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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

最近想うこと

ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー(新潮社刊)

人はみな

シナリオ・センター代表の小林です。吹き飛ばされそうなすごーい風です。(もちろん重いので大丈夫ですが・・・)この季節は、気候がころころ変わる怪しい時期ですので、体調に気をつけなくてはいけませんね。
コロナ騒ぎのせいで、イベントや公演なども減っているし、4月の連ドラまではまだちょっと間があるしで、なんだかパッとした話題がないですね。寂しい!

日本アカデミー賞作品賞などを受賞した問題作、映画「新聞記者」が凱旋上映されます。
嬉しいです。多くの人に観てもらいたいと思います。
これほど葛藤がうまく描けているお話はないからです。観客も一緒に葛藤されると思います。
何が正しくて何が本当なのか、人としてやるべきこと、生きることは、権力の前で人は・・・。自分だったらどうするか。
正義とは何か、昨日「テセウスの船」(TBS・出身ライター高橋麻紀さん脚本)を見ていて、「そうだよね」と思いました。
正義はそれぞれにあります。正義という言葉は同じでもひとり一人の正義は違います。
いつも申し上げているように「人はみな違う」のですから。
考え方や見方、想いが違うことは、本当に当たり前のことですが、案外人は気が付いていないし、それを許せない社会になりつつあります。
多様な人と出会い、多様な人の声を聴き、自分が思ってもいないことや知らないことに出合うことは、自分の感性を磨く糧になるのではと思います。

僕は~

「楽ばかりしていると無知になる」ドキッとする言葉に出会いました。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社刊)というノンフィクション本大賞など多くの賞を受賞したブレイディみかこさんが書かれた本の中の一節です。
ノンフィクションとかドキュメンタリーは、若い頃はあまり好きではありませんでした。真実をみるのが怖かったからです。
ですが、年を経て、真実は一つではない、色々な見方があり、できるのだということをわかりだしてから、見方、読み方が変わり、案外好きになりました。
みかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は、日本人の母とアイルランド人の父を持った息子の英国での学校生活を通して、人種差別や貧困の問題等とても濃い話をさらっと面白く書かれている本です。
中学生の息子の感性というか、発想や行動が実に素晴らしい。そして、みかこさんのものの見方、考え方の底の深さと広さに尊敬の念を抱きました。
この本の中で、彼女が息子にいった「多様性というやつはややこしい。でも、楽ばかりしていると無知になる」に衝撃を受けました。
息子は、「エンパシーとは何か」と学校で問われたときに「誰かの靴を履いてみること」と答え、母親のみかこさんを驚かせますが、それを読んでまた読者である私も驚きます。(笑)
そんな英国の公立中学での日々を描いたノンフィクションですが、この家族の会話が見事です。
みかこさんは、取材に応えて、「エンパシーは、自分が必ずしも賛成できない意見を持っている人や、この人は別にかわいそうじゃないよねと自分が思う人でも、その人の立場に立ったらどうだろう?と想像してみる「能力」と辞書に書いてあるんですね。
今、世の中、シンパシーは、みんな、自分が好きなものとか、自分が共鳴できるものにはいいねボタンを押しているけど、エンパシーがいまいち、想像力を働かせることをやめているんじゃないかということを、イギリスとかにいると割と思いますね」
日本もまったく同じじゃないでしょうか。
「私のやりたいことは、主張ではなく、現代社会の風景を描くことなんだろうと思います。
政治や経済の動きが、どんなふうに人々の生活にしみ出ているか。心模様に表れるのか。自分が暮らす地べたから、みつけていきたい」
物語を創るにしても、作者が持つ知識や教養、この知性がないと、視聴者や読者の心には届かない気がします。

心して、色々な人の靴を履いてみたいものです。
より自分自身の想い、考え方が試される時代になってきたように感じます。

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