「国語が嫌い・苦手」という小学生は少なくないようで、それに加えて、保護者の中にも「学生時代は国語が大嫌いだった」という方がいらっしゃるようです。
そして、子どもでも大人でも、“国語嫌いな人”からは「文章を考えたり書くのが苦手」という声をよく耳にします。でも、そんな人でもスラスラと文章が書けるようになる克服法があります。それがシナリオです。
「いやだから、文章を考えるのが嫌いなんだって!」と思ったそこのアナタ。うまい文章を考える必要はありません。登場人物ならではのセリフや動作を書けばいいのです。そうやって書いていくうちに文章に対する抵抗感が和らぎますよ。
その実例として、足立区東和地域学習センターさんで実施した「シナリオを書こう!~面白い物語の作り方~」(小学生対象)の模様を広報・齋藤がご紹介します。
=今回の概要==============
・サービス名:「シナリオをかいてみよう!」
・目的:物語を書いてみる
・対象:足立区地域の小学生
・時間:1・2年生向け60分、3・4・5・6年生向け90分
キッズシナリオの詳細 https://sites.google.com/view/kids-scenariocenter/home
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小学1・2年生の部:国語があんまり得意じゃない子もスラスラ
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担当するのはシナリオ・センターの新井。今回は「小学1・2年生」「小学5・6年生」と2部に分かれて実施しました。前半は小学1・2年生の皆さん。やはりこの中にも「国語が苦手」「文章を書くのが嫌い」という子もいます。
ですが、新井の質問に皆さん明るく答えてくれます。
〇新井 物語を作るときに欠かせないものって何でしょうか?
〇2年生の男の子:人物!人がいないとはじまらない!
〇1年生の男の子:主人公!
〇新井:あ、ちょっと、僕が言うこと先に全部言わないで
〇皆さん:うふふ
〇新井:では早速、主人公について考えていきます。考えるのはイラストにあるヒーローのことです。
〇1年生の男の子:このプリントに、ヒーローの名前とかを書いていくんだ!
〇新井:だから先に言わないで(笑)
〇皆さん:うふふ
〇新井:でもその通り!名前・年齢・特技・苦手なもの・くちぐせ・性格。つまり、この“キャラクター”を考えてください。
――すごいスピードで書き終わる皆さん。キャラクターを設定したら、そのヒーローを主人公にしたシナリオを描いてもらいます。その説明を新井がしようとすると「ピンチにならなければ面白くない」という声が!
またもやポイントを先に言われてしまった新井でしたが、その通りです!主人公にはどんなピンチが起こり、それをそのヒーローだったらどう乗り越えていくのか、考えていきます。
皆さん真剣にシナリオを作成。最初に「文章が苦手」と心配していた子もスラスラと楽しそうに書いています!
参加者を代表して何人かに発表してもらいました。どのシナリオもヒーローのキャラクターがセリフや動作によく出ています。
中には、「食ってやる!」という口ぐせを、敵と戦うときの決めゼリフとして使っている子もいました!すごいですよね。
終了後、皆さんに書いてもらったアンケートには、
・とても分かりやすかった。
・お話が作れて楽しかった。
・最初はよくわからなかったけど、おもしろいことが書けたので、楽しかった。
・おもしろくて基本を知った。
・シナリオを書くのは大変だけど、面白かった。
・性格を書くのが難しかったけど、楽しかった。
――といった感想をいただけました!
また、当日は一番後ろの席で親御さんたちが見学されていたのですが、あるお母さんから「見ていて羨ましくなりました。私が子どものときもこういうことを教えていただけたら、絶対文章を書くのが好きになっていたと思います」とお声掛けいただきました!
ちょっとブレイク
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「小学5・6年生の部」まで少し時間がありましたので、ここでお昼ごはんを。綾瀬駅高架下にある「焼き立てコッペ製パン」をいただきました。皆さんもお近くにお越しの際はぜひ!
小学5・6年生の部:「国語の授業でもうまく書けそうな気がします!」
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「小学5・6年生の部」で参加してくれた皆さんにも最初、国語や文章を書くのは好きかどうか、聞いてみました。
すると――
・イラストを書くのは好きだけど国語は苦手です……。
・う~ん、マンガを読むのは好きです。
・文章を書くのはあんまり得意じゃないけど好きです。たまにマンガとか物語を書きます。
――と少し不安そう。
〇新井:「上手に文章を書かなきゃ……」と思わなくて大丈夫ですよ!「登場人物のキャラクターにあったセリフ」を書いてもらいます。
〇皆さん:セリフ?
〇新井:今日、皆さんにやってもらうのは「もしも桃太郎」。お馴染みの「桃太郎」では、鬼が村を襲った理由は描かれていませんよね。そこで今回はまず、鬼が村を襲った理由を考えてもらいます。発想を広げるブレストからやってみましょう。正解も不正解もないので、アイデアを出してみよう!
