脚本をきちんと勉強することは監督にとっていいこと
〇柏原さん:柏原です。今日のお三方もそうだけど、『カメラを止めるな!』の上田(慎一郎)君とか、最近シナリオ・センター出身の監督が活躍しているんですよね。
僕は映画祭の審査員とかもしていて、インディペンデント作品のいい悪いの差って、脚本だなと思います。ndjcの出身者でも、例えば中野量太氏とか脚本のうまい監督は伸びていくわけです。
ですが、脚本はすぐ書けると思いこんでしまいがちです。脚本をきちんと勉強することは監督にとっていいことですし、シナリオ・センター出身の監督が活躍していることについて話すのは、面白いんじゃないかということで、このMCを引き受けました。
僕も最初ライターになるつもりはなくて、本当は監督になりたかった。黒澤明監督が、監督になるには脚本が書けなくてはいけないと言っていたので、シナリオ作家協会のシナリオ研究所に、浪人中に行ったんです。そこで教えていたのが新井一先生で、その繋がりでシナリオ・センターに入りました。
シナリオって、すごく大事です。お三方の作品もシナリオがうまく出来ている訳ですよ。
目黒君の『パンクしそうだ』はキャラクターが面白い。パンクやってたヤツと、彼と結婚しようとしている彼女のキャラクターがうまい。キャラクターがよく出来ているとドラマが進むんです。パンクというアイディアは、どこから出てきたの?
〇目黒さん:学生のころに遊びでバンドをやっていたので、バンド物とか、夢を諦められないとか、そういう話をずっと考えていて。2時間の映画コンクール用に、ゴーストライターの話を書いていて、コンクール出しても落ちて、また直して出してってことを繰り返していました。
で、その話のどこか30分を切り取るとしたら……と考えて出来たのが、あの話です。結婚相手の女性のほうが主人公で書いていたのですが、選出されてからプロットを書き直しました。
〇柏原さん:うまいなと思ったのは最後のところ。彼が仲間にあげようとしたギターを、彼女が取り戻すじゃない。あれ、バンド活動を認めたのかなと思ったら、「ミルク代ぐらいになるから」っていう落とし方がいい。
やっぱりシナリオやってないと書けないと思う。下手なヤツだと、「私、出来ちゃったの」とか妊娠したって直接言わせたりする。それにケツがいいと、作品ってよく見えるんだよ。プロのやりくちだね(笑)。
〇目黒さん:ラストカットで本当は、歩いて遠ざかっていくところをもっと長い尺で入れたくて、現場では200ミリの望遠レンズで撮っていました。でもラッシュでチェックしたら、遠ざかっていくうちにピントが外れてしまったと言われて、それで短く切ったんです。
〇柏原さん:変に引っ張るといやらしくなるから、あの終わり方のほうがいいんじゃないかな。
〇目黒さん:ずっと心残りだったので、そう言っていただけて、3年越しに救われました(笑)。