シナリオ・小説・マンガ原作などジャンルに関わらず、 「お話を書く」という勉強のために、シナリオ・センターに通われている生徒さんが沢山いらっしゃいます。ですので、「物語を作るのが好き」という方は、シナリオの技術を勉強してみると、書くことがもっともっと好きになると思います。
今回ご紹介する島田悠子さん(元通信作家集団)もそのひとり。漫画家を目指していたときに受講され、作画よりも物語を作るほうに集中していったんだとか。
そんな島田さん。なんと、“シナリオ界の芥川賞”と称される城戸賞を3度も受賞されています!
第42回では佳作を(受賞作『大江戸ぴーちくぱーちく』は『月刊シナリオ教室 2017年8月号』に掲載)、第46回では準入賞(受賞作『御命頂戴!』は『月刊シナリオ教室 2020年5月号』に掲載)を受賞。
そして昨年2021年が応募の締め切りだった第47回では、『薄氷(うすらい)』で佳作を受賞されました。
こちらのブログでは、受賞の感想や『薄氷(うすらい)』に関することだけでなく、シナリオ・センターに入ったキッカケもお聞きしました。また、城戸賞を受賞された3作全てが「時代物」ということもあり、時代物と現代物の違いについてもお話しいただいています。物語を作るときの参考にしてください。
まずは、受賞作『薄氷』のあらすじからご紹介。
==『薄氷』あらすじ==
江戸の剣術道場の師範代・柊 伊佐衛(27)のもとに、一人の男が訪ねてきた。男は柊の腕を認めると、密談を持ち掛けた。北陸にある小藩・金手藩。藩主の黒川には5人の息子がいる。今、黒川家では跡継ぎ問題が起きている。長男・次男が相次いで不審な死を遂げた。家臣の間では四男を次期当主に推す声が多い。次に三男が狙われる可能性があった。男は柊に三男の警護を依頼した。事は重大だ。柊はその役目が自分でよいのかと及び腰ながら、「黒川の者は信用できない」と三男本人に泣きつかれ、引き受けることになる――
「今までの自分の作品と何かが違う。チャレンジしてみようと思いました」
――まずは、受賞のお気持ちをお聞かせください。
〇島田さん:素直にうれしいのと、ホッとしたのと両方ですね。ただ、一番上の入選が今年も出なかったのが残念で。土橋章宏さんや坂口理子さんというシナリオ・センターの尊敬する先輩方が入選を取っているので、私もそこに届きたいです。3回も残っておいてしつこいかもしれないけれど、まだやり残してる感があります(笑)。
――いつも時代物を意識して応募されているのですか?
〇島田さん:というよりは、映画サイズの時代劇を出せるコンクールが他にあまりなくて。「時代劇が書きたい」ってなると、城戸賞になる。
これまで現代物もたくさんコンクールに出しましたが、普通に滑りまくってますよ(笑)。城戸賞は大手映画会社4社の現役プロデューサーがかなり丁寧に審査に当たってくれます。最終候補以上は授賞式に行くことができて、審査員から直接感想を聞くことができる。このゴージャスさは他にない。
だから、私は城戸賞そのものが好きすぎて、“城戸賞推し”です。審査員に楽しんでもらえる作品を書きたいというキモチが半端ないですね。
――受賞作『薄氷』のアイデアはどこから?
〇島田さん:最初は、今回の城戸賞は現代劇で、と考えていたんです。でも、アイデア段階で、これでは前回作と勝負できない、題材、テーマ、キャラクター、それらの化学反応が足りないと感じました。そこで、白紙から再スタートを。
こういうとき、私はキーワード探しをするんですが、ネットの辞書で「薄氷」という言葉を見つけたんです。正確には、新しい読み方を。日本的な儚い美しさがある反面、「薄氷を踏む」とも言うし、危険な匂いもする言葉。瞬間的に、「タイトルだな」と思いました。
これで時代物ならアクションじゃない。以前からやってみたいと思っていたお家騒動とミステリーを掛け合わせたら面白いんじゃないか……今までの自分の作品と何かが違う。チャレンジしてみようと思いました。
シナリオ・センターに通って思い出した原体験
――シナリオ・センターに入ったキッカケは?
〇島田さん:実は10代の頃、漫画家を目指していたんです。大学在学中に作品を描いて、某有名少年漫画雑誌に持ち込んだこともあります。
そのときの編集さんに作品を気に入ってもらい、「デビューさせてあげるから描きなさい!付いてこれる?」と言われて……。でも何分、正直のところ遊び半分だった。本気度を問いただされてパニくって「いや、まだ夏休みだし……」とつぶやいてしまい、めちゃくちゃ怒られたという……(笑)。しかも、「プロになる!」というプレッシャーで描けなくなったんです……。
そこでたまたまシナリオ・センターを知り「これだ!」と。“話”を書く勉強のために通い始めました。すると、とにかく書くのが楽しくなって。そういえば、小さい時から映画をたくさん見ていたなって。映画『AKIRA』で衝撃を受け、「こんなパワフルな物語が書きたい!」と思った原体験を思い出したんです。
作画のほうはもっとうまい誰かに任せていいと思いました。そこからはストーリーを作るほうに集中していきました。
――時代物も昔から好きだったんですか?
〇島田さん:映画は全般的に好きなんですが、とくに時代劇にはハリウッド大作にも負けない魅力があると感じます。日本的な美しさ、所作や立ち居振る舞いに凛としたものがある。子供のときJAC(ジャパンアクションクラブ)出身の真田広之さんの時代劇を見て、こんなカッコいい人がこの世に!と思いました(笑)。
――時代物と現代物の、一番大きな違いって何でしょうか?
〇島田さん:時代物の世界観で一番感じるのは、人ひとりの命の重さが現代とはまるで違うこと。時代劇で主人公が百人斬りをすると、かなりハイテンションな見せ場になりますが、現代物だと一人が死ぬだけでもしんどい。百人殺してスッキリ爽快なんてありえない。
だからこそ、時代劇のチャンバラシーンは面白い。人間が命の取り合いをしていて互いに罪の意識が薄く、見ているほうも手放しで楽しめるというのは、このジャンルの大きな特徴だと思います。
――今後はどんなふうに執筆活動を?
〇島田さん:実は今、脚本だけでなく小説も勉強しています。ゆくゆくは原作・脚本、ともに手掛けられるような、オリジナル作品を求められる書き手になりたいと思っています。
* * *
※『月刊シナリオ教室 2022年3月号』に島田さんのインタビューと受賞作のシナリオを掲載。併せてご覧ください。
・「月刊シナリオ教室3月号は読みごたえたっぷりの映画シナリオ掲載!」
※城戸賞に応募される方、脚本コンクールに応募される方、こちらの記事も併せてご覧ください。
・「自分の作品を人に見せる勇気/第46回城戸賞 準入賞受賞 島田悠子さん」
・「妄想から物語を作る/第45回城戸賞 佳作受賞 弥重早希子さん」
- 「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、シナリオ・センター創設者の新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
詳しくは講座のページへ