名ゼリフは独りでは歩けない
シナリオ・センター代表の小林です。そろそろ本格的な寒さになるとのことですが、北海道、大阪は、コロナ蔓延で自衛隊派遣を要請したとかで、困ったときの自衛隊頼み。
ありがたいことですが、昨今のお上の姿勢を見ると、戦う相手はコロナに留まっていただきたいと切に祈ります。
先週、三谷幸喜さんが新聞掲載しているエッセイ「三谷幸喜のありふれた生活」に名台詞の話しを描かれていました。
ちょっと抜粋すると「映画や演劇には名台詞というものがある。『カサブランカ』の『君の瞳に乾杯』とか『ハムレット』の「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」とか。(略)そもそも名台詞というのは、ストーリーの中で輝くもので、それだけを採り上げても理解不能な場合が多い。」
「名台詞にしろ、洒落た会話にしろ、最初から狙って書いてしまってはダメである。その部分だけ悪目立ちしてしまう。
ごく自然に登場人物たちの会話に散りばめられているからこそ、生きるのである。」
台詞(セリフ)がうまいライターがいいとプロデューサーはよくいわれますが、台詞は単体ではなんの魅力も出なくて、そのストーリー、キャラクターが魅力的に言わせるのです。
ようは、台詞のうまいライターというのは、シナリオがうまい人だということです。
まず、基本のキャラクターづくり、構成をしっかりと作って始めると自然と名台詞は生まれてくるのだろうと思います。
あずかりやさん~まぼろしチャーハン~
コロナ禍の今、私たちが強く求めているのは、いやコロナ禍じゃなくても昨今の不寛容な時代だからこそ欲しい。それは、「やさしさ」でしょうか。
まさに、やさしさに包まれて、このままずーっといられたらと思わせる小説ができました。
「猫弁」に引き続いて、大山淳子さんの「あずかりやさん」が帰ってきました。
「あずかりやさん~まぼろしチャーハン」(ポプラ社刊)
第一作を読まれた方はご存じのように、何でも預かる盲目の店主透を通して、あずかりやさんに1日100円で預けていく人たちのお話です。
ラブレター、ツキノワグマ、まぼろしチャーハン、高倉健の夢、文人木の5編に色々なあずかりやさんのお客様が登場します。
珍しいのは各話によって語り手が違う、ぼくだったり、保育園児だったり、電話機やカバン、盆栽だったりという、これまた大山淳子流、手の込みよう。
でも、そんな大山さんの構成のうまさや発想のすごさは、もうわかりきっていることで驚きもしません。
なにがいいかって、今作の「あずかりやさん」はことのほか気持ちをほぐしてくれる、やさしい、やさしい、あったかーい、暖かい物語ばかりなんです。
あずかりやさんに預けるものを通して、お客様たちのひととなりが、人間性が見える、人の本質はやさしいと感じさせてくれるからです。
とはいえ、いい人たちのお話しなんかではないのですが。
私が一番気に入ったのは、「高倉健の夢」。
ホームレスの高倉健、緒形拳、石原裕次郎の3人がカバンの中に、風呂付アパートに住むための資金をためていて、他人に盗られないようにあずかりやさんにカバンを預けるのです。ホームレスの3人のこのお話を読んだら、お役所の方々の想像力が少しは広がるんじゃないかと、ホームレスへの対応がちょっと変わるんじゃないかと・・・。
ま、ともかく、心がちょっとささくれ立ちがちな12月、温泉が代わりに読んでみて下さい。芯(心)から温まります。
「あずかりやさん」面白いキャンペーンしています。
あ、これは物語ではありません。本当に「あなたもあずかりやさんにあずけてみようキャンペーン」が行われているんです。
あなたが預けたいものをひとつ出してください。選考で選ばれた「あずけたいもの」が次回に登場します。
応募方法は、はがきまたはTwitterでできます。
はがきの場合は、①あなたが預かり屋さんに預けたいもの1つ②郵便番号③儒所④氏名⑤年齢⑥職業⑦電話番号
宛先102-8519 東京都千代田区麹町4-2-6㈱ポプラ社文芸編集部「あずかりやさんにあずけてみよう!」キャンペーン係
Twitterは、ポプラ社文芸編集部の公式Twitterアカウント(@poplar_bungei)をフォローして、ハッシュタブ「#あずけたい」をつけて、預けたいものを一つ投稿してください。
締め切りは2021年2月28日 当選発表は次回作で。
この選考、何本選ぶのかもぜーんぶ大山淳子先生の裁量次第だそうです。
どんなお題を突きつけたら、どんな話にして返してくるんでしょう。大山淳子の腕だめしに参加してみましょう。
私も預けます。う~~~ん、大山さんを悩ませるあずかりものとは~?イジワルしたいのかって?いえいえ、創作者への心からの応援です。(笑)