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代表 小林幸恵が毎日更新!
表参道シナリオ日記

シナリオ・センターの代表・小林幸恵が、出身ライターの活躍や業界動向から感じたことなど、2006年からほぼ毎日更新している日記です。

性別

十三階の仇

学生運動

シナリオ・センター代表の小林です。東京の朝はすごい雨でしたが、晴れてきました。
この3年近くテレワークの娘が、月に何回か出社する日に限って大雨になるので、私は雨女なのかと悩んでいました。(笑)母親は、究極の晴女なのですが。
それにしても、雨の降り方といい、どんどん気候は変化していますね。気候だけでなく、人心も含めて地球のほころびが色々出てきているようで心配です。

日本赤軍の最高幹部だった重信房子が、20年の刑期を終えて出所とのニュースに、学生運動盛んな頃を思い出しました。
私が高校生、大学生の頃は学生運動が盛んで、東大闘争時の安田講堂の姿は、目に焼き付いています。
あの頃の学生運動の方法がいいとは思っていませんが、今はもう少し若い方々が自分たちのことを、将来を考えて、大人たちと真剣に向き合って欲しいと思うのですが。与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」がまた詠まれる時代にならないように。

日本赤軍の話は、本当にもう遥か彼方の昔話になってしまいました。
重信房子は、イスラエルの空港での乱射事件など世界各国でのテロ活動をしてきた人です。
どんな高邁な思想があろうとも、むやみに人を殺していいはずもなく、テロで何が変わるというのか、手記を出すらしいので、どんなことを書かれるのか興味深いです。
嫌なことも悪いことも、辛い過去も知っておかないと、いい未来を創れないと思います。

十三階の仇

出身小説家の吉川英梨さん、またまた新刊が出ました。
大人気の「十三階」シリーズ第5弾「十三階の仇(ゆだ)」(双葉社)

もう重信房子の時代ではありませんが、テロ、スパイ活動はなくなりません。
「十三階」は公安部特別諜報員が主人公です。
吉川さんは、多くのシリーズをお書きですが、一番熱狂的なファンが多いシリーズだそうです。
その理由はよくわかります。
読むことを止めることができないほどの息をつかせぬ展開、主人公黒江律子の驚くような諜報員として、女性としての魅力、生きざま。
この「十三階」シリーズ、は、警視庁公安部特別諜報員が活躍する公安秘密組織十三階。スパイサスペンスです。
吉川さんは、過日ご紹介した「海蝶」シリーズや「53教場」「水上警察」「ハラマキ」シリーズなど、警察ものを書かれていらっしゃるのですが、その中でもこの「十三階」シリーズは、特別バイオレンス色が強くちょっとえぐいです。(笑)

拷問やセックス描写も多く、コワいコワいの私はあまり得意ではありませんが、それ以上に黒江律子という女性に惹かれます。
黒江律子が女性の諜報員として、最強の女スパイとして教育された第一弾「十三階の女」から、シリーズを追う如く最強のスパイに育っていく。
その表立っての活動はもちろん、ハラハラドキドキの面白さですが、律子のスパイとして人間として、女としての葛藤、成長が心を揺さぶられるほど悲しく、そして見事なのです。
吉川さんのシリーズは、どれも事件をただ追うのではなく、人間の生き方、想いを描いているので、ついついのめり込んで読んでしまいます。
「十三階の仇(ゆだ)」は、「非合法な諜報活動は一切禁止とし、透明性のある健全な諜報組織として、内外情報調査部は国民の皆さんの安心安全を守ります」と将来の総理大臣になるであろう天方美月が「十三階」を解体したところから始まります。
「十三階」を失った律子が、国家も家族すらも欺き、上司の命も捨て石にして臨む反撃。コロンビア、インド、東京と次々と起こる謎の展開に、目が離せません。
そして、黒江律子の悲しみ、憎しみが痛いほど伝わるラストに泣けます。

吉川英梨さんは、同時にいくつものシリーズを描かれています。
BGMを変えることで、それぞれのシリーズを描き分けられるのだというお話しを、シナリオ教室のインタビューでお聴きしてすごいと思いました。
ですが、同時進行で描き分けられること以上にその中身の濃さ、調査、資料の読み込みの充実さに驚かせられます。
どうも吉川さんは、黒江律子以上の優れた頭と行動力をお持ちのようです。
あ、そりゃそうですよね、生みの親ですもの。(笑)

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