第32回フジテレビヤングシナリオ大賞。
フジテレビで行われた受賞者記者会見の模様をご紹介。
応募総数1567編(前回1733編)の中から、的場友見さん(本科修了)の『サロガシー』が大賞に決定。
佳作は、湯田美帆さん(作家集団)の『東京バナナ』、横尾千智さん(本科修了)の『ふぁってん!』、『男は背中を語る』山﨑 力さん(元研修科)の3編が受賞。
受賞者すべてシナリオ・センター在籍生・出身生という嬉しい結果となりました。
応募されたかたは「受賞の決め手って何だろう?」と気になっているのではないでしょうか。
そこで、このブログでは、受賞の決め手が分かる【選考理由】と、作品に込めた想いや心掛けていることが分かる【会見時の受賞コメント】をご紹介。
選考理由に注目していただきたいのは勿論ですが、プラス、特に意識していただきたいのが、受賞コメントにある【自分の強み】です。受賞者の皆さんは、簡潔にお話しされていました。
もしアナタが「強みは何ですか?」と聞かれたら、すぐに答えられますか?
この問いに瞬時に回答できるかどうかも、受賞するためのポイントかもしれません。
「分からないな……」というかたは、この機会に考えてみてください。
そして、その強みを最大限に活かした脚本を書いて、次回臨んでください。
なお、『月刊シナリオ教室 2021年2月号』(1月末発行)には、受賞4作品のシナリオと受賞者インタビュー等を掲載しますので、こちらのブログと併せてご覧ください。
大賞:『サロガシー』的場友見さん
【内容】
江島環(28)は、ゲイである兄のために、代理母(=サロガシー)として妊娠・出産することを決意する。しかし、兄がゲイであることを知らなかった両親は取り乱し、環の決意も全く理解しようとしない――。
【選考理由】
代理出産、LGBTなどセンシティブな題材だが、この作品の真骨頂は登場人物たちの人間的魅力ではないか。特別な人たちではなく、どこにでもいる生活者たちの物語だと思わす人物像を丁寧に描き出し、飽きさせずに展開していく構成も巧みである。医療制度、法律、社会通念、倫理観……様々な問題に真摯に向き合う作者の姿勢も窺える。女性審査員の高評価が目立って高かった。
【受賞コメント】
〇的場さん:今年は、ドラマのチカラや素晴らしさを実感されたかたが特に多い年だったんじゃないかなと思っています。そのような年にこういった素晴らしい賞をいただけたことを本当に嬉しく思います。
この作品は、友人とのランチ中の会話から、なんとなくこういうこともあるんだなというのを感じて、そこが発想の源になっています。「あ、なんか面白いな」と思って、そこからバッと書いた感じです。プロットや箱書きも書かず、2日ぐらいで書きました。
賞をとるのが目的というよりは、脚本を書いてご飯を食べていけるようになりたいと思っているので、何か強みがないと、と考えていて。“センス”ってちょっとぼんやりしていてよく分からないけど、“早さ”って誰が見ても分かるじゃないですか。なので、何かチャンスをいただけたらすぐにレスポンスを返せるように、“早さ”はけっこう意識しています。
フジテレビヤングシナリオ大賞は今回で2回目の挑戦です。シナリオを書き始めたのは2年くらい前。
シナリオ・センターに通っていたとき、先生に「見落とされそうな社会の隙間みたいな部分を引っ張り出して、問題提起するような作品が多いね」と言っていただいたことがありました。意識的にそうしたわけではないんですけど、今回の作品でもそうかなと思っていて。そういうところも自分の強みというか、自分が書きたいところかなと思います。
これからも、人を丁寧に描いていきたいです。「こういう人が良くて、こういう人が悪い」みたいな、善し悪しのジャッジはしたくないので、フラットな目線で、「こういう人がいるんだよ」という他己紹介のような気持ちで、これからも書いていきたいなと思っています。
佳作:『東京バナナ』湯田美帆さん
【内容】
大阪生まれ・喘息もちの公太(11)は、同級生の将にネタ帳を読まれ、コンビを組もうと持ち掛けられる。そんな矢先、公太の父の東京への転勤が決まる――。
【選考理由】
勢い。ブレない強さ。2人の少年を主人公に、その漲るパワーがそのまま作品の力となり一気に読ませる。強引な展開や拙い表現なども散見するが、それを補って余りある熱量が魅力。この少年たちを見てみたいと思わすところが作者の才能である。
なお、審査委員長の澤田鎌作さん(フジテレビ編成制作局 第一制作室 ゼネラルディレクター)は「シンプルな構成で一気にその世界に読む者を引きずり込む力があった。大賞受賞作と最後までどちらを推すか意見が分かれた」とした。
【受賞コメント】
〇湯田さん:この作品は「夢は叶う、仲間がいれば」といった内容なんですが、今回、私自身がそれをすごく体感したなと思いまして。と言いますのも、本当に色々な仲間に助けてもらって、ここに立つことができました。その仲間にまずは感謝を述べたいと思います。
今回は、着想から1ヶ月くらいで書きました。私自身、北関東出身なんですが、オール関西弁の話になっていまして、そのあたりは関西ネイティブの友達に教えてもらったり、あと、お笑いの掛け合いが入っているんですけど、そこは元芸人の友達に色々聞いてアドバイスをもらったりしました。
