脚本家になるには 賞をとる前もとった後も出し続けること
脚本家になるには――
・なかなか賞がとれなくても、脚本コンクールに脚本を出し続けること。
・そして、賞をとった後は、「しつこい」と思われても、企画書や脚本を出し続けること。
――この“出し続けること”がキーワードではないか、と感じた第43回創作テレビドラマ大賞贈賞式(主催:日本放送作家協会・NHK/後援:NHKエンタープライズ・放送文化基金)。
今回は、そう感じるキッカケとなった、第43回創作テレビドラマ大賞贈賞式での“お三方”のコメントを主にご紹介いたします。
お三方とは、
・『ロボ恋』で佳作を受賞された大阪校作家集団の松本和子さん
審査に携わり、受賞者に向けてお祝いのスピーチを行った、
・脚本家 いとう斗士八さん
・日本放送作家協会理事 香取俊介さん
――です。
「脚本コンクールに出しても全然賞がとれないから、もう出すのやめようかな…」と諦めモードになっているかたは、コチラの記事でぜひ気分を立て直して、これからも出し続けてください!
なお当日は、今年3月に贈賞式のみ行った「第46回創作ラジオドラマ大賞」のお祝いも実施。研修科修了生の門前日和さんが『母ちゃんと王様』で佳作を受賞されていますので、門前さんのコメントも併せてご紹介いたします。
第43回創作テレビドラマ大賞 佳作受賞『ロボ恋』
松本和子さん(大阪校作家集団):「ずっと目標にしていた賞だった」
〇松本さん:子どもの頃からドラマが好きで、脚本家になりたいと思ってシナリオ・センター大阪校に通い始め、それから12年が経ちました。
ずっと目標にしていた賞だったので、ここに立てていることをとても嬉しく思っています。支えてくれている友人たちもこの賞を喜んでくれて、恩返しできたかなと思っています。
今回、『ロボ恋』を書いたのは、遠隔操作できるロボット「OriHime」のドキュメンタリーを見たことがキッカケでした。この番組の中で、病床にありながらもロボットを通じて海外旅行をされていて、すごく嬉しそうに見えまして、それに心を打たれて書きました。
また、私は阪神淡路大震災を経験しています。そのとき、普通に学校に行って、友だちと会話して笑ったりすることがすごく大切な日常なんだなと痛感しました。だから、いつものありふれた日常の大切さみたいなことをテーマにして書きたい、という想いもありました。
まだまだ全然、伝えるには書き足りていないことも多かったと思います。
今後も一層精進して、沢山のかたに観てもらえるドラマが書けるようになりたいな、と思っております。
※松本和子さんのインタビュー詳細は『月刊シナリオ教室』(2019年2月号/1月末発行予定)に掲載予定です。併せてご覧ください。
受賞者に向けてお祝いの言葉:脚本家 いとう斗士八さん
「迷惑をかけることがヤル気をみせること」
〇いとうさん:賞には縁がなかったのですが、どうしてデビューできたのかといったら、最初にプロットを読んでくださったプロデューサーのかたとの縁があったから。
最初に出したプロットは全然ダメだったんですけど、そのときに「1回ダメだったから、もうダメなんだと諦めているようじゃプロにはなれない。たとえ“ダメ”を出されても、相手が嫌がっても、プロットを出してくればヤル気がみえる」と言われました。その一晩でプロット3本、翌日すぐに持って行ったのがデビュー作になりました。
いま若い人たちに教えているんですけど、その人たちにも言っています。「私なんかのホンを読んでもらうのは迷惑なんじゃないかな」とか、「時間がないときにお手間をとらせたくないな」とか思うことは一切ありません。
迷惑かけないとプロにはなれません。迷惑をかけることがヤル気をみせることなので、遠慮せずに脚本家やプロデューサーやディレクターに、どんどんプロットなり脚本を持って行ってください。
それでもちゃんと付き合ってくれる脚本家やプロデューサーやディレクターは絶対います。
ぜひ頑張って、これからのご活躍を期待しております。
