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シナリオや小説についてなど、創作に役立つヒントを随時アップ!ゲストを招いた公開講座などのダイジェストも紹介していきます。

小説を書く練習 “5~10枚小説”を書く

「シナリオのテクニック・手法を身につけると小説だって書ける!」というおいしい話を、脚本家・作家であるシナリオ・センター講師柏田道夫の『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(「月刊シナリオ教室」)からご紹介。
「こんなことを小説にしたら面白いだろうな」と思って書き始めるものの、途中で書けなくなってやめたご経験が、一度や二度はあるのではないでしょうか?そんなかたにオススメなのが、20枚シナリオのように、“5~10枚小説”を書くレッスン。 今回は“5~10枚小説”を書くときの注意点やレッスン方法などをご紹介。

初心者にオススメ “5~10枚小説”

20枚シナリオのように、400字詰め5〜10枚の短編小説を書くレッスンについて。

どのような短編とするか? はそれぞれの書き手で当然違います。まず心がけることは、エッセイとかブログの日記ではなく「フィクションを作る」という意識を忘れないこと。

フィクションとするためには、顔の見えない他者を読者として想定して、その読み手に「理解して貰えるか?」「おもしろく読んでもらえるか?」「書きたいことが伝わるか?」さらには、「何らかの感動なり感慨、余韻が与えられるか?」という意識が必要となります。自己満足小説でなく、あるいはSNSやブログで知り合いや固定読者のイイネ!獲得とは違って、作品として成立するか否かの線引きはここだったりします。

小説に限らずシナリオも、作者自身がどうしても人物(特に主人公)に投影されたりするのですが、(売れる)フィクションを目指すのですから、できるだけ登場人物の造形に心を砕くようにします。

私小説ならば、作者自身が主人公そのまま、という書き方もアリですが、前提としてここでは、フィクションとしてのエンタメ小説を目指していますので、しっかりと人物を作りこみます。

この人物造形、人物の描き方に関しては、シナリオの基礎講座などでも、「一番大事です」「ここから物語が始まります」といったことを教わるはず。

これは小説も同様です。お芝居や小説にも、人物を意図的に無人格、没個性化するものもあります。むしろそれは例外ですし、いきなり初心者がマネしても失敗します。

客観性を得るために三人称で書いてみる

もうひとつ短い小説は、「私」や「僕」といった一人称が書きやすいのですが、フィクションを作るレッスンとしては、できれば三人称で書くことをオススメします。どうしても一人称で書きたいという人も、人物であったり表現に、客観視ができるという自信があるならば否定はしません。

さてどういう小説を書くかは、本当にその書き手次第なのですが、あえて日常的な世界、感覚でありながらフィクションのエンタメ小説であり、かつ文学的にも優れている短編小説を教本とします。

以前も取り上げましたが、向田邦子の短編集『思い出トランプ』です。

ご存じのように超がつく一流脚本家だった向田さんは、膨大な数のシナリオやエッセイを書き40歳を過ぎてから小説を書くようになり、400字で20〜30枚程度の短編『花の名前』『犬小屋』『かわうそ』のたった3作品で、直木賞を受賞しました。

数本の長編(主に連続ドラマの小説化)もありますし、飛行機事故の急逝がなければ、大長編も書いていたかもしれません。それは叶わぬ夢なわけですがともあれ、向田さんが残した短編小説は、作品としての完成度だけでなく、教科書としても一級品なのです。

新潮文庫の『思い出トランプ』の巻末に水上勉の「向田さんの芸」という解説が載せられています。これも教本として小説と合わせて読むと勉強になりますが、その最後に水上さんがこのように書いて締めとしています。

〝若い読者で、短編を勉強したい方があるなら、この『思い出トランプ』の一、二編を写してみられるといい。手頃の枚数だ。私のいっていることがよく理解されるはずだ。向田さんはつまり。そういう作品を残して亡くなった。〟

実はこの〝書き写し〟も有効な勉強法のひとつなので、本気で作家になりたいと思うならば、ぜひトライしてみましょう。

出典:柏田道夫 著『シナリオ技術(スキル)で小説を書こう!』(月刊シナリオ教室2018年12月号)より
次回は5月2日に更新予定です

※今回の記事と併せてこちらの記事「小説を書くとき 三人称一視点を勧める理由」も読んでいただくと、特に初心者の方は“小説を書く第一歩”が踏み出せるのでは

※要ブックマーク!これまでの“おさらい”はこちらで↓
小説家・脚本家 柏田道夫の「シナリオ技法で小説を書こう」ブログ記事一覧はこちらからご覧ください。比喩表現のほか、小説の人称や視点や描写などについても学んでいきましょう。

※シナリオ・センターの書籍についてはこちらからご覧ください。

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