海外ドラマとは異なり、むしろストーリーに回収されない細部にあると考えている。ドラマの神様は細部に宿る。
例えば、「ロングバケーション」でヒロイン南が二階の窓でキャッチしたスーパーボール、「すいか」で逃亡犯の馬場ちゃんが「ハピネス三茶」でみつけた食べ残しの梅干し、「木更津キャッツアイ」で余命宣告を受けた主人公ぶっさんを囲んでだらだら続く雑談、「カーネーション」で身近な人たちが戦死した後に糸子の自転車から零れ落ちた赤い花びら、「泣くな、はらちゃん」で転んだ越前さんにはらちゃんがそっと差しかけてくれる傘、「あまちゃん」の「海死ね」の落書きや「御すんぱいねぐ」の電報、「カルテット」のレモンをかけてしまった唐揚げ・・・こうしたものは、ストーリーの効率的な展開だけ考えれば必ずしも必要ないのかもしれない。
けれど、それぞれのこまやかな、そして豊かな表現は私たちの記憶にくっきりと刻みこまれ、思い出すたびにドラマっていいなあと思わせてくれるのだ」
このような視点から心に残るドラマを振り返って、ディテールを描くことの大切さをわかっていただきたいと思うのです。
ドラマの神様は細部に宿る
博覧会開催中に、6/28(水)「坂元裕二×是枝裕和トークショー~ドラマの神様は細部に宿る~」
7/21(金)「尾野真千子が語るテレビドラマ「カーネーション」を中心に」というイベントも開催されます。
(詳細・申し込みは早稲田大学演劇博物館HPへ)
合わせて山田太一展も行われており、数々の名作の映像、台本、写真、直筆原稿など、山田太一的心を感じることができます。
こちらも開催中に、7/12(水)「堀川とんこう×中村克史×長谷正人『山田太一ドラマの演出』」もあります。
名作を生んできた方々のお話をお聴きすることは、シナリオを描く上で大きな糧となります。お話を聞きに行ってください。
ドラマが低迷していると言われて久しい昨今ですが、シナリオライターや演出家、プロデューサーを初めとする作り手たちは、決してぼんやりしているわけではありません。
「ドラマの神様は細部に宿る」ことをしっかりと心に刻んで「魅せるドラマ作り」に心を砕いていきたいと思います。