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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

大事なところは

天下小僧壱之助~五宝争奪~(ハヤカワ時代ミステリ文庫刊)

環境づくり

シナリオ・センター代表の小林です。12月も半ばになり、なんだか慌ただしい感じです。
シナリオ・センターは、いつも冬休みが長いので喜んでもらえると思いきや、長いとその分終わりと初まりがめちゃくちゃ忙しくなるので、スタッフは、あまり休みたがりません。
受講生の方々が喜んでくださること、書き続けてくださることへの想いが半端ないのできめ細やかな対応を考え、実践しているのです。スタッフそれぞれが、シナリオ・センターのポリシーをしっかりと理解し、自分の想いとリンクさせてくれています。
人の想いや考え方は色々ですが、これもある意味、環境がなせる業なのかとも思います。

前にご紹介した「僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の著者ブレイディみかこさんのイギリスの若者の話を読んで、環境というのは大事なことだとしみじみ思いました。
イギリスのカレッジは生徒が科目を選択するので、学校見学時に各教科の説明を受けます。
コロナになってから、どのカレッジでも一番人気は政治の教室になったとか。
「休校や入試方法の変更など、これほど10代の子供たちが政治に未来を左右された時期はありません。だから政治について考えるようになったのでしょう」と。
あるカレッジでは、与野党の人気投票は、どちらにも票がほとんどなく、誰かが書いた「自分自身の党」に票にたくさん入っていたといいます。
「若者たちが特定の政党に追従しない、自分自身を核において政治を考えるという宣言ともとれる。
コロナ禍に左右された10代はもはやカリスマティックな指導者や政党に何とかしてもらうのではなく『自分自身でやってやる』という境地に達しているのではなかろうか。」と述べていらっしゃいました。

保守を選ぶ、政治に関心がない日本の若者とはずいぶん違います。
教育のあり方が違うからでしょうが、大事なのは環境。
ちゃんと考える環境を作っていないから、自分たちが社会を作るのだとは思わないのでしょうね。
それぞれがきちんと自分で想い、考え、伝えられるような環境づくりをしたいものです。

天下小僧壱之助

出身作家の鷹井伶さんの新作がでました。
今までとは一味違う怪盗が主人公の「天下小僧壱之助 五宝争奪」(ハヤカワ時代ミステリ文庫刊)
鷹井さん、子どものころから憧れの「怪盗ルパン」をイメージして書かれたそうです。

無役の御家人壱之助は、女にも化ける華麗な義賊天下小僧。狙うは、強欲な金持ちだけ。
金持ちの隠居が花見がてらに、幇間と芸者を連れていい気持で戻ってくる・・・。
気が付くと金蔵の倉が開いており、あれほど詰まっていた千両箱も書画・骨董の類も消え失せている。
のっけに見事な盗みのテクニックを見せて、天下小僧一味の手管、キャラクターをつぶさに紹介してしまうところはさすがです。

これをそろえれば天下がとれるという五色の宝。
水戸の大天狗と呼ばれる水戸斉昭公の命で五色の宝「義経の白珠の弓矢」「信長の髑髏黒水晶」「紅玉淀殿の涙」「独眼竜虎目石」「天草四郎の血流し翡翠観音」を探しだし、手に入れるのですが、この宝に魅せられた美人盗賊との手練手管の応酬など火付け改めとの友情などワクワクします。
なにより面白いのは、斉昭公に渡してめでたしめでたしのラストではなく、大どんでん返しが待っています。
アルセーヌルパンもびっくりの結末をお楽しみください。
この鮮やか切り口、きっとシリーズになります。

ただのかっこいい義賊ではない主人公の壱之助の魅力もさることながら、やはりそれを取り巻くキャラクターがとてもよく、盗賊とは知らずに恋心を寄せる千与、壱之助を敵と狙う美人盗賊のお蘭とか彩りも鮮やかです。
また、鷹井さんは、きちんと歴史の行間から歴史上人物のャラクターを押さえており、エンタテイメントをより魅力的にしています。
時代小説の面白さをお楽しみください。

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