先輩たちの声
シナリオ・センター代表の小林です。
「表現者の自由が奪われることを看過できない」と日本映画シナリオ作家協会の加藤正人理事長が劇作家協会など10団体とともに反対声明を出されました。
赤川次郎さんが朝日新聞の声欄に自ら投稿され、共謀罪の怪しさ、不要性を追求されています。
法案が通っても将来を考え、シナリオ・センター出身の加藤さん、赤川さんはじめ多くの方々が大きな声を上げてくださっている姿は、とても心強いです。
昨夜のニュースの街頭インタビューで、共謀罪が成立しても自分は関係ないと思っていらっしゃる方があまりにも多くてびっくりしました。
「僕はテロやらないし・・・」「ふつうの人間ですから」「私は一般人です」といっても、セリフだけでは本当かどうかわかりませんね。
映像表現の技術でお話するところの「見えない」「映像に映らない」部分です。
「僕はテロリストではありません」と背中に張り付けてわかるようにしないと見た目ではわかりません。 よけい怪しいですね。(笑)
トイレを探してアタフタしているあなた、爆弾を仕掛けようとしてウロウロしているとみられるかもしれません。
あなたをテロリストにすることは、恣意的に陥れようとすることは簡単なのです。
横浜事件をご存知ですか。簡単にいうと戦後最大の言論弾圧事件です。治安維持法のもと、60名もの出版関係者が政府に盾を突こうとしていると捕まり、30名が偽りの自白をさせられ、2名が獄死させられました。
きっかけは、温泉旅行で撮った記念写真。みんなで集って共謀しただろうということです。
人間関係はみえないのです。
「私がこんなに想っているのに」「そんなつもりではないのに」・・・「なんでわかってくれないの」ということばかりです。
他人(ひと)は誰一人同じ人ではないのですから、同じ行動や同じ考えをもつとは限らないのです。
だから、ドラマが無限大に生まれるわけですけれど。
悪いのは私たち
小説家の高村薫さんは「悪いのは全部わたしたち」とおっしゃっています。
「なぜ政府のウソを見抜けなかったのか。高い支持率を与えてしまったのか。
それは考えることを放棄してしまったから。
今の日本は情報が多すぎて、何が最善なのか、何が本当なのかが見えにくい。
わかるのは、『結局、世の中難しいね』っていうことだけ。
そこで自分で決断することに限界を感じ、ある種威勢の良い言葉でスパッと切ってくれる政治家に飛びついてしまう。
そう、この70年、権力は「優しい顔」をしていたんですよ。
よく注視すると本当は違うけれど、市民感覚として権力は怖くなくなっていた。
いつ権力が私たちに牙をむくか分からないのに。
共謀罪はまさにそういう法律だったのです。
私たちは本当に取り返しのつかないことをした、今は、そのことを肝に銘じることしかできない。」(一部抜粋)
どのように思い、考えてもいいのですが、自分で考えないというのが一番いけません。
自分の頭で考え、自分の心で想い、自分の口で伝えることが、人として生きるということだと思います。
ドラマは、人間を描くことです。
シナリオライターは、自分の目で見つめ、聴いて、自分の考え、想いをきちんと創りあげることで、人間を描くことができるのです。
私たちも表現の自由、行動の自由を守るために、先輩たちの声を、真摯に受け止めて、何を見つめ、聴けば良いのか考えていきたいと思います。