シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
今回は魅力的な人物について、新井一が語ります。「登場人物に魅力をもたせるにはどうしたらいいんだろう…」というお悩みも解消です!
登場人物に魅力をつけるにはウイットを持たせる
紳士の本場である英国では、紳士の条件として、礼儀正しいのはもちろんですが、ウイットのあること、と言われております。
議会では、日本のようにくそ真面目に発言して相手をやっつけるのではなく、ウイットで返し、満場の議員さんたちを笑わせながら、自分の意見を通していくと言われています。それができなくて「ノーコメント」などと、馬鹿なことを言っているのでは、魅力がありませんね。
登場人物に魅力をつけるには、今言ったウイットを持たせることが必要です。ではウイットを言える人というのは、どんな資質を持っているのでしょうか?
批判するくせをつけておく
まずは該博なる知識を持っていなければ、ものを例えるにしても出来ません。その該博なる知識を持っているだけでは、インインメツメツな学者みたいで詰まりません。明るさが必要ですね。
そして、何よりも大切なのは、すばらしい頭脳の回転です。「ああ言えばこう言う」といいますが、まずは「ああ言う」ことを聞き分ける能力がひとつ。相手が何を言っているのか、すぐに理解できなければなりません。「ははあ、そういうことか」とわかったら、自分の利害や考え方、立場などを考え合わせて、返事や主張をしなければなりません。その際、一般の人、テレビでしたらテレビの視聴者が知っていることで答えること。これを気をつけなければなりません。
比喩以外にも、言い換えやアベコベに言うことでも結構です。それらは批判をこめて発想されるもので、そうした加工が必要なわけです。下手すると毒舌になるので、ユーモアの表現で包まなければなりません。ユーモアに包むには、聞いている人に優越感を持たせなければいけません。
この過程は1秒か2秒のうちに、素早く頭を回転させなければ返事になりません。回転のよさは、常に何に対しても批判精神を持っていないと出来ません。いつでも何かを見たり聞いたりしたら、自分で批判をするくせをつけておくと、いいのではないかと思います。
出典:『月刊シナリオ教室』1992年11月号新井一「十則集よりより/2014年6月号「新井一.com」
★次回5月9日に更新予定です★