太田ぐいやさんに聞く/創作の仕事とは
『月刊シナリオ教室 2019年5月号』(4月26日発行)の隔月連載企画「先輩のオ・シ・ゴ・ト」で、出身ライターの太田ぐいやさんにインタビューさせていただきました。
太田さんはテレビドラマやアニメの脚本だけでなく、漫画原作・作詞・小説・構成・司会・演出・俳優・編集・ディレクション・プロデュース等々、色々なお仕事をされています。
脚本家以外にも活躍されていることについてお聞きすると、
【エンタメ業界の“パラレルキャリア”(本業とは別の活動を平行して行うこと)ですからね。
脚本を書く以外にも色々できると、絶対プラスになりますよ。今後はこの業界以外の仕事もしたいなと思っています。そもそも脚本は人間を描くものなんだから、色々な人に関わっていないと書けないじゃないですか。「職業は『太田ぐいや』です」ってたまに言います。もはや、肩書きでは語れないと思って】
と太田さん。
このコメントを読んだだけでも刺激を受けませんか?
脚本家を“専業”とせずに、経験すべてを創作の糧にされている太田さんの言葉は、創作を仕事にしたいと考えているかたにとっては特に、参考になるのではないでしょうか。
前述した『月刊シナリオ教室 2019年5月号』では、最近特に「なりたい!」というかたが増えている“漫画原作”という仕事について、太田さんの考えをお聞きしています。
そして、こちらのブログでは、“エンタメ業界のパラレルキャリア”の太田さんはどんな風に仕事をしているのか、を中心にお聞きしています。併せてご覧ください。
「スケジュールはパターン化したくないので決まってないです」
〇太田さん:1日のスケジュールは決まってないです。仕事のやり方とかもそうですけど、パターン化したくない。パターンがある人生なんてないから、っていう。
型にハメてしまった時点で、クリエイターとしての成長が止まると思うんですよね。
早く起きて書くときもあれば、遅い時間に書くときもあります。
集中力に関しても、どんな時間でも場所でも、自分の裁量で、出し入れできます。
リラックスの仕方も決まってませんね。その時々で変わります。リラックスしようと思えばいつでもどんな方法でもできますね。
今までで1番ヤバかったのは、いきなり「30分で虎に関するクイズを20問作ってください」みたいな電話がきて。虎に関するクイズってそもそもなんだよ、みたいな(笑)。
でも、やりました。そういう瞬発力がいる仕事も色々やってきたので、書くときは、ギアをいきなりトップに入れる感じで、バッと書けます。
あと、パラレルキャリアが休憩っぽくなってるとも言えますね。
ラジオの台本を書いた後に、漫画原作を書いて、その後に弁護士の取材の原稿を起こして、みたいな。
ロザンの宇治原さんも「アメトーーク!」で言ってましたが、古文の勉強の休憩で数学をやって、数学の勉強の休憩で英語をやって、みたいな受験勉強法に似ています。
別の仕事をすることで脳が切り替わるというか、気分転換になっていますね。
「みんな、メモってやらないですよね」
〇太田さん:何にもしないダラダラ時間もめっちゃありますよ。
ただ、そのときも創作脳は常に動いてます。
思いついたらすぐメモをしますね。最近はケータイのスケジュールアプリをネタ帳代わりにしていますね。
24時間365日創作脳を動かし続けていることが日常化してしまいました。
原作を書いた漫画『もんこ~ろ』も、「匂い」というネタをずっとやりたくて、「漫画原作のために」とかじゃなくて、メモしていたネタの1つなんですよ。テレビも映画も漫画も小説も嗅覚が最も発信しづらいじゃないですか。ようやく4Dシアターでちょっと匂い出せるぐらいなので。
シナセンのコンクールでも、「戦争の匂いが嗅げるテレビドラマ」の脚本を書きましたね。臭いが再現できるテレビが開発されたという話です。戦争体験は臭いこそ最も強烈だろうから、それを再現したいという想いで。途中で落選してましたけど。
シナリオ・センターに入った2002年くらいからずっとネタ帳(ミソ帳)みたいなものは書いてますね。
