脚本コンクールの結果が発表されるたびに、「審査員はどんなところを高く評価したんだろう?」と気になりますよね。シナリオ:センターのブログでは、授賞式や記者会見で発表された選考理由を紹介しています。次回、脚本コンクールに応募するときの参考にしてください。
今回取り上げるのは、第31回フジテレビヤングシナリオ大賞・結果について。
記者会見で発表された審査委員長 加藤裕将さん(フジテレビ第一制作室・プロデューサー)による受賞作品の選考理由をご紹介。また、『ヒトノカケラ』という作品で同賞の佳作を受賞された元研修科 遠藤大輔さんのコメントも紹介します。
「コンクールに何度出しても通らない。どうしたらいいんだろう…」とお悩みのかた、遠藤さんのコメントに現状打開のヒントがあるかもしれませんよ!ぜひ参考にしてみてください。
※『月刊シナリオ教室』(2020年3月号/2月末発行)には、遠藤さんのロングインタビューとともに『ヒトノカケラ』のシナリオも掲載しますのでお楽しみに。
審査委員長 加藤裕将さん
「遠藤さんの『ヒトノカケラ』は、予測できない結末とセリフが最大の魅力」
〇加藤さん:今回の応募総数は1733編(前回1463編)。例年より多くてですね、最終審査も残ったのが15作品で例年より多いんです、毎年だいたい10・11作品くらいだったので。そういった意味ですごくレベルが高くてですね、最終審査の15作品、けっこう票が割れました。ただ、割れはしましたが、今回受賞した4作品(大賞1作品:佳作3作品)に人気が集中しました。
その中で大賞に選ばれた作品が中村允俊さんの『パニックコマーシャル』。CM制作現場を舞台にしたワンシチュエーションのバックステージ・コメディです。実際に起こり得るいろいろな展開、緊張感のある展開をコミカルに描いていて、オリジナリティーと計算された展開というところがすごく評価されました。とにかく、エンターテインメント性の高い作品に仕上がっています。そこを評価されて大賞を受賞されました。
佳作を受賞された遠藤大輔さんの『ヒトノカケラ』は、不倫相手と奥さんを交えた話し合いの場、いわゆる“修羅場”から奥さんが飛び出して、交通事故にあってしまうというところから始まる物語なんですね。これがキッカケでいろいろと複雑に絡み合う人間関係を描いたヒューマンドラマ。登場人物が「生きていること」を感じさせる作品になっていました。この作品が高い評価を得たのは、結末がどうなるのか予測できないということと、「遠藤さん、セリフが書ける人だな」というところでした。
受賞4作品は、エンターテインメント性の高い作品やコメディ、ヒューマンドラマやロードムービー的なものだったりとジャンルは全然違いました。受賞者の年齢もバラバラで、下は16歳、上は38歳。唯一共通点があるとしたら、皆さん男性ですというくらい。そんな第31回でした。
第31回フジテレビヤングシナリオ大賞 佳作受賞 遠藤大輔さん
「登場人物にはできるだけ本音を言ってもらいました」
――今回受賞されて
〇遠藤さん:報せを頂いた時は大賞ではなかったことを非常に悔しく思いました。ただ、金メダルと銀メダルには非常に大きな差がありますが、銅メダルと4位ではそれ以上の差があると何度もコンクールの最終選考で落ちて痛感していたので、ほっとしたというのが正直な感想です。
――受賞して何か変化したことは?
〇遠藤さん:受賞後の変化については1年後ぐらいに実感できればいいなと思っています。
――受賞作『ヒトノカケラ』はなぜ書こうと思ったのですか?
〇遠藤さん:何か問題が起こると加害者が徹底的に叩かれる風潮があります。もちろん悪いことは悪いので、加害者は謝罪をするのですが、本心ではいったいどう思っているのだろう、と考えたことが書くきっかけです。
この作品は「正義」をテーマに書いています。登場人物それぞれが正義を持ち、それを振りかざした行動をとります。「正義」というものは実に心地よくて、手にいれてしまうと大切なものが見えにくくなる。その怖さを描きたいと思いました。
また登場人物にはできるだけ本音を言ってもらいました。嘘をついたり本心を隠すこともありますが、この作品に関しては皆が皆、自分の思ったことを勝手に言いあう方がいいなと思いました。
――シナリオ・センターでコンクール受賞を目指す生徒さんに向けてひとこと
〇遠藤さん:自分が落選したコンクールの受賞作を読むと「自分の方が面白いのに」と、つい言いたくなってしまいます。作品だけでなく、その方の経歴にさえ文句を言いたくなってしまいます。私がそうでした。笑えません。
数年前からそれをグッと我慢して「この作品の面白いところはどこなんだろう?」と、真剣に探すようになってから、不思議なことに面白く感じられるようになりました(受賞作なので当たり前なのですが)。
そうすることで自分にはなかった視点や価値観などが広がり、面白いシナリオが書けるようになっていくのでは、と思います。たぶん。
※前回・前々回のフジテレビヤングシナリオ大賞会見も模様をご紹介した記事も、参考のためぜひご覧ください。
・「どんな脚本が賞をとるのか /第30回フジテレビヤングシナリオ大賞にみる」はこちらから。
・「第29回フジテレビヤングシナリオ大賞に見る審査のポイントと受賞者のシナリオ勉強法」はこちらから。
第31回フジテレビヤングシナリオ大賞 応募状況
■平均年齢
全体:34.6歳(前回33.6歳)
男性:33.6歳(前回33.1歳)
女性:34.7歳(前回34.3歳)
■最年少応募者
男性:14歳(前回15歳)
女性:13歳(前回13歳)
■最年長応募者
男性:69歳(前回69歳)
女性:66歳(前回65歳)
コンクールで賞をとりたいかたのためのお役立ちコンテンツ
下記の記事を参考に、仕上げに入ったコンクール応募作品を見直すのもアリかもしれません。是非、参考になさってください。
・「脚本コンクール で賞をとる4つのポイント」はこちらから。
・「脚本 コンクールで最終選考に残るためにはプロデューサー視点」はこちらから。
・「コンクールで賞をとるにはキャラクターが重要」がこちらから。
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