シナリオ・センター基礎講座の「シナリオ作家養成講座」や「シナリオ8週間講座」をご受講いただくと、会場となる3階のホールに“ドラマとは変化である”という大きなパネルがあります。「これってどういう意味なのか」という話を今回はご紹介。シナリオや小説といったジャンルに限らず、「物語」を書くときの参考にしてください。
シナリオ・センター創設者・新井一は、『シナリオの基礎技術』『シナリオの技術』などシナリオの書き方に関する書籍をいくつも執筆しています。また、『月刊シナリオ教室』でも連載ページをもち、シナリオの技術を解説していました。その記事は、いま読んでも全く色褪せていません。
そこで、当時の記事を皆さんにご紹介。「シナリオってどう書くの?」という初心者の方も、「一度学んだけど、忘れちゃった…」という方も、これを読めばシナリオ作りが一層はかどります!
「ドラマがない」とは?
「このシナリオ、ドラマがないね」と講師から言われたり、合評している仲間の人に言われることがあります。
「ドラマがない」ということは、どういうことなのでしょう。胸を打つものがないのかな、面白くないのかな、印象に残るものがないというのかな、いろいろ考えてみると、はっきりしたことはわかりません。
広辞苑を引いてみますと、「ドラマ=①演劇、劇、芝居 ②戯曲、脚本」となっています。極めて大雑把で、わかるはずはありません。迷宮入りでは仕方がありませんので、独自に考察してみましょう。
変化を求めている
まず「ドラマがない」「つまらない」とか言う人の側に立ってみましょう。何がないからドラマがないというのでしょう。つまり、何を期待しているかです。その期待しているものがないから、口を尖らせるはずです。
わたしたちは、映画やドラマだけでなく、野球やレスリングなどの運動に至るまで、ゼニッコを払って見ています。何を見たくて、大事なゼニッコを払っているのでしょう。視聴覚から来る快感。「綺麗だなァ」とか「いい音楽だなァ」などもありますが、それだけでなく、変化を求めているのだと思います。
私たちの日常生活は、朝起きて、同じような仕事をして、夕方帰って、夕食に一杯飲んで、テレビを見て、寝るというような繰り返しです。つまり、変化がありません。
そこで、何か変わったことはないかな、と探します。自分にはあまり関係ない変化がいいのです。しかも、その変化が同じパターンではなくて、意外な発展があったり、予期もしないような変化なら理想的です。
変化というからには、前の方と後ろの方では変わらなければなりません。例えば、仲が悪かった二人が、ラストでは仲良くなるとか。最初は仲が悪い、ラストも悪いでは変化がありません。
このことは一編のシナリオだけでなく、一つのシーンでも言えます。シーンの始まりと最後が同じでは、説明に過ぎず、「やっぱりドラマがないわ」となります。
「ドラマとは変化である」と覚えてください。
出典:『月刊シナリオ教室』1988年12月号新井一「巻頭言」より/2020年9月号「新井一.com」
★次回8月9日に更新予定です★
「シナリオは、だれでもうまくなれます」
「基礎さえしっかりしていれば、いま書いているライターぐらいには到達することは可能です」と、新井一は言っています。
“最初の一歩”として、各講座に向けた体験ワークショップもオススメです。
※シナリオ作家養成講座とシナリオ8週間講座は、オンライン受講も可能です。
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