日本人は管理・コミュニケーション力が低い…らしい
子どもも大人も、誰にとっても、コミュニケーション力はとても大切です。
小学校や中学校でも、『伝える力』の重要性は高まっています。社会に出ても、その重要性は変わりません。もしかしたら、子どものころよりも求められるかもしれません。お客様や上司や部下など、利害関係が複雑になりますし…
だから大人は、「ちゃんとわかるように言いなさい!」とか、子どもに言うのかもしれませんね。
そうしないと、自分と同じように将来困るのが、目に見えているから。
OECD, “Skills Outlook 2017”のデータを用いて三菱総合研究所が作成したデータによると、
『OECDは、グローバルなバリューチェーンの下で就業者が価値創出していくには、読解力、数的思考力、技術的解決力のほか、管理・コミュニケーション力、そして学び続ける力が重要だとしている※3。
日本の就業者は、読解力、数的思考力、技術的解決力、組織適応力に優れるが、管理・コミュニケーション力やSTEM※4力はOECDによる調査対象の28カ国中で平均以下であり、学び続ける力は最低レベルである(図表8-1)』
コミュニケーション力がなければ、どうにもならない世界、すぐそこまで来ているようです。
では、すでにコミュニケーション力に問題ありの大人たちが、子どものコミュニケーション力を育てるには、どうしたらいいのでしょうか?
コミュニケーションに必要な2つの力
コミュニケーションと一言で言っても、定義つけが難しい言葉です。三省堂 大辞林によると
「人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える身振り・表情・声などの手段によって行う」
「想いを伝える創造力」とは
「想いを伝える創造力」とは、何でしょうか。
端的に言うと、自分の気持ちや考えなど、伝えたいことを、どうすれば相手に伝わるか常に考え、表現できるようになることではないかと思います。
ここで大人になると陥りがちな間違いが、伝わるように伝える=論理的に伝えるだという思い込みです。
もちろん、論理性は理解を助ける上では必要ですが、論理は頭で理解するにすぎません。理解して、「なるほど」や「なら、やってみよう!」「楽しそうだな」と思ってもらうには、感情にも訴えなければなりません。
だって、「なるほど」と思っても、「なんか、こいつに言われると嫌」とか「わかってるけど、やりたくない」というのは、往々にしてあります。お子さんに「宿題やったの?」といって、「うるさいなぁ、今やるよ!」と言われてしまったら、はい、終了。ご自分のコミュニケーション力を疑ってみましょう。
相手の感情にも訴えられないと、コミュニケーション力があるとは言えないのです。なので、お子さんのコミュニケーション力を育てるには、論理的思考だけを磨いてもダメ、なわけです。
感情に訴え、論理的に伝える方法
感情に訴えつつ、論理的に伝える方法というのはあるのでしょうか。
実は、なかなかありません。大概の場合が、論理的に伝えるという方に、偏っています。右脳左脳でいえば、左脳でしょうか。
お子さんの習い事で、昨今はやりのプログラミング教育も、左脳教育です。論理的思考には向いているかもしれませんが、右脳部分にはあまり働きかけていないように思います。
では、右脳左脳の両方を鍛える方法は何かといえば、物語を書くことです。
なぜなら、映画やテレビドラマの物語を作るシナリオライター・脚本家は、多くの視聴者・観客に伝わるように創作するため、どうすれば伝わるかを、常に考え、表現しなければいけません。
一般的に、物語を作ることは、センスの世界と思われがちです。しかし、センスと同じくらい伝える技術が大切になります。そして、物語を伝える表現技術は、すでに体系化されています。作家は、伝える技術を使って、観客の頭はもとより、観客の心に届けます。
なので、物語作りを通して表現技術を学ぶことで、コミュニケーション力の一つである創造力を育てることができます。
>>どんな技術があるのか知りたい方は、詳しくは「シナリオの勉強方法。面白くする技術をガッツリ解説」
「他者を想う想像力」の育て方
相手に伝えるためには、当然、相手のことを考えなければなりません。
相手のことを考えるというのは、自分とは異なる、性格や生い立ち、抱えている事情、その時々の気持ちなどを想像し、相手の立場になることではないでしょうか。
実はこれが、一番難しい。子育ての本、ビジネス書の類を紐解いても、「相手のことを考えましょう」とは書いてありますが、どうやって考えるのか、という具体的な方法は全くと言っていいほど、書いてありません。おそらく、書けないのでしょう。
では、どうすれば、「他者を想う想像力」を育てられるかというと、これも物語作りにヒントがあります。
シナリオライター・脚本家は、物語に登場する人物の数だけ、性格や生い立ち、抱えている事情、その時々の気持ちなどを想像して、セリフやト書を書いていきます。想像力がないと、セリフ一つ書けません。
つまり、物語を書くということは、自ずと自分以外の人のことを考えるということなのです。
これをより体系化していくと、ビジネスや日常にも使える発想法として、整理することができます。
子どもも大人も、コミュニケーション力を磨く
OECD, “Skills Outlook 2017”にもあったように、私たちには、コミュニケーション力が欠かせません。ついでに、学び続ける力も弱いとか…
OECDが出した指標は、あくまで欧米の価値観になぞらえたものだとは思います。とはいえ、私たちの皮膚感覚として、相手に対する「思いやり」が欠けた言動は、身の回りでもニュースでも目にします。私たちが気持ちよく生きていくためには、自分の気持ちをや考えを、相手に伝わるように伝える力が欠かせません。
誰もが同じ考え、性格ではないからこそ、私たち日本人が踏み出すべきは、日本人の良さを生かして上でのコミュニケーション力を育てることではないでしょうか。
お子様のコミュニケーション力を上げたい方、ご自身のコミュニケーション力を上げたい方も、是非、物語作りに挑戦してくださいね。この文章のコミュ力やいかに…シナリオ・センターの新井でした。