――そのアイデアはこちら。
・人間と仲良くなりたかったから。
・お宝があったから。
・貧困で仕方なく。
・人間を食べてみたかったから。
・好きな人がいたからその人に会いたくて。
・小さい頃にいじめられたからその復讐。
・人間への逆襲。
・悪意がどんどん増えた結果、人間から鬼になってしまった。
〇新井:たくさんアイデアがでましたね。では次に、この中から鬼が村を襲った理由を1つ選んでください。そして、こういう設定でシナリオを書いてもらいます。
――その設定はこちら。
鬼は「赤鬼・青鬼・黄鬼」の3人。以下のようなキャラクター。
赤鬼:怒りっぽい(だから、村を襲う気満々)
青鬼:気が弱い(だから、行きたくない)
黄鬼:面倒くさがり(だから、どっちでもいい)
〇新井:この3人が村を襲う前日に会議を開きます。その名も「鬼会議」。先ほど決めた「村を襲う理由」をもとに、どんな鬼会議が繰り広げられるのか、そのシーンを考えてください。ポイントは「登場人物のキャラクターにあったセリフ」を考えること。
それからもうひとつ付け加えるなら、「セリフ」だけじゃなくて「ト書」を書くときもキャラクターを考えてください。シナリオには、「柱(場所・時間帯)」「セリフ」「ト書」で構成されています。「ト書」には、動作・しぐさ・表情を書きます。「○○なキャラクターだから、このセリフはこんなふうに言う」とか「こんなことをする」といった感じで書いてみてください。
――皆さん、真剣です。
――完成後はひとりずつ発表!
のはずでしたが、皆さん恥ずかしいようで俯いてしまいました。
そこで、新井は思いつきました。
〇新井:ちょうど3人いるから、僕たちで読みましょう!
――ということで、新井と、広報の齋藤と、今回担当してくださった足立区東和地域学習センターの佐藤さんの3人で、“即席”の劇団を結成。赤鬼・青鬼・黄鬼に扮して、皆さんのシナリオを読ませていただきました。
皆さんのシナリオはどれも秀逸!
例えば、青鬼のセリフだけ「行くの止めようよぉ」「いやだよぉ」というように語尾に小さい「ぉ」をつけて、気が弱いキャラクターを出していたり。セリフで「面倒くさい」とは言わずに、ト書に「足をジタバタさせる」と書いて黄鬼のキャラクターを出していたり。ト書には動作だけでなく、「辺りには焚火のパチパチという音が響く」と、その場の雰囲気が伝わるような一文も書けていたり。
鬼役の3人は読みながら、感激してしまいました!
〇新井:皆さん、最初は文章を書くことを心配していましたが、登場人物のキャラクターを考えるだけで、こんなに書けましたね!
――皆さんニコニコしています!そんな皆さんに新井がひとつアドバイス。
〇新井:皆さんの中にはマンガを描くのが好きな人もいますよね。今日やってもらった登場人物のキャラクターを考えることは、マンガを描くときにも使えますよ。シナリオに書いてもらった「ト書」の部分も、それを「イラスト」にして表現してみて下さいね。考え方は同じです。「こんなキャラクターだからこんなときはこんな表情をするな」とか、そんな風にイラストにしてみてくださいね。
――皆さん、深く頷いております。
少し時間がありましたので感想をお聞きしたところ――
・物語を作るのが楽しくなりました。国語の授業でも、物語の主人公の心情についてとか、うまく書けそうな気がします
・家でも物語を書きたいと思います。
・シナリオを学ぶ前と後で物語を考えるやり方が変わったので、これからも活かしていきたいです。
――と言ってもらえました!
* * *
「国語は得意じゃない……」「文章を書くのはあんまり好きじゃない……」と言っていた子どもたちでも、シナリオを書くことができました。
勿論、シナリオの文章と、国語の勉強で求められる文章は、必ずしも同じではありません。
でも、「文章を書くのってこんなに楽しいんだ!」と感じたり、「なんだ、文章書けるじゃん!」と自信がつくことで、国語に対する苦手意識を和らげることができます。これは、国語嫌いな人にとっては“大きな一歩”ではないでしょうか?
文章や国語が苦手なかたはぜひシナリオを書いてみてください。楽しく克服できますよ!
いろいろな学校や施設で“キッズシナリオ”を実施しています!
■小・中学校への出前授業 キッズシナリオ 2021年9月以降の予定(2021.9.4時点)
■横浜市立 牛久保小学校
■横浜市立 本町小学校
・総合的な学習の時間 事例の参考に/シナリオを書いて映像を撮る
■新渡戸文化小学校 デジタルクリエーションクラブ
■谷中小学校 放課後子供教室
※「谷中小学校放課後子供教室ブログ」でもご紹介いただいております。こちらからご覧ください。
・高学年ビッグプロジェクト始動開始!!『シナリオプロジェクト』プログラム
■シナリオ・センターで実施しているキッズシナリオクラス「考える部屋」
・観客・視聴者・読者が 「おもしろい!」と思うシーンを考える『考える部屋Ep6』