賞がとれなかった自分の脚本から、その理由を分析する
脚本コンクール に出した自分の脚本。
残念ながら、賞がとれなかったとき、「ああ、ダメだった」でなんとなく終わらせていませんか?
悔しいし、辛いけれど、受賞した脚本にあって、自分の脚本にないものを分析すれば、次に活かせますよね。
その分析方法は、4つのポイント、
①主人公を困らせる
②主人公を葛藤させる
③主人公のキャラクターを際立たせる
④映像のセリフにする
――を、自分の脚本はきちんと抑えられていたかどうか。
では、この4つのポイントをどう抑えればいいのか。
シナリオS1グランプリの審査員も務める浅田直亮講師の第32回シナリオS1グランプリ公開講座からご紹介します。
講座の中では、第32回シナリオS1グランプリで受賞した3作品にも触れています。
3作品が掲載された月刊シナリオ教室6月号と合わせてご覧いただくと、この「脚本コンクールで賞をとる4つのポイント」がより明確になります。
ポイント①:主人公を困らせる
浅田講師:テレビドラマや映画の主人公が、最初から最後までハッピーだったら、観る気になりませんよね?
視聴者は、主人公が困れば困るほど、感情移入します。感情移入すればするほど、面白いと感じます。
だから、主人公をとことん困らせてください。
特に、後半からクライマックスにかけて、もっと困らせられるか。
最後の最後までもっと困らせられないか、考えてください。
第32回シナリオS1グランプリの受賞作上位3作品(準グランプリ2作品、佳作1作品)は、主人公を困らせて、困らせています。
ポイント②:主人公を葛藤させる
浅田講師:「主人公を困らせる」と同様、主人公が葛藤してないと、視聴者はやはり感情移入できません。
主人公をとことん葛藤させてください。
葛藤させるパターンは2つ。基礎講座の課題にもなっていますね。
1つは、迷っている人パターン。「こっちにしようかな、あっちにしようかな」といったように、主人公の気持ちを揺れ動かして下さい。
もう1つは、イライラしている人パターン。主人公が目的に向かって進もうとすると、 “障害”とぶつかり、「こうしたいのに、できない!」となる。これでもかと“障害”をぶつけて、主人公をイライラさせてください。
第32回シナリオS1グランプリでは、佳作を受賞した湊本佳孝さんの『窃盗(しのび)』が特に主人公をとことん葛藤させています。どう葛藤させていたか、意識して読んでみて下さい。
ポイント③:主人公のキャラクターを際立たせる
浅田講師:主人公のキャラクターをきちんと作らないと、主人公は動き出しません。
ドラマが動きません。
主人公のキャラクターを際立たせるために、「〇〇すぎる性格」にしてください。
出身ライターの清水有生さんは、この「〇〇すぎる性格」を軸に、そこから主人公の履歴を作ると言っていました。
例えば、「気が小さすぎる性格」の主人公。気が小さすぎる性格なので、テスト前日は勉強しているのにアタフタしてしまう。気が小さすぎる性格ゆえに、成績は「5」がとれず「オール4」。
こんなふうに、「〇〇すぎる性格」と設定すると、このイメージから履歴を作ることができます。
そして、この履歴を主人公のセリフやリアクションに反映させることができます。
このように、「〇〇すぎる性格」と設定すれば、主人公のキャラクターをどんどん濃くできて、結果、キャラクターを際立たせることができるます。
第32回シナリオS1グランプリでは、準グランプリを受賞した若山翠水さんの『アイのある婚活』が特に、主人公のキャラクターが際立っていました。そこも意識して読んでみて下さい。
※主人公の履歴についてはこちらのブログ「魅力的なクライマックスシーンの作り方」をご覧ください。
ポイント④:映像のセリフにする
浅田講師:脚本のセリフは会話文になりがち。
でも、“読む会話文”ではなく、“俳優が喋って、視聴者が聞く文章”にしてください。
これが“映像の”セリフです。
例えば、第32回シナリオS1グランプリで準グランプリを受賞した花田麻衣子さんの『平成剣術指南』。
この中に、登場人物たちのセリフがポンポンと飛び交う、細切れの遣り取りがあります。
声に出して読んでみて下さい。非常にテンポがよく、イキイキとしています。
セリフがイキイキとしていると、視聴者はより感情移入できます。
そして、演じる俳優もイキイキとします。となると、現場のスタッフたちもイキイキとするのです。
脚本家は現場まではタッチできませんが、脚本家が書いたセリフで現場全体がアガルかサガルかが決まるのです。
※セリフがイキイキとすると本当に現場がイキイキとする!
この現場のナマの声は、こちらのブログ「コンクールで賞をとるにはキャラクターが重要」をご覧ください。
この4つのポイントをもっと強めると、グランプリがとれる
シナリオS1グランプリでは、第19回を最後に、そこからずっとグランプリ作品が出ていません。
浅田講師は「今回もグランプリが出ず、トップの賞は準グランプリでした。
それは、主人公をもっと困らせることができるし、もっと葛藤させることができるし、キャラクターをもっと際立たせることができるし、映像のセリフにもっとすることができるからです」とコメントしていました。
脚本コンクールに出したけれど残念ながら賞がとれなかった脚本を、今回ご紹介した4つのポイントを照らし合わせて、とことん抑えられていたかどうか、分析してみて下さい。
そして、グランプリを狙ってください!
なお、シナリオS1グランプリについてはこちらをご覧ください。
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