マンガ『死役所』(新潮社)/あずみきし
注目ポイントは設定
「お客様は仏様です」。此岸と彼岸の境界に存在し、自殺、他殺、病死、事故死……すべての死者が訪れる死役所。彼らの今後を手続きするこの場所で死者は何を語るのか。
シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。
アニメや漫画にはシナリオ創作に役立つヒントが満載。魅力的なキャラクターとはどんなものなのか。設定だけで面白いと思わせるにはどうしたらいいのか。その答えは話題のアニメや漫画にある!シナリオ・センターでマンガ原作講座やSFファンタジー講座を担当する仲村みなみ講師の『マンガから盗めっ!』『サブカル総合研究所~マンガとアニメと、ときどきラノベ~』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
今回ご紹介するのはマンガ『死役所』。2019年には出身ライター政池洋佑さんが脚色を担当され、テレビドラマとして放送されました。この作品について仲村講師が注目するのが、死後の世界の設定。皆さん、もし死後の世界をテーマに書いてくださいと言われたらどうしますか?「ちょっとイメージしづらいな…」というかたは特に、こちらのコラムを参考にちょっと考えてみてください。
注目ポイントは設定
「お客様は仏様です」。此岸と彼岸の境界に存在し、自殺、他殺、病死、事故死……すべての死者が訪れる死役所。彼らの今後を手続きするこの場所で死者は何を語るのか。
年に2回開講している「マンガ原作講座」。課題として企画ワークシートを提出いただいているが、その添削がとても楽しい。課題を通してお一人お一人と向きあえるし、時代の空気感というのか、みなさんの志向性(意識や興味がどこに向かっているか)が課題から感じられて興味深い。
たとえば夏講座の120本近い課題の中で最も多く登場したのはおそらく「死」という単語だ。恐怖や不安の対象としての死。救われる方法としての死。リセットする機会としての死。誰かとの絆を取り戻す場としての死……。いろんな捉え方があって面白い。
ただ、ひとつ気になることがある。それは死後の世界の設定。どんな場所でそこにいるのはどんな人物で、死者はそこで何をするのか。具体的に絵でイメージしづらいのだ。なんてもったいない!原作者の仕事は編集者や作画家に「ぜひとも絵にしたい!」そう思わせてナンボである。
ということで、今月は死後の世界の設定がバツグンに魅力的な作品をご紹介する。なんと役所である。だからタイトルは「死役所」。場の設定がそのまま作品の売り。どストレートなインパクトだ。
少年は今まさに飛び降りようとしている。
見下ろす地上の小ささに足が震えるけど、飛び降りた!…が気付くとそこは役所。何の変哲も無いどこにでもあるような……。立ち尽くす少年の前に、張り付いたような笑顔の職員・シ村がやってくる。
「こんにちは。自殺ですね」
シ村は少年を自殺課へ案内し「自殺されたお客様にはこちらの申請書を書いていただいております」と「自殺申請書」を差し出す…。
こうして、死者たちは「死の先」を決定するために手続きをしては去って行く。
自分の死で何かが変わるのを期待する者、自殺したと思われて悔しいと涙を流す者、虐待死させた親の元にまた生まれたいと願う娘…。シ村に促され「死の理由」を記載する彼らの生前はどれも哀しい。あまりの息苦しさに回想明けの役所の「フツー」の風景にホッとしてしまうほどだ。
けれどシ村は彼らを救いはしない。「お気持ち大変わかります」そう微笑みを浮かべながら淡々と事実を確認するのみだ。そして彼らの物語は「オチ」も「まとめ」もないまま唐突に終わる。
彼らの人生のように。感動とか涙とか怒りとかやるせなさとか感謝とか。それは受け手が勝手に感じればいいこと。この淡々が逆にあとをひく。どんな読後感を味わえるか確かめてみて。
※こちらのブログ「脚本家 政池洋佑さん/『死役所』『ミリオンジョー』を脚色して」も併せてご覧ください。
※【要ブックマーク】漫画やアニメには創作のヒントがいっぱい!今まで掲載したこちらのブログをまとめた記事「漫画・アニメのストーリーを書くには」はこちらからご覧ください。
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