「時間経過の書き方がよく分からない…」というかたや、「これもあれも説明しなきゃと思うと1つのシーンに詰め込んでしまう…」というかたは、カットバックを使いこなしましょう。ポイントはシーンとシーンとの“掛け算”です。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
時間の経過を表現したいとき
ペラ2枚というのは、そのまま撮影すると大体1分間の芝居です。人生では、たった1分間で物事が解決されるものではありません。
将棋の名人戦を書くとして、名人のほうが苦悩の色濃い様子を、延々と何時間も書くことは出来ません。そこで、新人はよくやる手なのですが、名人が考えている、×××(バツ・バツ・バツ)を入れて、次のシーンで将棋の投了するところを書きます。つまりオーバーラップです。
それでもいいのですが、それこそ映像の特性のカットバックがあります。
名人が苦しんでいる、庭のアジサイに雨がシトシト降っているところを入れて、時間経過になって、次のシーンは投了、ということもできますね。
全部いっぺんに書かずに、シーンとシーンとの掛け算で
書く人の頭の中には、いつも観客に知らせなければならないという思いが常にあるのです。そのため短いシーンでわからせようと説明してしまうのです。説明が一番手っ取り早いですからね。
しかしシーンの中では、場所の説明、登場人物の心情、ストーリー展開、時間経過など、書かなければならないことが沢山あります。それを全部いっぺんに書いてしまおうとしないことです。いくつかのシーンを組み合せて、1つの意味を作るのです。
モンタージュ(※)の説明のところで申し上げましたね。若い男女が明日休みなので遊びに行くことになり、男は山へ行こう、女は海がいいと言う。解決策まで出さないで、次のシーンが海を写していれば、結局、男は女の言うことを聞くのだなあとわかります。
ギャングの親分が、巣窟で独りうろうろしている。次のシーンで銀行の金庫を開けている子分たちとなれば、セリフなど何もなくとも、親分は子分たちの成否を心配していることがわかります。
これはカットバックの手法で、掛け算です。順序通りに話していくのは足し算で、掛け算の方がはるか数倍の迫力を生むものです。先ほどの時間経過を×××で繋いでいく方法なぞは足し算です。
では掛け算で、効果的にシーンを並べていくには、どうしたらいいのでしょうか。実は話の順序が構成のいちばん大事なところですが、それはまた別の機会で。
出典:『月刊シナリオ教室』1993年8月号 「新井一 十則集」/2015年3月号「新井一.com」
※モンタージュについてはこちらの「脚本技術 モンタージュ /シーンの対照で心理描写」をご覧ください。
カットバックについてもっと知りたいかたはこちらも
■カットバックに関する記事はこちらをご覧ください
・「シナリオの書き方『カットバックとインサート』:このハラハラドキドキを伝えたい」
・「ドラマ『アンフェア』に学ぶ脚本勉強法/カットバックを効果的に使う方法」
■カットバックに関するこちらの動画もご覧ください
・YouTube「【初心者必見】シナリオはじめの一手。『観客を夢中に!カットバック法』」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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