アイデア倒れ
シナリオ・センター代表の小林です。「アイデア」ということをここのところずーっと考えています。
何故かというと、サマーセミナーのミッションのテーマは、「アイデア✖シナリオの技術」だからです。
アイデアについての悩みは2つあります。どうやって面白いアイデアを思いつくか。もうひとつは、そのアイデアをどうやって昇華させるかです。
アイデアはいいのだけれど、いまひとつ・・・と言われるコンクール応募作品はたくさんあります。
それについては、サマーセミナーで、アイデアを「シナリオの技術」で描く方法をお教えしていきますから、即解決です。
「型を知って型を壊せば型破り、型を知らずして型を壊せば形無し」
最初の面白いアイデアを発想するにはどうするかですが、ここは感性の部分ですので、人それぞれの頭、または心の中なので、こうやれば面白いアイデアが出るということが言いにくいですが、新井一は、そんな発想することに対しても10則集に書いています。
1、姿から発想しよう
2、 何でもあべこべ 知恵が湧く
3、好きな作品を思い出してみよう
4、天地人をぶつけてみよう
5、もしもと連想してみよう
6、制限してみると異色作に
7、テーマからビジュアル
8、俳優さんからも考えられる
9、視点を変えると無尽蔵
10、フォーマット発想法によって集中する
こんな新井一の発想をもとに、サマーセミナーのミッションは動いていきます。
夏は、変化するためのステップボードです。奮ってご参加を!
凪待ち
こんなにろくでなしが主人公の本は読んだことがありませんでした。 しかもこのろくでなしを変えてくれるであろう人は殺されてしまいます。
「凪待ち」(キノブックス刊)
シナリオ作家協会理事、出身ライター加藤正人さんの初小説です。
この小説は、実は、映画の原作で脚本も加藤正人さんが描かれています。
6月28日公開の香取慎吾さん主演で話題の映画「凪待ち」。
小説と映画が同時に動いているというのは珍しいですね。
主人公の郁男は、競輪にはまっているギャンブル狂。川崎の競輪場で損をしては酒におぼれる典型的なダメ男。
だが、同棲している亜弓の希望で郁夫になついている亜弓の娘美波とともに、亜弓の故郷石巻へ引っ越すことで一新しようと考える。
津波で奥さんを亡くし肺がんを患う亜弓の父との疑似家族として、再生できるように思えたのですが、また、誘惑の手が伸び、どこまでも転がり落ちていくのです。郁夫はどこまで落ちていくのか・・・。
初小説とのことですが、さすが名脚本家の描かれる小説は、映像が頭の中に浮かび、それぞれの濃いキャラクターが息づいています。
本当にろくでもない男にどうしてこんなに魅力があるのでしょう。加藤さんのキャラクターづくりのうまさがここでも光っています。見習いたいものです。
このお話は、ひとりの男の喪失と再生の物語ですが、そこには東日本大震災の被災者の方々のみならず、苦しみもがいているすべての人へ加藤さんからの強い再生へのメッセージのように感じられました。
映画はまだ拝見しておりませんが、小説を読んで浮かんだイメージに近い配役で、映画を拝見するのも楽しみです。
加藤さんは、シナリオ作家協会や大学でシナリオを教えていらっしゃいますが、いつもおっしゃっていることは「一番大事なのは相手に伝えたいメッセージ。型は技術にすぎない。でも、どんなにすばらしいメッセージも、相手に納得してもらえるように表現できなければ意味がない。だから絶対に型を無視してはいけないんです。これを身につけないとプロになれませんよ」(加藤正人の名言集より)
あなたの伝えたいメッセージがどのようにすれば伝わるのか、この夏、あなたへの宿題です。