始めはノートに書いていました。見返してみたら、当時のJKが使っていた言葉で「ソクバッキー=束縛するヤツ」って書いてあって。「面白い単語だな、セリフで使えるかも」と思って書いたんだと思います。
メモってやった方がいいと思うんですけど、みんな、やらないですよね。やれと言ってもやらない。
この前SNSで「何で同じ人に仕事が集中するんだ?」という問いへの回答が「その人はやるから。それ以外の人はやらない」みたいなアンサーで、すごく腑に落ちました。やる人がプロで、やらない人がアマですね。全てにおいて。
あと、この取材に来る電車の中でツイッター見てたら「ピカソは何万点もの駄作を残した。そこから傑作が産まれた」みたいなのが書いてあって。結局、膨大な駄作から産まれるのだなと。
結局、実現した企画は、膨大なメモ書きの1つから生まれていくと思うんですよね。
「何を書いても“ぐいや節”がどこかに出ちゃう」
〇太田さん:脚本家の野島伸司さんと宮藤官九郎さんが好きなんですよ。
シナリオ・センターにいたときは、この2人のテイストを意識しながら、シリアスなのは「野島さん8割 クドカン2割」、コメディなのは「野島さん3割、クドカン7割」みたいなバランス感覚で書いてました。
だからずっと、「自分はこの2人のコピーだな」っていうコンプレックスを抱えながらやっていたんですけど、それがいつの間にか“ぐいや節”になってたことに気づきました。模倣していたつもりが、唯一無二になってたんですよね。
結局、クリエイター力がある人は、誰かのマネをしていても、どうしても自分が出ちゃうんですよね。フォーマットがほぼ決まってる特撮とか見ても、すぐ誰の脚本か分かっちゃいますもんね。
いま、ゼミで20枚シナリオを書いているかたは、勉強法の1つとして、「脚本家の〇〇さんのテイストで書いてみよう」ってやってみるのもいいんじゃないですかね。模倣したところで、100%模倣にはなってなくて、1%はその人の作風が出るものなんですよ。
厳しいことを言うようですけど、もし“自分”が出なかったら、そこまでの弱い個性しかないってことです。
シナリオ・センターでは、脚本の書き方を教えてもらえます。
でも、それだけでは「なれない」。
いまは発信できるところがSNSで増えてきたんだから、それを使って“営業”すればいいのに、みんな意外とやらないですよね。
脚本家や漫画原作者になりたいなら、色々なやり方があるので、ぜひ何らかの行動を!
でも、どうせ、9割(※)のこの読者は、やらないんでしょうけどね。
※“9割”とは? ぜひ『月刊シナリオ教室 2019年5月号』の「先輩のオ・シ・ゴ・ト」をご覧ください。
太田ぐいやさんが原作/脚色を手掛けた新作漫画情報
©木村光博/太田ぐいや/実業之日本社
・『もんこ~ろ』
漫画:木村光博さん。
香道 富士川流4代目の長女で高雅な香りを好む未音〈みおん〉、体臭フェチの淡路彗湖〈あわじすいこ〉、人工的匂いフェチの南蜘蛛絢生〈なぐもあやき〉。匂いフェチの女子中学生“においフェチなJCたち”が集まり、香道部復活に奮闘する学園コメディ。第2巻が今春発売予定。詳細はこちらから。
・『そば屋幻庵』
漫画:かどたひろしさん。原作:梶研吾さん。
雑誌『コミック乱ツインズ』(リイド社)で連載中の人気漫画『そば屋幻庵』の第105話以降から脚色をご担当。単行本『そば屋幻庵』(第16巻)も4月13日発売予定。詳細はこちらから。
※太田ぐいやさんFacebookはこちらから。
【Facebookの自己紹介欄に「0歳から∞歳の精神年齢を自在に持ち続けたい」って書いてます。
「『うんち』より『うんこ』の方が固そうだよね」って言いながら、その2秒後に「辺野古の基地移設問題」を語る、みたいなそういう振れ幅がある柔軟な感じのクリエイターになりたいんですよ。もうなってますけども。いつまでもそれを続けたいです。
そう言えば、昨日、公衆トイレで小をしてたら突然、大が漏れて、緊急でコンビニでパンツを買って履き替えました。それで妊婦加算の裏の問題の話なんですけど(以下略)】(太田さん)