聴き逃せない見逃せない
シナリオ・センター代表の小林です。「音ナイト2」が19:00から始まります。
音の世界を集中して楽しんでいただけるよう仄暗いランタンライトの中でラジオドラマを聴いていただきます。 ちょっとムーディないつもと違った雰囲気をお楽しみください。
ゲストは、テレビドラマにラジオドラマに舞台にと幅広く大活躍されている葉月けめこさんです。
九州出身の葉月さんは、11月には博多でテレビドラマも書かれたシーナ&ロケッツの舞台も上演されます。八面六臂の活躍をされている葉月さんにラジオドラマのノウハウもお聴きします。
作家集団の大前・平岩クラスの朗読劇公演「再び」が10月6・7・8日の3日間、昼13:00・夜17:00北池袋・新生館シアターで行われます。
今回で6回目。作家集団でコンペをして選ばれたシナリオを声優の方に朗読してもらうというものです。
上演作品は
「咲きませ、アントワネットさま」作 ムロイ実香
「あの香りに魅せられて」作 高津直子
「イタコーズ」作 山下真弓
「同窓会まで、あと30分」作 辻みゆき
「ハッピーチョイス」作 植木百合子
問合せは03-5308-0729 info@mikipro.co.jp
小説に描かれたもの
シナリオ・センターが名古屋教室を立ちあげてから46年も経ったようです。
その当時からの生徒さんで、シナリオ・センター旗揚げにもご尽力くださった株主でもある山田直堯さん、皆さんの大先輩が小説を上梓されました。
「袋小路の人びと」(風媒社刊)
山田さんはコピーライターでいらっしゃったので文章力には定評があり、小説でも中央公論新人賞の最終候補にもなられたことがある実力のある方です。
今回は、今の社会にとてもタイムリーなお話を書かれました。
脚本家の野崎祥司は脱税嫌疑で国税庁から調査を受けます。真面目な個人事業主の野崎にとっては寝耳に水の出来事。
あまりの不当な嫌疑に、間違いだと抗弁すればするほど罪を加算すると脅され、仕事の取引先にまで調査が入り、仕事仲間に裏切られ、青色申告の権利まで取り上げられ、四面楚歌となります。
それでも、野崎は不当な嫌疑に、支援団体の協力を得て、果敢に裁判を起すのですが、経理を担当していた妻は精神を病み、野崎は心の逃げ場を若いモデルの愛に求め、家庭も崩壊し、仕事も家もなくしてしまいます。
野崎が戦うのは、脱税嫌疑そのものだけではなく、人間のとしての尊厳、人権を守る戦いなのでした。
そして、あまりの不当な税務署のやり口にさすがに裁判では勝訴するのですが・・・。
罪をねつ造するために納税者の人権を無視し、あの手この手で陥れる税務署員。ノルマや出世のために不正を犯してでも業績を上げようとする税務職員たち。
納税者の人権を無視し、とことんまで追い詰めようとする国の力・・・抗うすべもない一人の国民が国へ戦いを挑む、社会派小説です。
嘘に塗り込めた答弁で国税庁長官に就ける国税庁、税務署ならではのあり方のような気がします。
現実を見るにつけ、フィクションであるこの小説が、真実を描いているように思わせられるというのはどういうことなのでしょうか。
小説の主人公が勝訴を勝ち取れたのは、1人の誠実な税務署員の証言でした。
もちろん、現実でもすべての税務署員が悪い人ではありません。
一握りの悪がすべてだと思わされてしまう今の社会、ろくでもない上からの指示に動かなければならない組織のあり方こそが問題なのだと思います。
国家による犯罪を描いた山田さんの渾身の作品です。