――脚本コンクールで賞をとりたいかたは、「脚本コンクールで賞をとるのはどんな作品なんだろう?」「どんな思いで書いたんだろう?」と気になるのではないでしょうか?ぜひ受賞者のコメントを、次回応募する際の参考にしてください――
今回ご紹介するのは、伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2019。
応募総数は、「中編の部」が127本、「短編の部」が134本で、合計261本。中編の部で大賞を受賞されたのが、通信講座作家集団 中野優子さんの『キリノシロ』。
<あらすじ>両親が離婚し、住みなれた都会から母の実家である地方都市に転校してきた霧子(小5)。母の実家は寂れたラブホテルだった。クラスメイトの光矢は、しきりにそのラブホテルに興味をもち、霧子をからかう。だが、光矢も家では暗い秘密をかかえていた。ある日霧子は、雨の降る中、力なく歩く光矢をみかける。心配して様子を見に来た霧子に、「ラブホの中へ入れろ」という光矢。強引にホテルへ入っていってしまう。止めようとする霧子だが、好奇心に負けて、後をついて行く。部屋に潜り込む霧子と光矢。そこへ1組のカップルが入ってくる。慌ててクローゼットに隠れる霧子と光矢。2人は、大人たちの秘密を垣間見てしまう――。
審査員の松岡周作さん(プロデューサー)は、【『キリノシロ』は、大人の世界に振り回される子供らの話。子供からすると身勝手にも見えるはずの理由をなんとか理解しようとしている健気さがまず心を打つ】とし、
龍居由佳里さん(脚本家)は、【(大賞候補となった作品の中でも)一番心地よくドキドキできたのが『キリノシロ』でした。子どもの事情と大人の事情のバランスの絶妙さにも感心しました。このドキドキ感が映画化してさらにふくらむことを期待しています】とコメントされています。
※ともに「伊参スタジオ映画祭2019冊子」の「審査員総評」より引用。
中野さんによるとこの物語、下校途中の小学生の会話からヒントを得たんだとか。そして、これからご紹介する中野さんのコメントの中には、「発想は身近なところに転がっている」「自分の中のテーマを探す」といった言葉が出てきます。これは創作していくうえで、すごく大切なキーワードなのでは?
実は身近なところに面白い「アイデア」はあって、でも、それを面白い「作品」にするには自分が書きたいテーマがないとできない。そんなことを考えさせられます。皆さんはどう感じますか?
なお、『月刊シナリオ教室2020年2月号』(1月末発行)に、中野さんのインタビューを掲載いたします。こちらの記事と併せて、「どんな作品が賞をとるのか」、分析してみてください。
「発想は身近なところに転がっている」「自分の中のテーマを探す」
――結果は授賞式当日、発表されるんですよね。会場で大賞受賞を知ったときのお気持ちは?
〇中野さん:授賞式当日、プログラムと一緒に最終候補のあらすじ一覧をいただいたのですが、下から2番目に出ていたので「受賞は無いな…」と思っていました。だから、大賞をいただけるとは思っていなかったので、驚きました。
受賞後で変わったことは、知り合いが増えましたね。映画製作は多くの方の力をお借りしなければならないので、自分からもコンタクトをとるようになりました。
受賞後に、友人や家族からお祝いの言葉を貰えて嬉しかったです。しばらく連絡をとっていなかった友人とも、また繋がることが出来ました。「シナリオ書いてるよ」と堂々と言えるようになりました。
――受賞作『キリノシロ』はなぜ書こうと思ったのですか?
〇中野さん:下校途中の小学生の会話からヒントを得ました。
発想は身近なところに転がっていると思います。いろいろあるけど逞しく生きろよ、という思いを込めたつもりです。
また、誰もがそれぞれ通ってきたであろう少年少女時代があるわけで、そこに共感性を見出してもらえるかなと思います。
――シナリオ・センターにはコンクールでの受賞を目指しているかたが沢山いらっしゃいます。是非ひとことお願いいたします。
〇中野さん:私は伊参映画祭に応募したのは6回目ですが、昨年は短編中編ともに一次落ちでした。最終まで行ったり一次通過だったりいろいろです。
過去にダメだったコンクールでも、気持ちを切り替えて再チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
それと、大好きな「キョウリュウジャー」という特撮番組の歌に「地球儀をまわすよりも心のなかを探せ」という文言があります。
お出かけしたり、様々な情報を得るのはとても大事ですが、それだけで終わらずに自分の中のテーマを探すのが大事かなと思います。私も日々模索中なので、共に頑張りましょう。
※今後『キリノシロ』は、中之条町周辺でメーンロケを行い映像化され、第20回伊参スタジオ映画祭(2020年)で初公開されます。
※伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2017・2018もシナリオ・センターのかたが受賞されています。こちらの記事も併せてご覧ください。
■ “たとえ辛いことでも、人生で経験することに無駄はないと信じて書き続ける”/伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2018短編の部 大賞受賞 胡麻尻亜紀さんの記事はこちらから。
■“大切なのは書きたい衝動に耳を澄ませること”/伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2017と函館港イルミナシオン映画祭で受賞 村口知巳さんの記事はこちらから。
※このほか、脚本コンクールいろいろあります。こちらのブログ「主なシナリオ公募コンクール・脚本賞一覧」で、どんなコンクールがあるのかチェックしてみてください!
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