テーマ「25歳」
第20回テレビ朝日新人シナリオ大賞では、テレビドラマ部門は「サスペンス」、配信ドラマ部門は「25歳」と、部門別にテーマを設けて募集。2部門合わせて1078篇の応募があり、選考委員の井上由美子さん、岡田惠和さん、両沢和幸さんの3氏によって、大賞1作品、優秀賞2作品が決定しました。
応募した生徒さんから度々「25歳というテーマはすごく難しかった……」という感想を耳にしていたので、「このテーマで賞をとったのはどんな作品なんだろう?」と気になっているかたも多いのでは?
そこで、『カラハフッ!』で優秀賞を受賞された長島清美さん(大阪校作家集団所属)のコメントをご紹介。
『カラハフッ!』の主人公は、京都の百貨店に勤める温田ユウコ(25)。一風変わった性格が災いし、社内で孤立。同期の大賀聖人(25)だけが話し相手。そんなユウコの唯一の楽しみは、帰宅途中にある銭湯「燕の湯」に入ること。ひょんなことから、「燕の湯」の女将・五月巴(75)に頼まれて、風呂掃除を手伝うことになるが、巴の息子・武志(43)が銭湯を閉めたがっていることを知る――。
この作品をどんな風に書いたのか、どんなことを意識したのか、等々お聞きしましたので、脚本コンクールで賞をとりたいかたは参考にしてください。
なお、『月刊シナリオ教室 2020年11月号』(10月末発行)に、長島さんのインタビューと受賞作『カラハフッ!』のシナリオを掲載予定です。こちらのブログと併せてご覧ください。
「実際にその場の空気に触れるのは、やはり大事だなと実感」
――受賞作『カラハフッ!』について
〇長島さん:滋賀県に住む友達が、家のお風呂リフォーム工事で、たまたま銭湯へ行くはめになったんです。その時友達から「26歳の若い女の子が経営を継いで頑張ってはる銭湯があるねん」と聞き、何それ面白い!詳しく話聞かせて~と興味がわいたんです。
この銭湯のことを教えてくれた友達に仲介役になってもらい、若女将に電話をして取材をお願いしました。
滋賀県・石山駅近くにある「容輝湯」という大きな唐破風(寺院や玄関の屋根に見られる反転曲線の山形の破風)が目印の古い銭湯です。タイトルの『カラハフッ!』はここからきています。銭湯の番台で取材させてもらったのですが、実際にその場の空気に触れるのは、やはり大事だなと実感しましたね。
――「25歳」というテーマで書いて
〇長島さん:この物語の中で、温田ユウコ、大賀聖人、そして常連客の金田勝利の3人の25歳を出しています。でも最初にイメージが出来たのは太賀で、イメージキャストは大東駿介さんでした。
それぞれまったく異なった25歳ですが、その中で太賀は唯一普通の25歳ではないかと思います。一見おちゃらけたキャラですが、彼も一生懸命に生きているところを書きました。
特定のモデルはいません。でも、主人公にはやはり、少し影の部分があると良いと思うので、つねにそこは意識しています。ただし、いったん登場させたら、あまり意識しませんね。でも、どんどん勝手に個性的になっていってくれます。
――シナリオを書くときいつも意識していること
〇長島さん:ドラマはやはり、セリフが大事だと思います。説明臭くなく、サラッと言うのだけれど、なぜか心に沁みるようなセリフを心掛けています。
なので、日頃から、テレビ・音楽・映画・本・広告、なんでもピンとくる言葉があればメモします。セリフのストックを作ってあるので、その中からドラマのシーンに合うセリフを使います。
――今後の展望
〇長島さん:悲しいドラマにも一筋の笑いがあり、笑いの中にも切なさが残る。そういったものを書ければ。笑いは一番大事だと考えています。
また、普段の生活の中にこそドラマがあると思うので、山田洋次監督のような作品が生み出せたらと、目標だけは高く持っています(笑)。
テレビ朝日新人シナリオ大賞についてはこちらの記事も併せてご覧ください
・「どんな脚本が賞 をとるのか/第19回テレビ朝日新人シナリオ大賞にみる」
・「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞 映画部門・優秀賞受賞 川瀬太朗さん」