突撃講師インタビュー。今回は本科を担当する原田講師です。
講師ならないかという誘いを「教えるなんてとても出来ない」と2回もお断りになられた原田講師も、今年で講師生活25年!
いまだ「シナリオの基礎技術」を片手に初心を忘れない、原田講師。
「2度断ったのにどうして教えることに?」「そもそもシナリオを始めたきっかけは?」「どうやら未だ、本科に緊張して教えているらしい?」
実はしゃべるのが苦手な原田講師のインタビューをご堪能ください。
しゃべるのが苦手なんです。
原田
本当にダメなのよ、面と向かってしゃべるのって。
新井
そうなんですか?意外です。いろいろしゃべってもらえるかと。
原田
マジ無口です(笑)。
「うんうん」て話を聞いている方が好きなんです。
ゼミではそういうワケにはいかないですが…。
新井
そりゃそうですよね(笑)。
昔から喋るのが苦手ですか?
原田
そうですね。小学生くらいの頃から。
きっと育てられ方なのかな、自分に自信がないんです。
父親が私のすることをなんでも否定してくる人だったから。
あんまりしゃべりたくなくなって。
新井
なるほどなぁ…。
原田
親が求めている子供像があるじゃない?
そういう親の希望を裏切ってきたから。
昔からずっと後ろめたいというか…モヤモヤした部分もあって。
だから私は小さいころから鬱積した部分を文章書くことで、内面のバランスを保っていたところがあるんです。
新井
なるほど。確かになんでも否定されるとしゃべりたくなくなるかも。
ちなみにどんなものを書いていたんですか?
原田
エッセイや詩、小説みたいなものを。
心の闇を描いているものばかりで、とにかく暗いんです(笑)。
どの作品にも「自分は偽善者だ」って出てくるの(笑)。
新井
はははは(笑)。
原田
今は俯瞰で見られるから、笑えてくるんだけど(笑)。
きっと当時は本気で自分のことを偽善者だって思っていたんでしょうね(笑)。
新井
(笑)。表現ってその時の自分が反映されますからね。
原田
そうですね。恥ずかしいけど(笑)。
でも大学生時代に友人達と同人誌を作った時ですかね。
この「暗い沼」みたいな作品をみんながスゴい褒めてくれたの。
新井
「暗い沼」(笑)。まわりが共感してくれたんですね。
原田
そう。共感してくれるとそれが嬉しくて。
ずっと自己完結で書いていただけだから。
私に関して言えば、「作品の方がより本来の自分なんだ」と思います。
だから、私自身を「良い人ですね」って褒められてもねぇ…偽善者だから(笑)。
新井
「見たままの私とは違うわよ」っと(笑)。
原田
そうそう(笑)。
ホンット親のレールにのれたらなぁ…、もっと自信ががあって文章表現なんてする必要なかったと思うんだけど。
新井
でも、そんな原田さんだから文章で表現していたんでしょうね。
実は講師の誘いを2回断った
原田
まあね。
だけど私自身はおしゃべりの人が好きなんですよ(笑)。
新井
じゃあ今回僕と無理矢理しゃべらされて、しんどいじゃないですか。
原田
だから、「ダメなの」って言ってるじゃないの(笑)。
新井
はははは(笑)。
でも、しゃべるのが苦手なのに。よくゼミをやれてますよね、いつも一生懸命。
新井
どうして講師になられたんですか?
原田
小林代表に「なってみない?」と言われたんです。25年も前の話(笑)。
最初は断ったんですよ。2回目も…。
新井
2回も!?どうして?
原田
私なんかがムリだと思った。だってしゃべるのが苦手なんですよ。
ずっと自分のためにシナリオを書いていただけだったので。
そんな私が人に教えられないだろうなって。
新井
そっかぁ。でも「教えてみたいな」とは思いませんでした?
