==企業活動の幅が広がったり、プロジェクトの数が増えてくると、「何のための取り組みなのか」という目的が分かりづらくなってきませんか?そんなときは、今回ご紹介する方法で、プロジェクトを表す「フレーズ」を作ってみてください==
オーガニック料理教室のワクワクワークさんは、食に関する様々な活動をされており、その取り組みは広がり続けています。そこで一旦、全ての活動を整理したいと、代表の菅野のなさんから弊社の新井にご相談いただきました。
そこで、まずは全ての取り組みを目的別に大きく4つに分けていただきました。
①未来に残すための取り組み
②毎日のごはん(教室運営)
③伝統(価値の再発見)
④食を伝える人の育成(講師養成)
次に、この4つの目的を表す「フレーズ」を作っていただきます。
このフレーズがあれば、自分たちの活動の方向性や取り組む姿勢がブレていないかを確認する「チェックポイント」にもなり、広報活動でもキャッチフレーズとして使うことができます。
では、どのようにフレーズを作ったのか、広報の齋藤がお届けします。
フレーズを作るときは「ことば」から離れる
――ワクワクワークさんでは2019年、新井による「核となることば探しワークショップ」を実施。企業理念フレーズ『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』が生まれました(※)。
〇新井
『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』は、抽象度が高い言葉です。木に例えるなら、“幹”となるフレーズです。
ワクワクワークさんにはこの“幹フレーズ”に結びつくプロジェクトが沢山ありますよね。「おにぎりキャラバン」や「よっといでマルシェ」とか。こういった具体的な取り組みは例えるなら“花”です。
で、この抽象的な理念の“幹”と、具体的な取り組みの“花”の間を繋ぐ、“枝”となるフレーズを今回は考えていただきます。
▼理念=「幹」
▼プロジェクト=「枝」←今回作るのはココのフレーズ
▼サービス(具体的な取り組み)=「花」
〇新井
では「①未来に残すための取り組み」のフレーズから。気を付けていただきたいのは、「ことば」で考えないこと。最後に「ことば」に戻るので安心してください。
というのは、コピーライターではないので、「ことば」で考えていくとどうしてもカッコイイことばにしようとして、結果、カッコ良さそうだけどよく分からない感じになるからです。これは絶対にやめた方がいいですよ。
――頷く皆さん。
〇新井
まずはイラストを描きましょう。「このプロジェクトがもっとこんなふうになったらステキだな」「このプロジェクトはこういう感じ」というシーンを切り取ってください。
〇新井
次に、そのイラストのシナリオを書いてください。例えば「○台所」のように場所も書いてくださいね。書けたら「このイラストはこういうシーンです」と発表していただきます。
――皆さんが描いてくれたのは、
■場所:未来の台所力育成!子ども料理教室の会場
・子どもたちのキラキラした様々な表情(喜びや驚きや自信)を講師たちが見守っているシーン
・小学生 最終回のレッスンで子ども達が今までの経験から自信をもって作っているシーン
・幼児クラスで子どもたちが親に向けてごはんを作り、一緒に食べているシーン
・味噌づくりを体験し、キラキラ笑顔の子ども達が達成感を得ているシーン
■場所:清川村・横田農場
自然の中で自然の恵みをもらうことを子どもたちが体験しているシーン
■場所:よっといでマルシェの会場
沢山の方々が来て、野菜や果物を買ってくれているシーン
■場所:参加型ワークショップ 「おにぎりキャラバンオンライン」
参加者の方々が体験しているシーン
■場所:キッチン
小学生クラスオンラインで、伝統食や大切にしたい食について話しているシーン
■場所:ある男の子の食卓
未来の台所力育成講座を受講した子どもがこういう未来に繋がっていればいいな、という想像シーン
〇新井
このプリントを壁に貼って、皆さんの考え方の“根底”を探っていただきます。イラストとシナリオを見て、「このシーンを選んだ理由、分かる!」「自分が選んだシーンと共通している!」と感じるところはどこかを考えてください。
〇新井
で、そのキーワードを付箋に書いて机に貼ってください。
――皆さんが考えたキーワードがこちら
・キラキラ
・子どもたちの笑顔
・子どもたちへ伝える
・自信を持って作っている
・達成感
・満足感
・正解を教えるのではなくて自分で考える
・教える人と参加する人との境界線がない
・沢山の人に届ける
・楽しい体験を持ち帰る
・人との関わり
・相手を思う
・大切に思う気持ち
・一人ではない。つながり
・多世代
・オンラインのその先
〇新井
沢山出ましたね。では、このキーワードを使ってフレーズを作りましょう。まずは1回戦!
