「製作費300万円ほどの“自主映画”が、堂々たる興行の土俵で勝利を得たことに驚いた」
(2018年7月14日文化通信/大高宏雄・特別編集委員)
こう評されるほど、映画『カメラを止めるな!』はこれまで前例がないような興行展開になっています。
映画館「新宿K’s cinema」では3週間連続【満席】。
映画館「池袋シネマ・ロサ」でも連日すぐに席が埋まってしまうんだとか。
そんな大ヒット中の映画『カメラを止めるな!』。
脚本・編集も手掛けた上田慎一郎監督は、シナリオ・センター出身生です。
そこで今回は上田監督に、『カメラを止めるな!』の脚本作りについてお聞きしました。
・「伏線ってよく分からない…」
・「メインの登場人物たちの変化や成長をうまく描けない…」
――とお悩みのかたには特に、上田監督のコメントはヒントの宝庫です。
『月刊シナリオ教室』(2018年9月号)でのインタビュー掲載に先駆けて、コメントをご紹介。
「伏線はお客さんの頭に残りすぎてもいけないし、残らなすぎてもいけない」
「人間ってそんなにすぐに急成長はできない。それは嘘くさい」
〇上田監督:本作は緻密に書いた脚本とリハーサルを重ねてつくったフィクションですが、現場で起きた”予期せぬこと”を積極的に取り入れた”ドキュメンタリー”でもあります。虚実がないまぜになったそのライブ感も感じてもらえればと思います。
――伏線について、特に意識していることはありますか?
〇上田監督:伏線については、まずゴール(回収)を決めて、そのゴールを達成するには、「どのような伏線が、幾つ、それぞれどの程度の度合いで必要か?」を考えて書いていると思います。
お客さんの頭に残りすぎてもいけないし、残らなすぎてもいけない。その塩梅を考えながら書いています。ちなみに、伏線を張って回収することより、張った伏線の痕跡を消し、物語に自然に溶け込ませる方が頭を使います。
――メインの登場人物たちのキャラクターや描き方はどのように決めていったのですか?
〇上田監督:今回の映画は俳優たちとのワークショップを経て制作した映画でそれぞれの俳優に当書きで書いています。
俳優の元々持っている個性を活かして、あざとい演技にならないよう、自然にセリフを吐けるよう、行動できるように書きました。96分という時間の中で10人以上のメインキャラを描き分けなければいけないので、俳優を選抜する時点で、キャラが立っている人を選抜しました。
メインの登場人物達はくせ者揃いです。
それぞれ”問題”を抱えています。(その”問題”が個性にもなっているのですが)。
その、それぞれが抱える”問題”がこの物語を通して”ほんの少しだけ”解消し、”ほんの少しだけ”成長することは意識していたのかなと思います。
人間ってそんなにすぐに急成長はできない。それは嘘くさい。だから”ほんの少しだけ”の成長。それを描けたらとは思いながら書いていました。
※You Tube
映画『カメラを止めるな !』予告編
「まずは結果を考えず、最高!と筆が止まらなくなるものを見つけて、夢中になるのがオススメ!」
――上映中は観客の笑い声に始終包まれていました。上田監督にとって「コメディ」とは?
〇上田監督: 真剣な人たちを、一歩引いた視点で見つめることです。けして”笑わせよう”とはせず、”笑っちゃう”ようにつくろうと心がけていると思います。
――上田監督のように「自分の作品を作りたい!」というシナリオ・センターの“後輩”にぜひメッセージを
〇上田監督:自分は中学生の頃から自主映画を撮っていました。その時は何も考えずにとにかく夢中で書きたい本を書き、撮りたいものを撮っていました。
大人になり、自分はこの長編映画にたどり着くまで、しばらくの間、右往左往していました。
「どんな話を書けば偉い人に褒めてもらえるだろう?映画祭に入選するだろう?」
そんな風にいらぬ下心に惑わされていた時もありました。
「どんな展開にすればお客さんは喜んでくれるだろうか?」
そんな風にお客さんのことを考えているフリをして結局自分のことを考えていた時もありました。
「自分らしい本を書こう」。
そんな風に、最もらしいことを言い聞かせていた時もありました。”自分らしさ”なんて考え始めた時点で自分らしさから離れていくとは知らずに…。
『カメラを止めるな!』は、もう一度中学生に戻ってつくった映画です。
結果を考えず、とにかく夢中で、自分の「最高!」を信じて、心の赴くままに書き、そして撮りました。
まずは結果を考えず、「最高!」と筆が止まらなくなるものを見つけて、夢中になるのがオススメです!
筆を止めるな!
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