ト書と箱書きは絶対必要
「ト書ってセリフとセリフのつなぎだと思ってません?」
「構成表(=箱書き)は歯抜けでもいいので必ず作ってくださいね」
これは、シナリオ・センター出身の映画監督・林海象監督のコメントです。
「え?そうなの?」って思いませんでしたか?
そこで今回は、ト書と箱書きがなぜ重要なのか、についてを、「The ミソ帳倶楽部 特別企画 達人の根っこ~林海象映画大学~」より解説いたします。
ト書が雄弁な方がいい
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〇林監督:ト書は、セリフと同等の言葉。例えば、悲しいシーン。セリフで喋らなくても、表情を見れば悲しんでいることが分かりますよね。セリフが無くてもト書で表現ができるんですよ。
ト書はただ動作を書いているわけじゃない。映像を書いているんですよ。
ト書ってセリフとセリフのつなぎだと思ってません?
なんでもセリフで書いちゃってません?
でも、セリフだって難しいんですよ。日常会話をよく聞いてみて下さい。論理的じゃないし、もう滅茶苦茶。日常会話ならこれで成り立つけど、ドラマのセリフとなると整合した会話が必要になる。
で、視聴者に分からせようとするから説明セリフになっちゃう。説明セリフなんて日常会話では喋らないから不自然に映る。
だから、セリフは雄弁にならない方がいい。ト書が雄弁な方がいい。ト書が雄弁なら、セリフは短くて済むし、説明セリフにもならないし、映像を意識したシナリオが書けるようになります。
シナリオは文字を見せるものではなく、映像にするための設計図なんですから。
「構成表=箱書き」は必ず作る
〇林監督:構成表(=箱書き)は歯抜けでもいいので必ず作ってくださいね。シナリオが設計図なら箱書きは、道を見誤らないための客観的な地図。
でも、構成にとらわれて客観的に書くと、ただのストーリー(=筋)になっちゃう。これだと「やっぱりか」っていう内容になる。
シナリオは、全体の構成を忘れてしまうくらい主観(=感性)で書いてください。シーンの映像をイメージしながらね。パソコンで文字だけ見ていると辛いでしょ?目を瞑ったまま進んでるような感じ。ビジュアルのイメージをもっていると助けられます。
ただ、主観だけで突き進むと、構成を忘れちゃう。だから、構成表がいるんです。構成表は地図ですからね、客観的な考え方に切り替えることができる。
20枚シナリオでも長編でも、シナリオを書くときは、この主観と客観の切り替えをしないといけないんですよ。主観的な考えと客観的な考えの両方が必要なんです。
講演以外にも活弁や移動映画館ハやシネマでの上映も
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当日は、映画の歴史や楽しさを皆さんにもっと感じていただくために、講演以外にも企画が盛りだくさん!
1つは、活動弁士(無声映画の弁士)の坂本頼光さんによる上映パフォーマンス。映画は『國士無双』(日本・1932年)、『ジャックと豆の木』(アメリカ・1902年)、『昆虫カメラマンの逆襲』(ロシア・1912年)の3本。
こういった体験はなかなかできませんよね。坂本さんの見事なパフォーマンスに参加された皆さんは大盛り上がり!
もう1つは、林監督の作品を色々なカタチで上映。3階ホールでは『GOOD YEAR』(2014)を、そして、1階では、スクリーンと音響設備を車に乗せて全国を回っている移動映画館「ハヤシネマ」で『流れよ我が涙と探偵は言った』を上映。
このハヤシネマ、大人だと4人ぐらい入れます。音響もバッチリ。昼間は熱いので扇風機で温度を調節。
外観は林監督のお知り合いの美術さんに作って頂いたんだとか。この可愛らしいハヤシネマが到着すると、通りすがりの外国人観光客など色々な方が足をとめ、大注目でした。
林監督、ありがとうございました!