原田
…ただただ恐れ多いというか。こんな私がゼミできるわけないって。
小林さんが私にやって欲しかったのか?いまでも分からないからね。暗くて、鬱屈しているのに(笑)。
新井 はははは(笑)。
原田 (笑)。あと私は「時代劇」が苦手だっだから。
そしたら※後藤先生の「ゼミは専門知識を教えるところじゃない。
講師がみるところは人間ドラマだから。それはあなたになら分かるはず」という言葉が後押しになって。
「あ、そうなんだ」ってスッと落ちたんですね。
※後藤千津子…シナリオ・センター所長、作家集団Fクラス担当。
新井
それでゼミをやることにしたんですね。
でも最初は断った原田さんが25年も本科を担当しているんだから不思議だなぁ。
25年担当している本科。…でも、いまだに緊張しています。
原田
ホントね。いまだに教室行くときに脚が震えるますからねぇ…。
今でも、「よし!」って気合いを入れてのぞんでいるんです。
まあ、やってみれば、楽しくなくはないですけど…。
新井
楽しく、なくはない?(笑)。
原田
楽しいって言っちゃうと語弊があるかな(笑)。
新井
はははは(笑)。
でも25年やっていても、いまだにプレッシャーがあるんですね?
原田
毎回緊張です(笑)。
新井
毎回?もう25年もやっているのに?
原田
やっぱり同じ生徒さんでも、書いてくる課題に出会うのは初めてだから。
同じ人でも書いてくる課題によって教室に来た時の雰囲気が違うんですよ。
前回は和気あいあいだったのに、今回は少し構えているなってことありますから。
新井
そっか、ゼミっていうよりは課題との出会いに緊張するんですね。
原田
そうそう。
生徒さんが発表された課題にコメントをする時も、腑に落ちてないんだろうなって時もありますよ。
帰る時の雰囲気がピリッとしていたりね。
新井
そういう緊張感かぁ~。
原田
だから、「違うな」って思ったら何でも言ってね、と。
最終的には書いた本人の作品なんですから。
新井
まあ、ゼミって講師のコメントや生徒さんの感想はありますけど、「必ず取り入れろ」ってことではないですもんね。
自分なりに取り入れて欲しいですよね。
でも25年間、緊張しながら、常に「コレで本当に良いのか?」って思っている。そんな原田さんだから、きっと代表も本科を任せたんだろうな。
新井一のサイン入り「シナリオ基礎技術」はまだまだ現役
新井
そもそも原田さんはどうしてシナリオを学ぼうと思ったんですか?
原田
主婦になって子どもが出来まして、書くことから遠ざかっていたんです。
その時は心ここにあらずって感じでした。
そんな時テレビで「猿の惑星」を見たんです。
あのオチを見たときに鳥肌が立って「よし!映像を勉強しよう」と。
新井
あー、確かに「猿の惑星」。あのラストは衝撃でしたねぇ。
原田
そうでしょ(笑)。見て一週間後にはシナリオ・センターにきていました。
朝日新聞の広告を見てね。
きっと小説であのオチを説明しても、映像ほどには感動しませんよね。
瞬間的に小説よりもスゴいんじゃないかって思ったんです。
新井
「小説よりも映像だ」と。最初はどの講座を受けたんですか?
原田
私は作家養成講座(半年コース)。
南青山にシナリオ・センターがまだあった頃で担当は後藤先生。
カッコよかったな、後藤先生(笑)。
新井
(笑)。講座で覚えていることありますか?
原田
うーん、昔だからね、あんまり覚えていないなぁ。申し訳ないです(笑)。
新井
いやいや。25年も前ですから(笑)。
原田
でも、ただただ課題が楽しかったのは覚えています。
今でも赤ペン添削された課題持っていて、読み返すんですけどね。
我ながら「映像表現にしようと頑張っているな」って思ったり(笑)。
新井
講師目線で当時の自分の課題を見ているんですね。
原田
まあねぇ…。ゼンッゼン面白くないですけど(笑)。
新井
はははは(笑)。
原田
ゼミの中でも私が「あれがこれが」って指摘するじゃない?
