涙雨
シナリオ・センター代表の小林です。困りました、東京感染者過去最多2848人となりました。埼玉も大阪も大増加、千葉は緊急事態宣言を要請しました。
すわオリンピック中止かという声に、菅首相は、「人流が減っているから大丈夫、中止はしない」と。
医療崩壊が起きない保証はあるのでしょうか。
黒い雨訴訟で、勝訴した広島の住民84名の方へ、国はやっと上告を断念し、今後同じような方にも手を差し伸べると菅首相が断言されたので、お上もようやく人の痛みがわかってきたかと思っていた矢先に、この言葉、やっぱり変わらないんですね。
ま、ひとつでもいい方向に向かったことへは感謝したいですが。
高校生の頃でしょうか、井伏鱒二さんの「黒い雨」を読んで、衝撃を受けた覚えがあります。
76年経ってもまだ被爆者手帳ひとつ出してもらえなかった方々の想いはいかほどのものでしょうか。
私たちはわからなくても、被爆者の方々の想いや来し方を想像しなくてはいけないと思います。
その想像力がないから、被爆者へのいわれなき中傷はコロナ患者のそれと同じで、人間の心の浅ましさはいつまでたっても変われないのです。
想像力は「他人を想う心」と瀬戸内寂聴さんはおっしゃっています。
こういう時代だからこそ、想像力を広げていきましょう。
猫弁と鉄の女
こんな人たちばかりだったら、世の中そうそう悪くは動かない気がしますが、いい人って、巷の片隅で生きているんですよね。
それでも、小さな力はいつか大きな力になると信じたい。信じさせてくれる小説がここにあります。
「猫弁」第2シーズン2作目が出ました。出身ライター大山淳子さんのベストセラー小説です。
「猫弁と鉄の女」(講談社刊)
相も変わらず、猫弁こと百瀬太郎は、ペット問題に明け暮れています。
今回はカメレオンとサモエド、ニホンザルが登場。猫は長老の猫とこちらは多彩です。
たまたま見かけ迷子のサモエドを一時預かりしてくれる老婦人トモエと出会った百瀬太郎はサポートすることに。
もう一人の主人公は二世議員の宇野勝子さん。
政党に属さず国民のために身を粉にして働き、総理に物申すことも多く、与党でもないのに大臣になって国民に愛された鉄の男と呼ばれた宇野勝三の一人娘。
彼女は東京の花粉一掃を公約に、多摩のもえぎ村の杉林伐採を掲げて選挙に出るのだが、そこには杉林の守り神と崇められる神出鬼没の木こり森林蔵が立ちはだかっていた。
カメレオンが縁で勝子の仕事を手伝うことになった百瀬だったが・・・。
婚約者の大福亜子さん、出産を控えた亜子さんの後輩春美、前回合格詐欺にあった浪人中の正水直、事務所の野呂さん、七重さん、獣医のまことさん、百瀬のお母さんは、もちろん健在ですが、またまた異色のキャラクターが素晴らしい。
第二主人公の宇野勝子、秘書の佐々木、サモエドが縁の小高トモエ、イケメンの若きもえぎ村の村長、みなさんがまたいいキャラ、いい味を出しちゃっているんです。
縦横無尽に登場人物たちが交差して、主人公百瀬太郎は、どうなるのかと思いながらお話は大きく展開していき、ほこっと心温まります。
百瀬は、面会に行った服役中のお母さんに訊ねられます。
「法律は好き?」
「法律は守らねばならないもの?」
「法を守らなければいけないのは」
「為政者」
「そうです。法は民をしばるものではない。為政者の暴挙を許さぬためにあります。
民は為政者の支配されがちです。
だから、為政者をしばるものが必要です。それが法です。
ですから三権は分立しなければならないし、法は民を守るものだし、そうあらねばならないと思っています。」
「猫弁」は健在です。
しかもやっと大福亜子さんと百瀬の仲が・・・待ちに待っていた展開に?、おう、そうきたかと・・・内緒。(笑)
なんとこの小説は、研修科の課題15「男と女」で描いた20枚シナリオが元なのだそうです。
木こりと女政治家のお話しだったとか。
キャラクターってずーっと生きていくんです。だから、ストーリーはいくつでも生まれる。
20枚シナリオの課題、ちゃんと描きましょう。ポスト大山淳子へ!