――スタッフの皆さん、「前回もそうだったけど、どうしてもカッコイイ文章にしようとしちゃう……」とドキドキ。
〇新井
そうそう、かっこつけようとしないでくださいね。付箋に書いて机に貼ってください。
――皆さんが考えたフレーズがこちら。
・達成感の先にあるみんなの笑顔
・広がる繋がる達成感
・みんなが楽しく記憶に残る食体験
・おいしさとたのしい体験がつくる私のキラキラ
・キラキラ体験を持ち帰る
・思いやりの世界をごはんを通して広げる
・みんなで楽しいわくわく体験
・未来に伝えたい食の昔からの体験
・思いとつながりでうまれるキラキラ笑顔
・多世代でごはんを作ってキラキラ楽しむ
〇新井
皆さん共通して「やって終わりじゃない」というところをイメージされているようですね。それから「体験」「キラキラ」したことで「未来に繋がっていく」という感じもありますね。
これを踏まえて、2回戦にいきますよ。例えば、新しい講師が来たときに「このプロジェクトはこのためにやっているんだよ」というのが伝わるようなフレーズを考えてください。「ことば」に行き詰ったら、「イラスト」に戻ってくださいね。
〇のなさん
ワクワクワークだから言えることを、このイラストから“くり抜いて”、ことばにする感じですよね。ワクワクワークならではのフレーズ……アタマが煙を上げ始めました(笑)。
――新井が見守る中、2回戦で考えていただいたフレーズがこちら
・たのしい食の体験からたくましく生きる力を育てる
・その場限りで終わらない食のキラキラ体験を広げる
・おいしい たのしい体験がつくる未来のキラキラ
・わくわくのおいしい体験を毎日の食卓へ
・みんなが笑顔になるおいしいとたのしいを未来に
・つながって心に残る食体験
・ここだけで終わらないつながるワクワク
・思いやりの世界をごはんを通して広げる
〇新井
いいですね!でも、もっと削ってください。「幹」となる理念『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』で言っていることは省いていいです。「このプロジェクトだったら何だっけ?」というフレーズを考えましょう。
――すると、シーン発表の時からこれまでずっと出ていたワード「キラキラ」に、みなさんが注目し始めました。
〇のなさん
「キラキラ」はフレーズに入れたい。『ここだけでは終わらないキラキラを……』。この後に続くのは……う~ん……
--そこで新井が「参加者の方々に、どうしてもらいたいですか? 自分たちがどうしたいか、ではなくて」と質問すると、スタッフの方から「持ち帰ってほしい」との声が!
〇のなさん
それ!「ここだけでは終わらないキラキラを持ち帰る」ですね!
〇新井
いいですね! 「①未来に残すための取り組み」を表しているし、このプロジェクトが導く “その先”という感じも出ていますね。
――こうして1つ目のフレーズが無事産まれました。なお、この研修の後、皆さんによってもっとブラッシュアップされ、「ここだけで終わらないキラキラを持ち帰りその先へ続くものを作る。」に決定!
“かわいい四つ子”が誕生
――次のフレーズを考える前にちょっと休憩。お昼ご飯を用意していただきました!
――ランチタイムの後は、先ほどと同じ要領で残り3つのフレーズも考えていきます。
――おやつタイムも挟みながら、
――残り3つのフレーズも無事決定!それでは、全4つのフレーズをご紹介。
①未来に残すための取り組み
『ここだけで終わらないキラキラを持ち帰りその先へ続くものを作る。』
②毎日のごはん(教室運営)
『料理を通してシンプルな豊さに気づく場所。』
③伝統(価値の再発見)
『食文化の価値を再発見し、私たちらしく届ける。』
④食を伝える人の育成(講師養成)
『伝えたい思いが繋がる、広がる、深まる場。』
〇のなさん
かわいい四つ子を産んだ気持ち。これから大事に使っていきます!
まとめ:枝フレーズはチェックポイントや広報で使える
――いかがでしたか?いきなり「ことば」で考えていくより、イラストとシナリオから発想したほうが、よりイメージが浮かぶ「ことば」が生まれる、ということがお分かりいただけたかと思います。最後に、新井は“枝フレーズ”の使い方を皆さんに紹介しました。
〇新井
今回生まれた“枝フレーズ”には、それぞれの取り組みを何のためにやっているのかという、目的が表現されています。ですので、自分たちの活動の方向性や取り組む姿勢がブレていないかを確認する「チェックポイント」になります。
また、言い回しを少し変える必要があるかもしれませんが、例えばHPなどの“広報活動”にも使えます。
こういう風に使えるのは、「ことば」から生まれたフレーズではないからです。皆さんには最初、イラストとシナリオを書いてもらい、具体的なシーンをイメージしていただきましたよね。で、そこからフレーズを考えていただいたので、シナリオのト書でいう『動作』につながることばや、シナリオの柱である『場所』につながることばが自然と出るようになったわけです。だから、この枝フレーズからは具体的なイメージが浮かびます。
それでは、理念を表す“幹フレーズ”と、プロジェクトの目的を表す“枝フレーズ”に沿った、“花(サービス)”をこれからも沢山、“咲かし”続けてください!
※前回、企業理念フレーズ『毎日のごはんから私のしあわせを見つける。』が生まれた模様はこちらで。