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原作を脚色するとき/脚本家とプロデューサーの視点

出身ライターの杉原憲明さん(左)とプロデューサーの辻村和也さん(右)
「Theミソ帳倶楽部 達人の根っこ~脚本家×プロデューサー」より

脚色をするとき大事なのは、原作からどう抽出するか、どこを省くか

原作を脚色したテレビドラマや映画は、多いですよね。
だから、脚本家のデビュー作が脚色という場合も多いにあり得ますよね。

例えば、「これを脚色してください」とオーダーされたら、どんなことに気を付ければいいと思いますか?

現在公開中の映画『望郷』の脚本を手掛けた出身ライター・杉原憲明さんは、「脚色をするとき大事なのは、原作からどう抽出するか、どこを省くか」と仰います。

そして、この抽出・省略を企画の段階で的確にできたからこそ、「完成イメージがハッキリ見えた!」と、映画『望郷』のプロデューサー・辻村和也さん(エイベックス通信放送)は仰います。

今回は、映画『望郷』の公開を記念して、脚本家の杉原さんとプロデューサーの辻村さんをお迎えして実施した「Theミソ帳倶楽部 達人の根っこ~脚本家×プロデューサー」より、おふたりの掛け合いをご紹介します。

このコメントの中には、原作を脚色するときの脚本家とプロデューサーの視点や大事にしていることが詰まっています。

何が求められているかを正しく理解して、できるだけ早く投げる

〇杉原さん:原作を脚色するときに気を付けていること、をお話ししますね。

小説や漫画などと、それを実写化した映画の情報量を比べると、映画の方が圧倒的に少ない。だから、どう抽出していくかが大事なんです。これは原作を脚色するときの難しさだと思います。

シナリオ・センターでも学んでいると思いますが、映画には「気持ちは映らない」ですよね。

でも小説や漫画には、登場人物の心情やバックボーンがさらりと書いてあったりする。そういう意味で情報量の違いがある。

だからこそ、「何を描きたいのか=何を描かなくていいのか」を明確にすることが大事だと、最近特に感じます。

辻村さんは、どういう脚本家と仕事がしたいですか?

〇辻村さん:えっ!難しいですね。ちょっと角度を変えて、「脚本家としてこんなことに気をつければいいんじゃないでしょうか」という点でお話しすると、期待値より1mmだけでよいので、期待より上がっていればいいと思うんですよ。

新入社員の時、先輩に「お前には何も期待してないから」と言われたことがあるんです。

これは、過剰に期待されていると思って、過剰に頑張ると、コケる、ということが多いから、敢えてこう言ってくれたと受け取りました。

頑張りすぎてはダメ。期待されていることより、ほんの少しだけ上をいけばいいんです。

〇杉原さん:ほんと、そうですよね。

昔デビューできなくて苦戦していたとき、「誰も読んだことのないシナリオを書くぞ!」と気合が入りすぎて自滅して書けなくなったことがあります。気合が入り過ぎると、書くスピードも遅くなるし、最終的に全然書けなくなる。

「いいものを!」と思うのはいいことだけど、意気込むよりは、何を求められているのかを理解して、すぐに「これ、どうですか?」と投げれるようにすることが大事だと思います。

だから今回、「湊かなえさんの連作短編集『望郷』の中に収録されている6編のうち2編を1つの作品にしてください」と企画の条件を聞いたとき、何が求められているかを正しく理解して、できるだけ早く、企画書を辻村さんに投げれるようにしました。

〇辻村さん:僕自身も脚本家のかたにオファーする時点で、どういう仕上がりになるか“見えてない”部分もあるんですよ。

勿論、企画を立てるときに完成のイメージは大まかに“見えている”けど、今回で言うなら「この2編をどう1つの作品にするか」ということはボンヤリしてたんです。

でも、杉原さんからプロットをもらったとき、「見えた!」って思った。「これならいけるぞ!」と。

〇杉原さん:脚本家としてデビューしたら、脚色する機会も多いかと思います。
だから、原作を実写化した作品を観るとき、原作も一度読んでみるといいと思います。映画化される過程で「この映画は、原作で描かれている何を省いていたのか?」を考えてみてください。脚色をするための勉強になると思いますよ。

■You Tube 映画『望郷』本予告  9月16日新宿武蔵野館ほか全国拡大上映より↓

プロデューサーとの意見がちがっていたら、話し合って意見を統一する

プロの現場では、脚色をするときにはどんなことに気をつけて、また、脚本家としてどんなことに気をつければいいのかが、おふたりのコメントから分かりましたよね。

でも、このお二人のように、ツーカーといかないこともあるかと思います。そんなときは、シナリオ・センター創設者・新井一のこの言葉を思い出してください。

【プロデューサーから注文されたときには、よく話し合ってみる必要があります。もし、シナリオを書くあなたとプロデューサーとの意見がちがっていたら、話し合って意見を統一しておく必要があります。これを統一しておかないと、シナリオが出来上がってからも、お互いに不満が残るものです。】
『シナリオの技術』(新井一・著)P213「IX脚色の技術 4脚色するための作業」より

面白い脚本をつくるために、取り組む姿勢としては妥協せずに、
心持ちとしては辻村さんが仰るように、1mm上にいく感じで取り組んでいきましょう!

※映画『望郷』公式サイトはこちらからご覧ください。 

おふたりのプロフィール

・杉原憲明(すぎはら・のりあき)
脚本家。2001年にシナリオ・センターに。映画では『貞子3D 2』(2013)、『ディア―ディア―』(2015)、テレビドラマでは『メガバンク 最終決戦』(2016)、『ママゴト』(2016)などの脚本を手掛けている。

・辻村和也(つじむら・かずや)
プロデューサー(エイベックス通信放送株式会社)。劇場用映画だけでなく、配信ドラマやバラエティなど色々なコンテンツやジャンルの企画・プロデュースを手掛けている。

次回のTheミソ帳倶楽部は「職業のひみつ~フリージャーナリスト編~」(10/30)

今年はシナリオ・センター47周年「47(シナ)リオの年」ですので、Theミソ帳倶楽部では、いつもよりも増して、色々なかたをお迎えしています。
ブログでご紹介したこと以外にも、当日の講演では貴重なお話が沢山お聞きできます。
次回のミソ帳倶楽部は「職業のひみつ~フリージャーナリスト編~」(10月30日に開催)。
ぜひご参加頂いて、実際はどんな職業なのか、どんなキャラクターなのか等々、直に感じとってください!
※「職業のひみつ~フリージャーナリスト編~」の詳細はこちらからご覧ください。

シナリオ・センターでは、ライター志望の皆さんの“引き出し=ミソ帳”を増やすために、ちょっと珍しい職業の方をゲストに、その職業ならではのひみつをコッソリ教えて頂く公開講座「Theミソ帳倶楽部 職業のひみつ」も実施しています。世の中には色々な職業がありますよね。もしかしたら、あなたの職業も他の人にとってみれば創作ネタの宝庫かもしれません「こんな仕事あります」「この職業は実はこんなことするんですよ!」という“ひみつ”をお話して頂ける際は是非こちらまでご連絡下さい!

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