商業映画として上映するなら 多くの人の共感を得ることも大切ですよね。では、多くの人の共感を得るシナリオを書くには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。今回は、チャールズ・チャップリンから学びます。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
「俺は37億の人に見せるんだ」(チャールズ・チャップリン)
映画テレビのシナリオは、映画なら観客動員200万人、テレビで20%以上稼ぐなら2000万人の人たちの共感を得なければなりません。
ところが大勢の人の共感を得るということは、大衆に迎合するとか、妥協するとか、自分の考えを曲げるように考えられて、卑しく思い、妥協しない方法をとりたいと考える人もいます。無理もありません。ところがややもすると、それはひとりよがりになります。
しかし実験映画や自主映画、自分だけで楽しむなら別ですが、上映するということは、いやでも商売になるわけです。商売イコール妥協と考えることは、知恵がないことです。
私の尊敬するチャールズ・チャップリン氏は、200万や2000万だとかはちいせいちいせい。「俺は37億の人に見せるんだ」というのが、その製作態度でした。
むずかしいものをやさしく深みのあるもので表現する
大勢の人にも見てもらうためには、むずかしいことでもやさしくしなければなりません。
しかし、やさしいことだけでは、テーマが通じないことがあります。
例えば名作『モダンタイムス』は、人間が、その人間の作った機械に使われます。当時流行り出したオートメーションを採り上げ、人間が機械に追いつけなくなっていく皮肉を出しています。
チャップリンは機械に弾き飛ばされる人間の滑稽さを描くだけでなく、機械に弾き出される人間は、やがて人間喪失をするのだと深く突っ込んでいます。こうなって初めてこのテーマを取り上げた価値があるわけです。
人間喪失をどう表現したかというと、前にいる女性のボタンもナットに見えてきて、スパナで締めようとして叱られます。人間喪失のテーマを、そうした滑稽さで表現しています。深い表現は滑稽が最高なのです。
なぜなら対象に対して批判的でなければ、笑いは出てこないからです。
むずかしいものをやさしく、深みを表現するには、批判的で滑稽な表現をすることによって、観客の胸にいつの間にか染み込んでしまうのです。滑稽さは喜劇の中でも下等なものと思われがちですが、実は深いテーマを表現する高等技術です。それがベストセラーになるのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1990年6月号 新井一の「巻頭言」/2017年7月号「新井一.com」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
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