受賞者に向けてお祝いの言葉:日本放送作家協会理事 香取俊介さん
「量は質を変える」
〇香取さん:ある制作会社がディレクターやプロデューサーを募集した。
面接のときに、「企画をもってきてください」と言ったら、ある人が1週間後に100編もってきた。
読んだけれど1つとして面白いものがない。
全部ボツになったけど、採用された人はその人だった、と。
その後、この人はかなりいい作品を作っているそうです。
この話から結局、何が言いたいのかというと、採用されたこの人は、今まで考えていた企画もあったとは思いますが、だとしても1週間で100編、いくら内容があまりよくないといっても、100編というのは、量は質を変えてくるんですよ。常識破りといいますか、そういう人は発想がちょっと普通の人とは違うんですよね。
こういうことを新人に対して、特に受賞者に対して、求めているのかな、と思いまして。
ですから皆さん、「しつこい」と思われても、いろいろ企画を持っていってください。
第43回創作テレビドラマ大賞・審査経過
第43回創作テレビドラマ大賞では、応募総数810本の中からファイナルが8本選ばれ、そこから大賞1本、佳作2本が決定しました。
今回の審査経過について、日本放送作家協会は、
【応募作品は毎年何かトレンドがあるのですが、今年のトレンドは、世相を反映したかのような、高齢者ものや介護もの、という感じでした。その中でも特に個性と筆力の光る作品が選ばれたように思います】と報告。
また、NHKエンタープライズ制作本部 ドラマ番組 部長の中村高志さんは、
【最終審査に残った作品は、老いていくことをテーマにしたものと、若い青春の苛立ちを描いているもの、その両極に分かれているものが多かったのですが、どの作品もチカラがあって、読んでいて楽しくて、非常に粒ぞろいの作品だったと思います。大賞を受賞された鳴尾美希子さんの『ゴールド!』は、シナリオだけ読んでいてもグッとくるところがありました】と述べました。
※大賞の「ゴールド!」はドラマ化され2020年春にNHK総合にて放送予定です。
第46回創作ラジオドラマ大賞・審査経過と
佳作受賞 門前日和さんコメント
第46回創作ラジオドラマ大賞は、応募総数256本の中からファイナルが9本選ばれ、そこから大賞1本、佳作2本が決定しました。
日本放送作家協会は、
【受賞された全作品、制作され放送されておりまして、中でも大賞をとりました『灰色のカンバス』(出川真弘さん作)は平成30年度文化庁芸術祭に出品しています。今年は創作テレビドラマ大賞・創作ラジオドラマ大賞ともに、質の高い審査になりまして、やりがいがある審査だなというふうに審査委員一同、また私ども日本放送作家協会の担当一同思っております】と報告。
また、受賞者3人が登壇し、受賞スピーチを行いました。
佳作を受賞された門前日和さんは、今年の6月に放送された『母ちゃんと王様』の制作エピソードとともに、受賞の喜びを以下のように語りました。
〇門前さん:演出を手掛けてくださったNHKの吉田努さんのおかげで放送していただきまして、また、本読みや収録の現場にも顔を出させていただき、とても楽しい時間を過ごすことができました。本当に感謝しています。私自身の力不足もいろいろあったと思いますが、これからも精進して、吉田さんや役者・スタッフの皆さんといつかもう一度一緒にやらせていただけるのが夢です。
※『母ちゃんと王様』のあらすじはこちらのNHKオーディオドラマホームページで
※なお、第47回創作ラジオドラマ大賞 応募締切2019年1月10日(当日消印有効)です。詳しくはこちらの一般社団法人 日本放送作家協会の公式サイトでご確認ください
※前回第42回創作テレビドラマ大賞の模様は、こちらのブログ「第42回創作テレビドラマ大賞にみる/受賞後の心構え」をご覧ください
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