『響 小説家になる方法』柳本光晴(小学館)
注目ポイントはキャラクター
純文学の低迷を嘆く編集者・花井はある日一人の天才作家の卵を発見する。無垢すぎる感性と自我を持つ「変人天才女子高生作家」の誕生とそれに翻弄される人々の物語。
シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。
マンガにはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えはマンガにある!シナリオ・センターにてマンガ原作講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回は、純文学の作家を題材にしたマンガ『響 小説家になる方法』から学ぶ、キャラクター。読者が共感し、「魅力的だな」と感じる主人公のキャラクターはどう作ればいいか。ぜひ参考にしてください。
注目ポイントはキャラクター
純文学の低迷を嘆く編集者・花井はある日一人の天才作家の卵を発見する。無垢すぎる感性と自我を持つ「変人天才女子高生作家」の誕生とそれに翻弄される人々の物語。
マンガ雑誌は売れないらしい。
ずっしり分厚い一冊の中から「自分がまだ知らない」作品を発見したり、次の発売日を指折り数えて待つのも楽しいと思うんだが、単行本で「好きな作品だけまとめて読みたい」って人が増えたのかしら。
うーむ。そんなこんなで出版業界は不況だが、まだマンガやエンタメ系小説ライトノベルなどは良いほうで、深刻なのは純文学といわれるジャンル。
聞くところによると純文学系の月刊雑誌で一号あたりの売り上げ部数が数千部というのは珍しくないらしい。
その多くは大手出版社から出ているので即休刊とはならないだろうけど内情はかなり厳しいだろうなと思う。
でも私、不思議に思うのだ。だってカルチャーセンターの小説講座の多くは満員御礼だというし、著名な文学賞の応募数は大抵1000本を軽く越えている。
「書きたい人はたくさんいるのに、読みたい人は少ない。それが純文学」なのであるな……と思っていたら、タイミング良く純文学の作家を題材にしたマンガを発見。
ちなみにサブタイトルに「小説家になる方法」とあるが、いわゆるハウツー本ではないので、念のため。
■You Tube
BIG COMICS
マンガ大賞2017受賞!! 『響~小説家になる方法~』 PVより↓
鮎喰響(あくい・ひびき)は思ったことをストレートに口にし、幼なじみの涼太郎以外に心を開かない女子高生。
唯一の趣味は小説を読み書くこと。
響は「読んでほしい」「自分は間違っていないか確かめたい」ただそれだけの理由でコンクールに応募する。
募集要項にも気付かず連絡先すら記載しなかったため、作品は読まれもせずに失格となる……はずだったが幸運にも若手編集者・花井の目に留まる。
この作家こそダイヤの原石。低迷する文学界に革命を起こせるかもしれない。そう確信した花井は「謎の新人作家」を発掘し育てることを決意する。
一方、花井の決意など知らない響は高校の文芸部に入部。空気を読まない無神経な言動で周囲を振り回しながら創作に打ち込んでいく……。
応募要項に気付かなかった、というのは百歩譲るとしても、本の並べ方が気に入らないからと部室の本棚を倒したり、「殺す」と脅してきた相手の目を潰そうとするのは、いくらなんでも狂犬なみにアブナイ。
でも作家を志す人間ならば多少なり内面に狂気をはらんでおり、感性に
は確信があり、それは他人と相容れるものではない。
だから何をしてもいいって事ではないけど、他人には傲慢としか映らない彼女の不器用な一途さはかなり魅力的である。
反発したりこっそり共感しながら読んでほしい。
出典:仲村みなみ著『マンガから盗めっ!』(月刊シナリオ教室2016年6月号)より
※【要ブックマーク】漫画やアニメには創作のヒントがいっぱい!
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