「そんな言うなら原田先生の生徒時代の課題を見せてください」なんて。
新井
それはちょっとコワいなぁ(笑)。
原田
(笑)。あとは私、作家養成講座で、※皆勤賞をもらったんですよ。
これなんです。
※皆勤賞…作家養成講座を一回も休まず、課題を全部だした方へ「シナリオの基礎技術」をプレゼント。現在は後藤所長のサイン入り。
新井
おお、スッゴイ! 「シナリオの基礎技術」。新井一のサイン入り。
これはいつも持っているんですか?
原田
ええ。持っていないと落ち着かないんですよ。
熟読しているから内容はほとんど入っているんですけどね。
2冊あるんだけど、このサイン入りの方を持っていないと降りてこないんです。
新井
降りてこない(笑)。新井一が憑依するんですね。
原田
ええ。バイブルなんです。
新井
なるほど(笑)。
そういえば、小説を書いていたって言ってましたが、シナリオを初めて書いた時って違和感ってありました?
原田
ありました。構成の頭の使い方は苦労したかなって。
あとはセリフじゃなくて映像でどう伝えるか、ものスゴい考えました。
新井
シナリオって映像表現ですけど、ついセリフを多用しちゃいますから。
原田
そう。だから、映像で見て「感情」「事情」も伝わるようにしてほしい。
それが映像の面白さで醍醐味ですから。
新井
それこそ「猿の惑星」みたいにね。
生徒さんの「自分を吐き出したい」そんな気持ちも救い上げられたら。
原田
うん。だから、毎回具体例をだして、イメージしやすくしてます。
でもこれは25年やっていてもね。実感してもらうのは難しいですよ。
新井
そうなんですよね。
※柏原寛司さんが科学ドラマの審査委員長をやっていたときに仰っていたのが、みんな「クライマックスを語りすぎる」ってことなんです。
「映像としていかに魅力的なシーンになるか、もっと意識してほしい。監督的な視点かもしれないけれど、どうしても脚本家に足りない部分だ」と。
でも、映像だけに頼るのはみんなコワくなっちゃうのかなぁ…。
※柏原寛司…新井一に師事。「あぶない刑事」「傷だらけの天使」「探偵物語」や近年は「ルパン三世」や「名探偵コナン」他多数の脚本を執筆。
原田
それに魅力的なシーンを書いても、意外と本人は無意識だったりね。
だから、生徒さんで面白いシーンを書いてきたときは、「ここが魅力的なんだよ」とその場にいるみんなに伝えています。
新井
ゼミの良さってそうやって共有できるところですよね。
原田
そうなんですよ。ゼミは他の人の作品を聞いても勉強になるから。
講師と発表した生徒さんとの一対一、自分たちに関係ない、なんて思わないで欲しいですね。
新井
ホントですね。ゼミではそういう工夫も?
原田
してます!できてるかな?(笑)
でも、無駄にしてほしくないから、私なりにやっているつもりです!
新井
さすがです!
いやあ今回はお話を伺わせていただきありがとうございました。
結構しゃべっていただきました(笑)。
原田
胃が痛いよ、もう(笑)。
新井
まあそうは言わずに(笑)。これからも本科をお願いします。
原田
もちろん続けさせていただきます。
人間は苦手な部分もありますけど、嫌いじゃないから。
新井
嫌いだったら、シナリオ書けないじゃないですか(笑)。
原田
まあね(笑)。
本科ではこれからも「奮い立たせるための言葉」を言ってあげたらと思います。言葉って人生を変えるじゃない?
特に講師の何気なく言った言葉が、相手の中の残るんだろうから。
私も後藤先生の言葉が残っていますからね。
新井
なるほどね。
原田
「シナリオライターになりたい」って生徒さんがほとんどだと思います。だけど、「自分を吐き出したい」って人もいると思うんです。私みたいに。
だから暗い作品でも面白かったら褒めたいですね。
自分の経験上ね、それで救われる人もいるんじゃないかな。
物書きって不幸なエピソードも美味しく思える時があるんですよ。
- もっとシナリオが上達するためのゼミナールへ
もっと上達したい方は、原田講師も担当する本科ゼミナールで仲間と共に創作に励んでください。
過去にゼミナールに通われていた方は、続きの本数から再開することもできます。お気軽に事務局までお問合せください。ゼミナールについて