ちょっと視点を
シナリオ・センター代表の小林です。九州は大丈夫でしょうか。気象庁では7月の雨量が一日で降ると・・・。あちらこちらで川も氾濫しているみたいで、心配です。一昨年も豪雨に見舞われて大変なことになっていました。
避難されていらっしゃる方々のご健康も心配です。
自然災害は人間の英知を超えたものですから、こればかりは仕方がないでしょうけれど、それでも人災である部分も多く、そこは何とかしたいです。
そういえば、日本は世界有数の災害国・地震国なのに、避難所は先進国として世界最低レベルなのだそうです。(最近日本はなにかにつけ最低レベルになっていますね)
体育館や公民館に雑魚寝が当たり前と思っているのは、日本人くらいらしいです。我慢が美徳の日本人だから?
世界共通のソフィア基準という避難所の基準があるそうです。
1人2畳、間仕切り、トイレは20人1つで男女比は1:3で50メートル以内に設置というのが、人間の尊厳を守る最低基準らしいです。 日本と同じ地震国のイタリアでは、エアコン・トイレ付きの6人用大型テントに家族単位で、またホテル等に宿泊するのだそうです。
日本は、特にここ数年災害があちらこちらで起こっているので、民間のボランティアやNPOができうる限り過ごしやすいようにと考えてくださっているようですけれど、空いているホテルや旅館にも避難されたらいいかと思うのです。
災害が起きれば、観光客も減るのですから、旅館やホテルを借り上げたら、一石二鳥じゃないでしょうか。
現場は市町村が仕切らないと無理でしょうけれど、F35戦闘機1機分、イージス艦1隻分でも避難所用の資金に回したら、これこそ国の守り、国の要ではないでしょうか。
日本人一人一人が想像力をもって、税金は必要なところに上手に使って、誰もが幸せを感じられるいい国を目指したいですね。
他人を想う心、想像力を広げて。想像力が広がるというのはいうことは、創造力、アイデアが湧きだしてくるということです。
ドーナツの穴の向こう側
想像力ならこの方です。
日本中の人が知っている「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督。
上田監督が24歳の時に出版された小説が新装版として刊行されていたので、読ませていただきました。
「ドーナツの穴の向こう側」(星海社刊行)>>https://amzn.to/30CIrd9
発想とは、かくして生み出されるものだと実感しました。
18歳の女子高生が父親の死をきっかけに、彼女の日常に数々の不思議が舞い込みます。
公園で穴を掘る厄年の営業マン、スクリーンの前に土俵があり、映画の上映と相撲の取り組みを同時に見る映画館、トマトを握りつぶしながらするキス「トマンチキス」、忘れたい相手の写真を冷凍庫で凍らせる「フォトれな草」、雨の日はコンビニに集まりやむまで待つ人々、スーツの襟元についたフード、墓石にファンデーションでお化粧しホームベースをお供え、食後のデザートや酒の肴として行う「釘打ち」、たばこのようにポテチのように食べるメンマ中毒、炊飯器を持って走るマラソンなどなど、次から次へと日常におかしな現象が現れるのです。
驚きながらも、ドーナツの穴からのぞき見る癖のある主人公あやねは、「世界がどうであろう、あたしはあたしのやるべきことをやるだけだ」と思うのです。
あやねは思います。
「この世界の何がおかしいんだろう?例えばあれはなんだ?流しそうめん。そのまま食べればいいものをなんでわざわざ竹に流して食べる?それこそなんだそりゃ、だ。相撲と映画が一緒になってやるのと、流しそうめんは何が違う?なにも違わない。
タバコなんてもってのほか。なんの利点もないのにそれをプカプカ吸ってる。それが常識?まだメンマ中毒の方がよっぽど健康的で常識的じゃないか。
雨を傘でしのぐのは正しいことか?そんなの誰が決めたんだ?知らない人達と一緒になって雨宿りする時間、それは結構素敵な時間だと、あたしは気に入っている。
炊飯器を担いで行うマラソンがそんなにおかしいことか?野球と何が違う?何だかわからない形をした棒で、白く硬い球を打つ。大きめの革の手袋でそれを必死になって受けとめる。野球だって相当とんちんかんなスポーツじゃないか。
今ある常識なんてすべて時の運でできてしまったものなのだ。このおかしな世界のヘンテコなもの達が常識になっていても何もおかしくない。
結局、世界はおかしい。いつの時代も。どんな世界も。」(抜粋)
上田監督の発想の源を垣間見た気がします。
現実にあるものを疑わずに過ごしているのではなく、ちょっと視点をかえれば、上田監督いわくの「いつもからちょっぴりずれた3センチ隣の世界」をみれば、もっと発想は、生き方は、世界は変わるのです。
サマーセミナーでお伝えしたいことをここに見つけた気がしました。
上田監督の頭の中は、飛びぬけて奇抜なわけでもなく、ちゃんとその時に合わせて視点をずらしてアンテナを張っているように思えます。
「日常を疑う」、岡田惠和さんはこんな言葉でおっしゃっていましたが、ちょっと「いつもと違う」見方、考え方をしてみましょう。
それには、見るだけでなく聞く耳も大切です。きっと面白いものが生まれてきます。
閑話休題。この小説のもとは、24歳の時、自費出版のような形で世にだされたのですが、その時は全く売れなかったそうです。
そこで、2011年に短編自主映画「恋する小説家」として映像化し、この主役の女子高生を演じた少女が「カメ止め」のヒロインを演じていらっしゃるそうです。世界は回っているのです。
8月16日、上田慎一郎監督・共同脚本の「イソップの思うツボ」が公開となります。