「ちはやふる」末次由紀(講談社)
注目ポイントは題材
自分に自信のない少女・千早が、転校生の新、いじめっ子・太一とともに競技カルタの世界にのめりこんでいく。かるたで結ばれた三人の、友情と愛の絆の物語。
シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。
マンガにはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えはマンガにある!シナリオ・センターにてマンガ原作講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は、マンガ『ちはやふる』から学ぶ、面白い題材の探し方。「脚本コンクールに出そう!でも何を書こう…」とお悩みのアナタ。これが題材探しの突破口になるはず!
注目ポイントは題材
自分に自信のない少女・千早が、転校生の新、いじめっ子・太一とともに競技カルタの世界にのめりこんでいく。かるたで結ばれた三人の、友情と愛の絆の物語。
新人がデビューするチャンスのひとつに「公募コンクールで賞をとる」というのがある。
テレビ局主催の公募なら、大賞をとれば映像化されるし、賞金だってガバッともらえる。そのうち「プロット書いてみない?」なんてこともあったりして、夢はふくらむばかり。
…というわけでぜひ挑戦していただきたいのであるが、さて「何を書こう」という最初の所でつまづいちゃう人、案外多い。
ていうか、昔の私がそうだった。体力気力は充分なのに何を書いたらいいかわからん。
コピーライターをしていたから「この美容液を売れ」などと「何を書くか」を指定されなきゃ書けないんだわ、などと自分につまらん言い訳したりして。
「社会に訴えたいメッセージはないの?」と人に言われてさらにブルー。そんなのがあったら苦労しないっつーの、と逆ギレ。
あげくの果ては「社会に貢献したくないダメ人間なんです」と暴れたり。…つくづくダメ人間であった。ふう、懺悔終了。
というわけで。書きたいけど何を書いたらいいかわからない時、「テーマ」や「これまでにないような面白いキャラ」をひねり出すのは後回しにして、まずは題材を探してみるってのはどうでしょう。
雑誌、テレビ、ネット…と情報源はたくさんあるはず。
その中から「お、面白そう」という題材を見つける。コツは、自分が興味を持てるもの。そして、まだあまり人に知られていないもの。
たとえば競技カルタとか。
※You Tube
東宝MOVIEチャンネル「ちはやふる -上の句・下の句-」予告より
「ちはやふる」の題材は小倉百人一首を使った競技カルタである。
記憶力はもちろん、集中力、聴力、体力、そしてヤマを張り相手を出し抜く知力も要求される、まさに文化系格闘技である。
しかも先行作品は(私の知る限り)少年マンガで一つあるだけという、天然記念物級のレア題材である。
こんな新鮮な題材を見つけたら、もう勝ったも同然。あとはこれを少年少女の成長物語にあてはめればOK。
思ったことをすぐ口にする癖があり自分に自信がないという千早のキャラといい、共に戦う仲間がイケメン二人の「ドリカム状態」といい、少女マンガの王道路線まっしぐらなのだが、これは題材が新鮮でレアだからできること。
すでにヒット作が多く作られている野球やバンドが題材だったら、「もうひとつアイデアが足りないよね」と言われてしまうはずだ。
みなさんも日々アンテナをたてまくって魅力的な題材を発見してください。
ところで先日、ある取材で某日吉の有名大学の競技カルタ部にお邪魔した。「ちはやふる」を地で行く美少女美青年たちの真剣勝負はキラキラとまぶしかった。う、美しい。
感化されやすい私がさっそく地元の競技カルタ同好会を探したのは言うまでもない。
出典:仲村みなみ著『マンガから盗めっ!』(月刊シナリオ教室2009年4月号)より
※【要ブックマーク】漫画やアニメには創作のヒントがいっぱい!
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