キャラが立った個性的な作品
フジテレビ編成制作局ドラマ制作センターの草ヶ谷と申します。今日は普段お話できないような本音の話をしようと思います。
ただ、今からお話しすることは僕の個人的な考えだったりするので、それがすべてではないという前提で聴いていただければと思います。
昨年の年末に審査結果が発表されましたが、『隣のレジの梅木さん』で大賞を受賞されたのは倉光泰子さんという31歳の女性、主婦です。
彼女は大学院で脚本の勉強をしていたそうですが、こういったコンクールに応募するのは初めてだということです。『隣のレジの梅木さん』にはすごく奇抜なキャラクターが3人登場します。キャラクターの立った作品だったということですね。
佳作には3作選ばれました。その中の1作、『ハード・ラック』を書いた坂本絵美さんは、こちらのシナリオ・センターのご出身ですね。作品の内容は単純に言えばラブストーリーなんですが、先の読めない展開で、キャラクターが最後までブレず、ぶっ飛ばし感がありました。
佳作の『家族はじめました』という作品は、受賞4作の中では、非常に綺麗にまとまっているストーリー構成とセリフでした。
通常のヤングシナリオ大賞では、この作品が大賞を取っていたかなと思います。テーマ性がハッキリしているし、物語の起承転結がわかりやすく描かれている。僕はこれが大賞に選ばれるのではないかと思っておりました。
が、よくよく考えたら、今はこういったキレイでまとまりのあるストーリー構成は求められていないんです。ということで、佳作に落ち着いた。ただ彼は、「ドラマの1話を書いてくれ」って言ったらすぐにでも書ける人だと思います。即戦力という意味でも、彼は選ばれました。
最後の1作、『遭難ラスト屋上デパート』という作品ですが、これは「ヤングシナリオ大賞」には珍しく、ワンシチュエーションものです。デパートの屋上で物語が展開される。
うまいのが、これもキャラクターなんですね。出てくる登場人物ひとりひとりが非常に立っているので、物語がキャラクターベースで転がっていく。だから読みやすいし、映像が頭に浮かぶ作品でした。というわけで、こういった個性豊かな4作品を選ばせていただきました。
大賞作品は毎年映像化されています。今回の『隣のレジの梅木さん』は昨年(2014年)の12月21日に放送されました。実際に脚本からキャスティングが行われ、アジアンの馬場園さんが主演に選ばせていただきました。
映像化した時にシナリオの世界観を維持するのが、すごく大変な作品だったと思います。出来上がったものを見ていただくと、いい意味でも悪い意味でも「よくわかんないなあ」という感じかもしれません。
これをもしも連続ドラマでやる場合は、いろんなところを削って、お客さんが親しみやすいものに作り変えていくことが必要ではないかと思います。
これはやっぱり「ヤングシナリオ大賞」だからこそ実現できた映像化なのかなと思います。つまり作者の倉光泰子さんがすぐに連ドラを書けるかというと、またちょっと違うんですね。
今回は大賞があって、ドラマ化が成立したというところがある。たぶん彼女が今後こういった作品をゴールデンタイムで流せるかというと、そこはちょっと違う作業が必要となってくるでしょう。彼女とは今は連ドラの企画などを一緒に考えています。