menu

脚本家を養成する
シナリオ・センターの
オンラインマガジン

シナリオ・センター

代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

硬軟まぜまぜ

添え物映画百花繚乱ちらし

政治って

シナリオ・センター代表の小林です。昨日は雨の中、講演会と映画のはしごをしました。
築地から阿佐ヶ谷へ、こんなに精力的に動いたのは久しぶりで、こんなに落差あるものを1日で体感したのも久しぶりです。(笑)

築地の朝日新聞本社で行われた論座を聞きに行きました。
今、話題の「新聞記者」の原作者である望月衣塑子記者と政治学者の中島岳志さんがゲストで朝日新聞政治部の方が司会されて、宿敵()菅官房長官とのお話や参議院選、今の自民党と野党はどういうものなのかなど興味深いお話がいっぱいで2時間があっという間でした。

映画「新聞記者」を見た時に、ラストを観客に委ねていたので、私はもう一歩突っ込んでほしいと思いました。何しろ学生運動世代ですから。() ですが、このお二人のお話を聞きして、映画「新聞記者」はこの出し方こそが、誰もに共感してもらえる作り方なのだと納得しました。
河村プロデューサーが、制作会社や役者さんにこの映画に関わると今後仕事が来なくなるといけないからと断られたということをお聞きして、「まさか、この時代にそこまでは」と思ったのですが、望月記者の色々なお話をお聞きしていたら、あるかもねぇと。
望月記者は、きれいな楚々とした感じの女性で、こうした圧力に屈せずに戦い続けていらっしゃる姿に感銘を受けました。レイプされた伊藤詩織さんもそうですが、女性たちがちゃんと声を上げても、男性社会では抹殺されてしまいがちです。その中で頑張ることは本当に勇気のいる大変なことです。力はありませんが、応援していきたいと思います。
忖度とか同調圧力とかを上手に使われているのが官邸、特に官房長官のようで、映画の中でも、松坂桃李さん扮する杉原に内調部長が「子どもが生まれたんだってね」とか言葉をかけるのですが・・・こんなかんじでやるらしく、なるほどなあと思いました。人事を握るって権力を握るのと同じなのだそうです。

中島さんは、今の政治家は昭和の政治家と違うというお話をされていて、昔は国を思うことは国民を思うことだという政治家がほとんどだったそうです。
凄くわかりやすい比喩を出されて、トップになりたいという志をもっている人には2通りあるそうです。トップになって世の中を(組織を)変革したいという人と、トップになりたいだけの人。
今の世の中を見ていると、政治の世界でも経済界でも利権を求めてか、自分のためにトップになりたい人ばかりのような気がします。
本当はどこに目を向けているのか、どういう意識を持っているのか、この参議院選では候補者一人一人を吟味し、政党の本当の姿を探って、国民の一人として、この国が国民のためにあり続けられるよう、投票したいと思いました。

中島さんは、「自民党価値とリスクのマトリクス」「野党を読む」という本を出されていますが、この本は今までの政治家たちが言った言葉や文章、出している本などからその人の考えや思いをみつけるというものです。
シナリオ・センターのやっている人事分析でも同じで、健太君という10歳の男の子の質問にいくつか答えてもらいます。
それも10歳の子供にわかるように噛み砕いて(ここがポイントなのですが)答えてもらいます。質問にいくつかに答えているセリフを読むと、必ずその人のキーワードがなにげに出てきてしまうものです。
話せば話すほど、キーワードは見えてきます。その人が隠していたいことも出てきちゃうから不思議です。
人が発する言葉というのは、それほど大事なものなのです。キャラクターは隠せないということです。
だからこそ、キャラクター設定は、大切で、
シナリオの中のセリフも心して描かなくてはなりませんね。

デン助さん

夕方から、ガラッと変わって阿佐ヶ谷ラピュタで、新井一の映画を。
「添えもの映画百花繚乱」特集。
昭和の映画全盛期の頃は、上映は二本立て、三本立てで行われていました。メインの映画があってそれに添える併映ものがあったのです。
その特集を7月いっぱいまで阿佐ヶ谷ラピュタで行っています。

新井一の作品が3本出ています。
昨日見たのは「デン助のワンタン親父とシューマイ娘」「デン助のやりくり親父」の2本です。

1959年の作品で、その頃浅草で一大ブームを起こしたコメディアン大宮敏光が主役で、江戸っ子の「俺にデンとまかせておけ!」が口癖の人情喜劇です。
「デン助のワンタン親父とシューマ娘」「デン助のやりくり親父」」も、下町の裏長屋に住む住人たちを、自分も大してお金もないのに助けながら、笑って泣かせるお話になっています。
この映画2本に共通しているのは、「もらいっ子」。「ワンタン親父」は10歳の歌のうまい女の子がもらいっ子で、のど自慢出でて本当の父親に巡り合うというお話。「やりくり親父」の方は娘も息子二人ももらいっ子で、娘はもらいっ子だというので縁談を断られたりします。
1959
年。戦後から9年。まだまだ戦争の傷跡が残っている時代で、戦争孤児をもらいっ子して育てていたのです。
今の朝ドラ「なつぞら」の主人公もその兄妹も戦争孤児で他人に育ててもらっていますね。そういう時代背景があるのです。

人情も濃く、下町では落語の長屋の住人のように肩寄せ合って生きていて、お互いに助け合っています。
そのなかでデン助さんは、特に際立って人のために生きる人。もらいっ子を自分の子供として育てるというところにキャラクターが出ていますね。
頼まれたらいやと言えない、江戸っ子だから見栄っ張りで、困った人を見ればなけなしのお金も上げてしまってもどこ吹く風。そんなデン助の江戸っ子気質のキャラクターが織りなす色々な些細な事件(事件というほどではない事件)が泣き笑いを生み出します。

素直にストレートに心温まる人情喜劇でした。

それにしても、日曜日の雨の降る夜だというのに、「添え物映画」でありながら補助席が出るほどの盛況にびっくりしました。
もっとも単純にドラマの構成がわかりやすく、キャラクターはかくあるべきというくらいわかりやすい映画です。
基本の基を学ばれるにはいい見本だと思います。

閉塞感に満ちた、言いたいことも言えない昨今に、デン助さんは一陣の風を送ってくれました。
デン助さんの時代は戦後すぐですから、民主主義へ変わるために試行錯誤している時代です。
他人が困っていたら、子どもも引き取るし、なけなしのお金もはたいちゃう。今そんな人いないですよね。(悲しい!)

戦前に戻りつつある今、社会が変わろうとするときこそ、自分のことだけばかりを大事にするのではなく、デン助さんのように「悪いことは悪い」と明るく言いたいことを言って、自分のできることを実行していきたいものです。

 

過去記事一覧

  • 表参道シナリオ日記
  • シナリオTIPS
  • 開講のお知らせ
  • 日本中にシナリオを!
  • 背のびしてしゃれおつ