世も末で
シナリオ・センター代表の小林です。天気が良くても怪しい毎日が続く東京です。
今の悩みは、緊急事態宣言が出たら、授業をどうするかということです。
4月から通学に戻して、とはいえ薄氷を踏む想いで、人数の多いクラスはハイブリッド(通学とzoomの併用)で、通学のみのクラスもすべて一人掛け机つき椅子で、密にならないように参加していただいていますが、皆さんとても嬉しそう。
講座は、全部ハイブリッドで行っているのですが、今までは受講者は通学2割、オンライン8割でしたが、4月シナリオ8週間講座は、通学4割、オンライン6割とリアルにおいでくださる方が増えてきていました。
もちろん、帰りに何か飲んだり食べたりできるわけではありませんし、クラスでも離れてお話ししていただいているのですが、普段以上ににこやかなお顔をされているのが印象的です。
みんなコミュニケーションに飢えているのだなと思います。
お店が閉まった後でも、コンビニの周りや、公園、駅前などにたむろして飲んでいる人たちがニュースを賑やかしていますが、気持ちはわかります。
当たり前だと思っていた人と接することがこんなに困難になるなんて、思いもしませんでしたから、仕方がないことだとは思います。
ただ、他人に感染させるかもしれないという視点が抜けていることが気にかかります。
気持ちは、世界中の人が同じです。
他人への影響を考えて、我慢すべきところは我慢するしか、コロナに立ち向かう道はなさそうです。
どんな緊急事態宣言が出るのかはわかりませんが、出されたところで、先も見えない、対処されている様子も見えない出し方をしていては、何の意味も持ちません。
今と同じことが続くでしょうし、より悪化するかもしれません。
全ての人が「なるほど、こうすることが一番いいのなら仕方がないね」と思えるようになしっかりと具体的な方策とワクチンのご用意を願わずにはいられません。
お江戸やすらぎ飯
養生は大事です。薬だけが身体や心を治すわけではありません。
古くから食養生というものがあります。
コロナ禍では、案外とこの食養生が身体だけでなく心も癒してくれるかもしれません。
江戸時代、漢方医学の多紀家で学ぶ佐保も、シリーズ3巻目で17歳になりました。
出身ライター鷹井伶さんの「お江戸やすらぎ飯」(角川文庫刊)の3巻目「初恋」。
吉原育ちの孤児と思われていた佐保は、大火に再びあったことで記憶が戻り、父親とも再会することができました。
なんと武家で本草学の権威佐島平三郎の娘でした。
廓の孤児だと思われていた娘が武家の有名な医者の娘と知って、周囲は戸惑いますが、佐保は変わらず多紀家や医療館の食事の支度や下働きなどをしながら、これまで通り漢方医学の勉強に勤しむのでした。
医学館の賄を仕切っている右腕を失った一回り上の田辺耕三郎に助けられながら勉学に励む佐保は、耕三郎のやさしさに惹かれていくのですが、耕三郎は暗い過去を背負っており、それが、ある日思いがけない形でわかってきます。
佐保をとり向く人々の生き様や恋模様の中で、17歳の佐保の切ない初恋が描かれています。
相変わらず鷹井さんの「お江戸やすらぎ飯」は、気持ちはもちろんやすらぎますが、心がほっこりするような料理の数々に癒しは倍増。
最後に、小説の中で出てきた料理のレシピが紹介され、早速作ってみたくなります。
ところがです。ちょっと残念なことに、お話が秋から冬にかけてのお話しなので、今の季節では料理の素材が集められないものも。
次作以降、これからは発売に合わせて、季節と料理を作ってくださると嬉しいです。お願いします。
この小説のすごさは、多紀家という漢方医学の大元を使って、料理で身体も心も癒してくれるのですが、ただの癒しではなく登場人物の心の変化の描き方が見事で、知らず知らずの裡に感情移入してしまいます。
キャラクターがしっかりしているので、ドラマにもうってつけと思います。
「武士の家計簿」のように、時代劇の激しい立ち回りはないけれど、見せ場がいっぱいある、泣かされるドラマになると思いますが、プロデューサーの方いかがでしょう。。