社内会議あるある「下町ロケット 佃VS唐木田」
連続ドラマにもなった小説『下町ロケット』では、ものづくり魂を大事に考える佃社長とその考えを指示する開発部長の山崎、企業の安定的な利益優先で考える唐木田営業部長が、社内会議で揉めるシーンがあります。
山崎「唐木田さんは目先の利益に飛びつこうとしているけどさ、それがベストだってどうして言えるんです?(中略)私は大型水素エンジンの部品提供、やれるものならやってみたい(中略)」
唐木田「生憎、趣味で仕事をやってるんじゃないんでね」
(小説『下町ロケット』p229より)
夢や理想を追うのか、お金をとるのか、どちらを選ぶべきかという議論や、開発部門と営業部門など部門間での対立などどんな企業でもよくあることです。そんな時、お互いが自分の主張ばかりする=「感性でする会話」では、永久に平行線です。
社内コミュニケーションの目的は、お互い気持ちよく「〜した方がいいよね!」と合意できることです。相手に妥協させたり、議論で打ち負かすことが目的ではありません。では、どのようにコミュニケーションをすればいいのでしょうか?
社内コミュニケーションが難しいワケ
ビジネスマンなら誰でも、クライアントとのコミュニケーションには細心の注意を払い、ニーズを把握する努力を惜しまないでしょう。なのに相手が同僚だと、途端にそんな努力は面倒くさくなってしまうものです。「毎日お客さんに気を遣ってるんだから、身内にまで気を遣う余裕ないよ」「仲間なんだから、察してよ」とお思いの方は多いと思います。
自分の会社を意図的に壊そうとする人なんていません。基本的にはみんな「よかれ」と思って意見を言うのです。それなのに、なかなか合意形成できないのは、相手の考えは置いておいて、自分の意見を知らず知らずに押しつけてしまうからです。
尋問調のセリフがあふれるビジネス会話
合意形成するためには、そのベースに「共感」が必要です。「ああ、そういうことがあったから、あなたはそう考えるようになったのね」と思えれば、たとえ自分と正反対の意見を主張している相手にでも共感はできますよね。
共感を生むためには、お互いに相手がどう考えているのか、どんな状況なのかという背景と事情を共有する手法が必要です。
ですが、社内コミュニケーションはめんどくさい。なんとなく。
そこでやってしまいがちなのが、こちらがしりたい答えだけを引出そうとすることです。
「お願いした企画、考えてくれてる?」
「いや、まだアイデア段階で…」
「いつまでにできそう?」
「来週までには」
「来週って?」
「えっと…水曜日くらいにはできそうです」
社内のあちらこちらで、ありそうな会話ですよね?
こういったあらかじめ決まった答えを引き出すためのセリフを、シナリオでは「英会話セリフ」と言います。これを使うと相手の背景や事情がすぐわかります。ただ、相手は尋問のように感じて引いてしまいます。
コミュニケーションとしてはイマイチ。シナリオなら、初心者レベルのセリフの組立てです。
「最近、学校はどうなんだ?」
「・・・・・・」
「ちゃんと勉強しているのか?」
「まぁ、それなりに」
「今度のテストは大丈夫なのか?」
「うるさいなぁ」
など、日常の中にもかなりの「英会話セリフ」があふれています。これでは相手の共感を得ることはできません。聞き手に都合がいいだけの一方的な会話だからです。
「共感」を引き出す自己開示
英会話セリフを回避するためには、どうすればいいのでしょうか?
そんな時は、自己開示するのが有効です。例えば
「最近、学校はどうなんだ?」
「・・・・・・」
「ちゃんと勉強しているのか?」
「まぁ、それなりに」
「お父さんは、高校のとき遊んでばかりいて苦労したからなぁ」
「ふぅ~ん」
「テストなんか、ほとんど一夜漬けだったからな。一夜漬けのとき、あるだろ?」
「う~ん…まぁ科目によってはねぇ、けど一応ちゃんとやっているよ」
というように、自然な会話になるのではないでしょうか。
お互いの意見をすり合わせて、合意形成をするためには、相手の背景・事情だけではなく、自分の背景・事情も伝えなければいけません。
先ほどの会話、
「お願いした企画、考えてくれてる?」
「いや、まだアイデア段階で…」
「いつまでにできそう?」
「来週までには」
「来週って?」
「えっと…水曜日にはできそうです」
「水曜日か、まぁいいけど…」と思いながら、本当は週の頭に企画について話したいと思っているとしたら、無駄に不満がたまってしまいます。そんな時こそ、自己開示をして、来週頭には欲しいという事実、そしてなぜ来週頭にほしかという理由を伝えることです。
「えっと…水曜日にはできそうです」
「そうなんだ。できれば、月曜日には企画の話をしたくて…」
「え!?そうなんですか」
「いや、ごめん。実は、部長に早めに企画書にしてほしいって、急にいわれて…」
「うわ~、大変ですね」
「そうだんだよね…いま、必死でスケジュール調整してるとこでさぁ。申し訳ないけど、少し早くできない?」
「そういうことなら…私も調整してみますね!」
「ありがとう!助かるよ!」
お互いの背景・事情がわかれば、スケジュールなどを調整しながら、「だったら、~にしたらいいよね」という結論が出しやすくなるのではないでしょうか。
少なくとも、一方的に「月曜にしてほしい!」というよりも、何倍もいいはずです。
(社内コミュニケーションでの合意形成はもちろん、相手の悩みや問題解決にもシナリオを役立てることができます。参照:悩みを解決する方法 シナリオ技術で悩みを分解)
お互いの背景・事情を確認して生まれるハイブリット案
お互いの背景・事情を確認して「共感」というベースができると、相手の主張も「まあ、そういう考えもあるよね」と理性的に受け入れられるようになります。お互いにそう思えれば、どちらかが諦める「妥協案」ではなく、双方のメリットを掛け合わせた「ハイブリット案」で合意できるはず。
身内だからこそ、「感性でする会話」ではなく「シナリオ発想のセリフ」で理性的になることで、ストレスフリーで前向きな社内コミュニケーションを活性化してください。目指せ、合意形成の達人!
シナリオは一千万人以上の視聴者に「共感」してもらうための技術ですから、使わない手はありません。「シナリオ発想のセリフ」が、合意形成するための効果的な武器です。