脚本家も理論を持っている
脚本家は脚本を書く上で『シャレード』という理論を持っています。
この『シャレード』を使いこなすと、
・無駄な説明を省く
・説明過多にならない
・意味のあるシーンだけを描く
ことができるようになります。
『シャレード』は、映画やドラマの脚本だけでなく、MVやショートフィルムやCMなどにも活用できるので、
脚本家以外の映像製作者の皆様にもご注目いただきたい理論の一つです。
それではシャレードについてご紹介しましょう。
シャレードとは?
シャレードとは、間接表現の意。
辞書で調べると「ジェスチャーゲーム」の意味と出ますが、
脚本については<映像に映る“何か“を象徴として示すことで、言わんとする意味を伝達すること>です。
簡単に言えば、言葉でなく映像で語らせるということです。
この理論を使えるようになると、説明臭くなく観客や視聴者へその意味を伝達することができます。
ではこのシャレードで何が描けるか、さらに詳しく紐解いてみましょう。
場所のシャレード
よくドラマや映画の冒頭で、街全体を映し出すシーンを見たことがあると思います。
これは、これからこのドラマで描こうとする場所のシャレードです。
沖田修一監督作「横道世之介」(2013・日活)では場所のシャレードが巧みに使われています。
この作品はバブル期を生きる大学生が主人公。冒頭ではセリフやナレーションで説明せず、主人公横道世之介が上京する過程の中で、当時の新宿の駅やアイドル、西武新宿線の風景や下宿する部屋の映像…と、主人公が生きる場所を映像だけで表現し、情感豊かに観客に伝達しています。
上記の映画の例のような街だけでなく「お客が入らないラーメン屋」という規模でもこのシャレードは活用できます。店主に「全然客が入らなくてね」とセリフで説明させなくても、【店主が新聞を広げている】、【店内に洗濯物が干してある】、【子どもが座敷で宿題をしている】等、映像でその意味を伝達することができます。
状況のシャレード
状況もシャレードで伝達できます。
例えばとある夫婦がケンカをしているという状況を、何を通して描いていくか。
「妻とケンカ中でね・・・」と夫のセリフで説明してもいいのですが、
ガラスがひび割れた目覚まし時計、朝もそのままになった夕食などを映すだけで説明臭くなくその状況を表現できるかもしれません。名匠ビリー・ワイルダーの名作映画「お熱いのがお好き」(1959・ユナイテッドアーティスツ)でも、冒頭に「禁酒法の状況下で」という説明は一切せず、お棺に入った酒瓶を巡ってのカーチェイスのシーンでその状況を描いていきます。
人物についてのシャレード
人物のキャラクターを引き出すためのシャレードもあります。
「君は、几帳面すぎる性格だな」と誰かに言わせてもいいですが、
その人物が、綺麗に畳まれた真っ白のハンカチを持っていたら?
本棚の漫画本が順番に並んでいたら?
その映像を通すだけでその人物のキャラクターを描くことができます。
また、シャレードは人間関係を描く上でも効果的です。
例えば喫茶店にいる若い男女。女性が男性のコーヒーに黙って砂糖を2杯入れたら、それだけで深い仲であることがわかります。それが「砂糖は2杯だっけ?」と聞いたらそこそこ、「砂糖いれましょうか?」と言ったらまだ距離感がある人間関係が表現できるのです。
この理論を意識すると…
このシャレードを意識することで、ドラマに必要な要素を言葉(ナレーションやタイトル)やセリフで説明するのか、『シャレード』で映像を通して表現するのか等、意図的に、かつバリエーション豊かに描きたいシーンを描くことができます。
また、「これ何で映す必要があるんだっけ?」と他のスタッフに聞かれた時も「ただそう撮りたいから」「オマージュだから」と感覚的な説明にならず、その意味・必要性を的確に説明することができます。さらには、もっといい表現にするために、意味はそのままに違うシャレードで表現できないか、差し替えを検討することだってできるようになるのです。
この『シャレード』は、脚本を書きたい方はもちろんのこと、映像製作の現場でも助けとなる脚本理論の一つです。
※WEB動画やPR動画でも、シャレードは効果を発揮します。どうやって使えばいいの?という方は、シナリオ教室シリーズ「いきなり効果があがるPR動画の作り方」(言視社)をご覧ください。
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