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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

職業を考えるとキャラクターに深みが出る

ランチ酒おかわり日和(祥伝社刊行)

人間関係

シナリオ・センター代表の小林です。まだ九州には大雨警報が出ていますが、200万人近くの方が避難されたとかとニュースを見ると、一体どうなるのだろうと思います。
私の鹿児島の知り合いもちょっと落ち着かれたようですが一時は避難されて大変だったとお聞きしました。「早く元の生活に戻れるといいけれど、こればかりは天に任せて・・・」と友人は笑っていましたが、胸中察するものがあります。
雨はなくては困りますが、すべて度が過ぎるのだけはやめてほしい。物事はほどほどというのがありがたい。
最近は、天候だけでなく「ほどほど」がなくなっている気がします。
社会全体が人心が殺伐としているように思います。
他人(ひと)との付き合いには、踏み込んでいいものと踏み込んではいけないものがあります。
その「ほどほど」加減と、濃いおつき合いを上手にするのが人間関係なのだと思うのですが。
シナリオをお勉強するとよいかと・・・。

ランチ酒おかわり日和

出身ライターの原田ひ香さんの「ランチ酒」のおかわり、2杯目が出ました。
「ランチ酒 おかわり日和」(祥伝社刊行)>>https://amzn.to/30zy8qe
この小説は、めちゃめちゃ楽しみにしていました。なにしろ2倍楽しめるからです。
ひとつは主人公祥子との人間関係のドラマ。
もうひとつは美味しいランチとそれに合うお酒。「孤独のグルメ」に匹敵する臨場感あふれる描写。

本を開いたとたん、1店目は表参道の焼き鳥屋さんでした。
「あ、あそこだ!」だってわかっちゃいました。ランチ時間が短くて、1時ちょっとには閉めちゃうので、1時朝礼のあるセンターではなかなかいけないお店なのですが、私も大好きな焼き鳥屋さんでした。
原田さんの小説は、心を癒されるようなやさしい人間ドラマと絶品グルメの2つを完食できるのです。
キャラクターが素晴らしい。
主人公祥子はバツイチ、アラサー、職業見守り屋。一人娘を夫のもとに残して離婚して、いつか娘を迎えたいと思いながら、幼馴染のやっている見守り屋で働いています。
「見守り屋」というのは、依頼に応じて夜から朝にかけてひたすら人や物を見守るお仕事。
原田さんの「東京ロンダリング」も、事故物件をロンダリングするお仕事だったりと、職業の設定がいつも驚くほど魅力的。
だからこそ、そこに生まれるドラマも一味違うのです。
この「ランチ酒」の主人公は、夜勤明けの疲れをランチ酒で癒すのですが、お酒だけでなく街で出会ったグルメを堪能することに意味があります。
その食べ物のうまみは、お酒と見守り屋で出会った人々と、祥子自身の人間関係とを絡み合わせて、物語を絶妙な味付けにしていきます。
癌の末期で食べられなくなった小説家が、「いつでも食べられると思っていたけれど、いつでも、なんてない。」
「なんでもそう。ね?あなたは、きっと今、ここにあるものは、あなたの手の中にあるものは、いつまでもここにあると思っている。けど、違う。それを楽しめるのは本当にごくわずかな時間だけなのよ」
と祥子にいいます。
わけありなお客たちと過ごす時間が祥子の気持ちを変化させていく・・・まさにドラマとは変化なのですね。
この小説の醍醐味は、原田さんの描写力。
もう食べたくなっちゃうほど湯気の一筋まで見えてくるし、またその場にいるようにシーンが浮かびます。
脚本を描かれていたからこそ、想像力を掻き立てる描写がおできになるのかなぁと思います。
「ランチ酒」「ランチ酒おかわり日和」2冊続けてご賞味いただきたいです。
ことのほか美味しいです。

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