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本打ちの後に脚本家がため息をついたら…その本打ちにはグリーンが足りない!

本打ちで脚本家が喜ぶディレクションのコツは、シナリオの基礎技術の中に…

脚本家のテンションがだだ下がる本打ちの時のセリフ

ここ最近、恋愛アプリ系の制作会社からご依頼いただき外部へのシナリオ研修にも繰り出し始めたシナリオ・センターの新井です。恋愛をまるでゲームのように楽しんで来たから、仕事が増えているわけではありません。

「え?制作会社でも研修するの??」って?しますよ。します。
元々シナリオ・センターの設立の目的の一つに、「日本のドラマ自体のレベルを上げるのだ~」というものがあります。そのために脚本家を養成してきたのです。でも、脚本家だけでドラマを作るわけでありません。プロデューサー、ディレクター(監督)、俳優、衣装、美術、音響、照明・・・などなど、様々な方々が関わってドラマが作られます。もちろん、視聴者も!

「だったら、ドラマの設計図と言われるシナリオが読めないきゃ話にならないよね。書けないとしても、読めないとね!」というのが、創設者新井一の考えです。
なので、恋愛アプリを制作するディレクターの方々に研修をするのも、至極当然なわけです。「書けないとしても、読めないとね!」っていう。

で、実際に脚本家のテンションがだだ下がる本打ちの時のセリフが、こちら。

第1位 「なんか、イマイチなんだよね」

第2位 「ここ、面白くならない?」

第3位 「あの映画の、あのシーンみたいなの入れられない?」

第4位 「ここのシーンは、こういう風にしようよ」

以前ブログでも書きましたが、なぜテンションが下がるのかというと「なぜ、そこ直した方がいいの?」という根拠がよくわからないからです。

「なぜならね」を明確に言えるのか

ご依頼頂いた制作会社の方は、「個人的な好みや経験に基づいたディレクションを脱したい」とおっしゃいます。
ならば「なぜならね」を言えるようになればいいわけです。個人的な好みや経験に拠らずに。
そうすれば、脚本家の納得感が上がります。直しの打合せ時間は減るし、直しの質も上がりいます。脚本家から、陰で愚痴られずに済みます。いや、相当、尊敬されます!もう、みんな幸せです。さよなら、個人的な好みや経験。

「え?いいか悪いかなんて、好みじゃないの?」と思っちゃった方、まぁ確かにそうなんです。単なる視聴者ならね。

でも、作り手は視聴者にあらず、ですから、より魅力的なドラマを作ろうと思った時には、個人的な好みや個人的な経験を基にしちゃダメなわけです。だって、個人が思うことが、他の人も思うかどうかなんてわからないですから。

じゃあ、何を基にすればいいのか・・・
(これ、大きな声では言えませんが、自作の直しにも使えます)

脚本を読む時に、好みや経験を持ち込まない方法

まずは、ドラマの基本的な構成です。
ドラマの構成には起承転結があります。そして起承転結には、それぞれ機能があります。まず、シナリオが起承転結の機能を果たしているかどうかをチェックします(受講生は、基礎講座でならってますからノート見直してくださいね)。機能ですから、個人の好みもへったくれもありません。
機能をはたしていないシナリオがあれば、そこが直しのポイントになるわけです。

次に、シーンの役割です。
シーンの役割?そう、役割。そのシーンで、一体何を伝えたいのか、です。
例えば、『ヒロインが彼氏の行動に不信感を抱く』とか『太郎と次郎が、お互いを認め少し距離が縮まる』とか、『この会社の特殊な状況を伝える』とか・・・

起承転結の起の機能は、天地人を伝えることなのに、ドラマの舞台となる地(場所)を伝える役割のシーンが足りない、もしくはわかりにくいなら、そこが直しのポイントになります。
起承転結の機能を、各シーンの役割が支えなければならないのですから。ここにも、好みや経験いりません。

エピソードはキャラクター軸でチェック

最後に、エピソードです。
起承転結の機能、シーンの役割を十分に果たすエピソードになっているのかどうかをみます。その時のポイントは、登場人物のキャラクターです。
このシーンの役割は『ヒロインが彼氏の行動に不信感を抱く』であれば、このヒロインはどんなことで不信感を抱くのか、不信感を抱いたらどんなリアクションをするのか・・・をキャラクターを軸にチェックします。
『太郎と次郎が、お互いを認め少し距離が縮まる』であれば、お互いに認め合うのはどんなことでか、距離が縮まった時、どんなリアクションをするのか・・・をキャラクターを軸にチェックします。

ここまできて初めて、好みや経験でいろいろな意見が出てきます。建設的な本打ちになるわけです。

 

ディレクションを車の運転で例えると…

本打ちを車で例えてみます。
起承転結の機能は、アクセルやブレーキ、ハンドルです。
アクセルは進むときに使う。
ブレーキは止まる時に使う。
ハンドルは方向を変えるときに使う。

シーンの役割は、
アクセルは、急ぎたいときには踏み込み。
ブレーキは、すぐ止まりたいなら、強く踏む。ゆっくり止まりたいなら、徐々に踏む。
ハンドルは、右に行きたいなら、左に行きたいなら・・・という感じ。好みもくそも、ないでしょう?

で、エピソード。ここで初めて、アクセルをどう踏むか、ブレーキをどう使うか、ハンドルをどっちに切るか、乗り手(書き手・作り手)のクリエイティブな判断が求められます。いっちばん面白い場所を目指せばいいわけです。

最悪なディレクションは、起承転結の機能もシーンの役割も押えないまま、エピソードの部分をいじりだした時です。「木を見て森を見ず」です。森を見ないから、グリーンが足りません。空気、淀みます。

本打ちのヒートアイランド現象や~ってやつです。

森はどこ?
森はそう、構成にあり。構成については、『シナリオの基礎技術』にあり。表紙は、グリーン!基礎があれば、応用なんてなんのそのでございますことよ。

なによりも、みんなが同じ方向向いて気持ちよ~くドラマ作りに専念できたらいいじゃないですか。それが、ひいては視聴者やユーザーのためになるわけですし。そのお手伝いをするのがシナリオ・センターなわけです。どうぞ、よろしく。シナリオ・センターの新井でした。

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