2019年からシナリオ・センターに通って脚本を書き始めました。強みになるか分からないんですけど、「自分って永遠の中学生みたいな考えをしているな」って思っていて。シナリオ・センターの課題でも、“本気でアホなことをやる”みたいなものを書いていて、発表したときにみんなを笑わせることにすごく力を入れていました。だから、私の作風はコメディだと思っています。
私には「落ち込んでいるときにこのDVDを観ると必ずテンションが上がる!」というのがあって、そういうふうに観ただけでテンションが上がるような作品を作ることが目標です。お茶の間に笑いや癒しを届けられる、そんな脚本家を目指してまいります。
佳作:『ふぁってん!』横尾千智さん
【内容】
夫の世話を甲斐甲斐しく焼く人見真希(42)には秘密がある。それは、日常でたまる夫への鬱憤を陰で晴らすことだった。そんな真希の家の隣に、愛想の悪い女・小桜奏が引っ越してくる――。
【選考理由】
日常に潜むざらっとした狂気。それを力感なく描くところに才能を感じさせる。舞台となる狭い空間で人物たちの距離感の捉え方が的確で、作者の頭の中でそれぞれが映像として生きていることが伝わる。
【受賞コメント】
〇横尾さん:大学最後の年にこういった賞をいただけて、コンクールに落ちまくっていた自分にちょっとご褒美をもらえたなと思っています。
主人公が主婦なので、主婦の方や子育てをしている方のツイートを読み漁ったり、ちょっと“気持ち”の参考にさせていただきました。あと、家の中でのシーンがとっても多いので、実際に見取り図を書いて、それに似た物件をググったりしました。
シナリオを書き始めたのは、大学に入った年。元々、大学に入って独り暮らしをはじめたら書こうと思っていて、アルバイトで貯めたお金で、親にも内緒でシナリオ・センターに通いました。半年で基礎課程を修了してからずっとコンクールに出していて、数えてみたら今回受賞した作品は111本目でした。
強みは「アウトプットする・出力する」ところかなと思っています。「頭の中にあることをカタチにして、人の意見をもらってみなきゃ」と思っていたので、シナリオ・センターの課題も毎週朝4時に起きて、大学に行く前の3時間で書いたり、「毎週絶対出そう!」と気合いをもって書いていました。
私自身、ものすごく雑食でミーハーなので、ドラマも映画もアニメーションも書いてみたいという想いがあります。これから先、何か書く機会があればいいなと思っています。
佳作:『男は背中を語る』山﨑 力さん
【内容】
痴漢に間違われた眞野(24)は、偶然通りかかった初老の男たち・塩釜と前薗に助けられる。そして、2人に誘われ、女子大生の背中を見てひたすら妄想を言い合う、変態的な遊びに参加するようになる――。
【選考理由】
短いセリフと掛け合いのリズム。これを徹底し繰り返していく構成のうまさ。テーマが先行ではなく、スタイルで勝負している割り切りに、作者の自信とストーリーを破綻させない力量を感じさせる。
【受賞コメント】
〇山﨑さん:テーマとかあまり関係なく書いたものがこうやって評価されて、フジテレビさんの懐の深さをすごく感じました。リズム感やテンポを評価していただいたので、それを強みにしていこうと思っています。
シナリオを書き始めたのは5年くらい前になります。たまたま脚本を目にしたことがあって、単純に軽い気持ちで「これ自分でも書けるんじゃないかな」と思ってしまって。全然そんなことはなかったんですけど。
仕事の合間に書いて、コンク―ルに応募していました。年間5本か6本ぐらい書いているので、これまで30本くらいは書いているかなと思います。
たぶん、「面白い」というカタチが人によって、立場や状況によって違うと思うんですけど、とにかく、「面白い」と思ってもらえる本を書いていきたいし、そういう脚本家になりたいです。いま初めてスタートラインに立てたので、今後、頑張って食らいついていこうと思っています。
* * * * *
いかがでしたか?
「そっか、こういう人たちだから受賞できたんだな」と思われたのでは?
また、選考理由から、今回の作品はどれも「キャラクター設定」と「構成」の評価が高かったことにも気づかれたのではないでしょうか?
例えば、<登場人物たちの人間的魅力><飽きさせずに展開していく構成><シンプルな構成で一気に引きずり込む><人物たちの距離感の捉え方が的確>など、「審査員はこういうところをみているんだな」というのがよく分かりますよね。
こうして分析してみると、自分が応募した作品に何が足りなかったのかが見えてきます。
このブログでの“収穫”を是非、脚本作りに活かしていただければと思います!
第32回フジテレビヤングシナリオ大賞 応募状況
・平均年齢:33.6歳(前回34.6歳)
・最年少応募者:13歳(前回13歳)
・最年長応募者:72歳(前回69歳)
脚本コンクールで賞をとりたいかたはこちらのブログも!
▼「第31回フジテレビヤングシナリオ大賞にみる/賞をとる作品とは?」
▼「第30回フジテレビヤングシナリオ大賞にみる/どんな脚本が賞をとるのか」
▼「第29回フジテレビヤングシナリオ大賞にみる/審査のポイントと受賞者のシナリオ勉強法」
▼「脚本 コンクールで最終選考に残るためにはプロデューサー視点」
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