「ト書って動作や小道具を書けばいいんですよね?」というかたも、「詳しく書くと“それは演出の仕事”と言われるし、どうしたらいいか分からない…」というかたも、まずはト書の4つの機能から確認しましょう。そのうえでどんなことを意識して書けばいいのか、新井一が解説します。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
ト書の4つの機能
ト書の機能(はたらき)にはどんなものがあるでしょうか。
①書こうとするシーンの情景を書く
②人物の動作(出入り・仕草)を書く
③シャレード(※)を書く
④小道具の使い方を書く
――の4つが考えられます。
でも、それを全部横から客観的に写していればいいかというと、「ここの小道具はよく見てください」とか「このくやしそうな顔を見てくれ」とか、強弱をつけなければ平坦になります。その強弱をつけるのは、実は監督さんの仕事です。
例えば、よくあるト書で「くつろいでいる」と書いてあったら、どうなるでしょう。前にもお話しした通り、くつろぎ方は何十何百とあるのです。
監督さんは困ります。困るだけならいいけど、もし見当ちがいな表現になったら、シナリオを書いた意味がありません。
ト書はセリフにつける付録ではない
では、どうしたら監督さんに正確に伝わるでしょうか?
音楽の五線紙に、強くとか弱くとか指定があるように、指定したらどうでしょうか。
じーっと手の中のペンダントを見る。
金色に輝いているペンダント。
――のような書き方をすれば、最初の行は見た目への表現になりますし、2行目の書き方だと、演出家はペンダントのアップに、嫌でもするでしょう。なぜかというと、名詞(ペンダント)で止めてあるト書だからです。
しょぼしょぼと老人は去っていく。
――となれば、当然ロングで写すことになるでしょう。
シナリオのト書は演劇のト書と違って、一番最初に言った4つの機能をどう見せるかという、大事な表現力を持たなければならないのです。ですからト書をセリフの後につける付録だなんて思ったりしてはいけません。
ト書の1行は、ちょうど俳句の17字が、天地のすべてを表現するような、そんな重みを持っているのです。そのためには「丸太ン棒」のように必要な描写だけで、しかも、何を表現しようとするのか、折り目をキッチリつけて書かねければなりません。
ズボンとト書は、何と言っても折り目が大切なのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1993年8月号 「新井語録(新井一遺稿より)」/2019年5月号「新井一.com」
※シャレードについてはこちらの記事「映像製作者もおさえるべき「シャレード」という脚本理論」をご覧ください。
※ト書についてはこちらの記事「ト書とは何か。良いト書の書き方を解説!」もご覧ください。
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
今回の記事をご覧になって「ちょっとシナリオ、書いてみたいな…」と思われたかた、是非お気軽にご参加ください。
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
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