シナリオ・センターのゼミの課題は「20枚シナリオ」です。テーマに沿って、ペラ20枚(200字詰め原稿用紙20枚)のシナリオを何本も書きます。そのため、「短いものばかり書いていても意味がないのでは?」「長編を書けるようになるの?」と不安に思うかたもいらっしゃるかもしれません。こういった不安を解消できるのが今回ご紹介するお話です。
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シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
20枚シナリオは実践のための手段
長いものでないとシナリオではないと思う人は、心のどこかで、
剣道なら真剣でなければ、
ボクシングならリングの上でなければ、
絵なら油絵でなければ、
野球なら試合でなければ、
“そのものではない”、と考えているのではないでしょうか。
いま私が皆様にやっていただきたいのは、
剣道なら竹刀で防具をつけて稽古することだし、
ボクシングならジムで力をつけることだし、
絵なら何枚も何枚もデッサンを描くこと、なのです。
いい作品を作るためには、充分な習練が先
こんなことがありました。ある男が私のところに250枚のシナリオを持ってきて、読んで批評してくれというのです。それはこんな内容でした。
愛し合っている太郎と花子が喫茶店で会って、結婚しようといいます。そこで花子は「私は母に言うわ」、太郎も「僕、父に頼むよ」となり、太郎はその晩、父に花子と結婚したい旨を打ち明けます。すると父は喜んで、課長に仲人を頼みます。すると課長も喜んで……220枚目に結婚式ということになり、250枚で めでたしめでたしというお話です。
冗談じゃありませんよ。こんなもの読まされる者の身にもなってごらんなさい。書いた当人はシナリオだと思っているのですが、シナリオ以前の問題です。全編に対立がありません。それに、もっともつまらない2人ずつの芝居であるという点も問題です。
ボクシングで言えば、殴り方を知らないといったところです。絵を描くことで言えば、いきなり油絵を描き始めてしまうようなものです。油絵を描く前に、画家がどれほどクロッキーをしたり、デッサンを描いたりしているか。充分な練習をしていないから、こういうものを書いて「シナリオを書いた」と思ってしまうのです。
真剣勝負のためには、いい芸術品を作るためには、充分な習練が先だと考えています。実作するには、常に考え、常にそれを表現する行動をとるしかないのです。つまり、運動の時のような条件反射にまで行ったときに、本当のインスピレーションが、センスが、技術の形を借りて形象するのです。
出典:『月刊シナリオ教室』1984年9月号「20枚シナリオはデッサンである」より/2020年8月号「新井一.com」
★次回3月8日に更新予定です★
※20枚シナリオついてはこちらの記事もご覧ください。
▼執筆 初心者 向け練習法「20枚シナリオ」
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
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